ベトナムがロシアから潜水艦を購入 | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

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ホーチミン市(旧サイゴン)在住の証券アナリスト・竹内浩一が、ベトナムを中心に世界の金融市場を見渡すブログです。

 ロシアは旧ソ連崩壊までベトナムの強力な後ろ盾となる国でした。日本が米国を後ろ盾にした国であるのと同じことです。しかし、旧ソ連崩壊後のベトナムは全方位外交に転換しています(特に旧ソ連からの援助金がなくなった分は日本からのODAで埋め合わせました)。いったん、ロシアとの関係は疎遠になったわけです。

 そんななか、ベトナムは潜水艦と戦闘機の購入をロシアと昨年合意しています。ベトナムのグエン・タン・ズン首相は昨年12月15日、ロシアのプーチン首相との会談の後、「潜水艦と戦闘機を購入する契約に調印した」と語っています。これはベトナム戦争後ではベトナム最大の軍事絡み商談です。

 ベトナムがロシアから購入する潜水艦は偵察能力の高いキロ級潜水艦6隻で20億ドルで購入します。ロシアはベトナムに潜水艦乗務員のトレーニングや潜水艦メンテナンスも提供する模様。一方、空軍でもロシアの最新式戦闘機スホーイ30を12機導入する計画です。

 長らく世界最強の戦闘機はアメリカ製のF-15イーグル戦闘機と言われてきました。日本はF-15を配備しています。しかし、スホーイ30は、「アメリカ空軍のF-15がインド空軍のスホーイ30と模擬空中戦を行ったところ全く歯が立たなかった」とか、「ボーイング社の航空戦シュミレーターで検証したところスホーイ30がある戦術をとるとF-15は確実に撃墜される結果が出た」との話もある戦闘能力の高い高性能戦闘機です。

 ベトナムのロシア製潜水艦購入は明らかに長距離航海が可能な中国の原潜と中国の空母増強を睨んでのものと言われています。中国とベトナムは領土問題を抱えており、中国の急速な軍備拡大をベトナムは南シナ海の軍事バランスを崩すものとみています。

 ベトナムだけではなく、急速に海軍力強化を進める中国への警戒感から南シナ海周辺の東南アジア各国は潜水艦の配備や増強に力を入れ始めています。特に、偵察能力の高い潜水艦の導入が相次いでいます。

 複数の軍事研究者によると、東南アジアで潜水艦の増強を進めているのはベトナムのほかに、マレーシア、シンガポール、インドネシアの4カ国とのこと。

 ベトナムはまた中国と対抗するためにロシアに再接近するだけではなく、米国とも軍事協力の準備を進めています。つまり、「遠交近攻」。

 中国とベトナムは経済面ではともに急発展中の国に分類されますが、(外交の延長である)軍事面でみると中国とベトナムではちょっと違った景色がみえます。米国に代わる中国の経済的勃興とともに中国の軍事的拡大は日本を含む周辺国の大きな課題です。