第13回 『潜入!武田の陣』(2009年3月29日)


【時代劇局長のズバリ感想文】

今回は13回目。御館の乱を描いて3回目になるが、御館の乱を描くのはまだまだ続きそうである。逆にこんなに重要な戦いを数回で終わわせてしまってはあっさりしすぎか?先を急がなくてもいいのか?と心配をしつつも、じっくり描く姿勢に拍手。それでは13回目の感想文にいきましょう。

①やっぱり若い!

冒頭の言葉は、『チェンジ』。アメリカのオバマ大統領の言葉として印象に残っているが、内容は戦国武将も世代交代の波が押し寄せていた・・・という話。信長が働き盛りの40歳。景勝24歳、景虎が25歳。兼続は19歳と今の年齢を丁寧に紹介していた。『みんな若い!』と思うが、♪人間~50年~♪の時代においては、世に出る上では妥当な年齢か?でも、兼続の19歳は特に若い!分かっていても、改めて『若い!』と思った。

②CGはやはり凄い

本編は天正6年5月から描かれた。御館の乱が起きてからまだ数ヶ月。相変わらず膠着状態が続いていたが、景虎に加勢しようと武田の軍勢が越後と信州の国境まで迫っていた。ここはCGで描かれていたが、やはり実際には描けないものを表現出来るのは素晴らしい。技術が発達した現代のなせる技だ。今は描けない映像がない時代になったが、今後もこのCGが有効に使われる事になる。

③この時代だから?

春日山城では今後の事について評定が行われていた。なかなか結論の出ない中、家臣の栗林と深沢が、北条を食い止めるために上田庄に戻ることを決意した。決死の覚悟に兼続は目に涙を浮かべていたが、戦国時代はこのようなシーンは幾度となく見られた事だろう。自分を犠牲にして主君を守る行為は『素晴らしい』の一言だが、こういった行為はあまりにも現代から掛け離れし過ぎている。時代劇を見る度に『この時代だから・・・』と簡単に片付けてしまうが、こういう長い戦国時代があってこそ現代があると・・・改めて先人に頭が下がる想いだ。

④父の愛

兼続は思案を巡らせるが、なかなか良い考えが浮かばない。そんな中、父の惣右衛門は『己の力の限りをつくせ。母が言った紅葉の教えを忘れるな』と叱咤。火坂先生の『天地人』では惣右衛門が兼続に対してサポートするシーンがたくさん出てくるが、米沢に行くまでの長きに渡って描かれる”父の愛”は今後の見所のひとつだ。

⑤初音の存在意義は?

今回は近江の織田信長も描かれた。いきなり洋装の初音が出てきたのにはびっくりしたが、ドラマを見る限りでは初音を常にそばに置く、現代でいえば愛人のような存在になっているのは否めない。洋装は信長の指令と思われるが、初音がまるで着せ替え人形のようにも写った。一方で、『さすがは真田の娘・・・』と、その素性を読み警戒しているような部分も描かれていたが、信長に対しての初音の立ち居地がイマイチ分からない。本当に必要なキャラなのか?とも思うが、もう少し待つ事にしよう。

⑥今回最大の収穫

兼続は、武田と和睦するという策をひねり出した。長年の宿敵である武田だけに重臣たちは猛反発。景勝も『無理じゃ』と立ち去ってしまった。ここで終わらないのがここ数週間で大きく成長した兼続。『越後を守ることがなにより大事』と景勝を強力に説得したのだ。一方で、兼続の身を案じる景勝に『殿を残し、先に冥土には参りませぬ』と先週と全く逆のシチュエーションだ。こんなシーンは大歓迎!こういったシーンが何度も出てくるなら、今ドラマは間違いなく面白くなる!

⑦お船が理想の妻に?

お船が信綱と・・・。夫婦だから当たり前だが、兼続を思うお船を思うと視聴者としてはちょっと複雑な気持ちだ。それはそうと、その後に出てくる兼続とお船が会った場所はどこ?筆者は直江屋敷では?と思ったが、もしそうだったら兼続は変質者だ(笑)。兼続はお船から髪結いの紐を『勇気が出るお守りじゃ』と授かるが、そっと兜の前立ての部分に付けた。それにしても、早く夫婦になる2人を見たいものだ。きっとお船は、現代における理想の妻に浮上するのでは?

⑧高坂弾正

兼続は、泉沢、与七とともに武田の陣に侵入し、武田家の重臣である高坂弾正昌信と対面した。高坂を演じるのは大出俊さんで、病魔が蝕んでいる様子を非常にうまく演じていた。農民の子として生まれ、戦功をあげて信玄の信頼を得た高坂。美貌であったために、若き信玄の衆道の相手も務めたと言われているが、そんな高坂も最期の時を迎えようとしていた。度々ドラマに登場する高坂だが、こうしたシーンが見られるのも滅多にないだけに非常に貴重であった。

【来週の展望】

うまく武田と和睦したかに見えた景勝派だが、そう簡単にはいかなかったようだ。騙しあいの世の中、ましてや電話などない時代にどう敵軍を動かしてきたか?今でも不思議であるが、その辺りが非常にリアルに描かれる回になりそうだ。