『ハートストーン』 (2016) グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

アイスランド映画は近年、国際映画祭で高い評価を得ているようだが(『好きにならずにいられない』、『ひつじ村の兄弟』ほか)、自分にとっては多分最初の経験。これがなかなかの好作品だった。

 

東アイスランドの小さな漁村。ソール(『スタンドバイミー』のリヴァー・フェニックスを彷彿とさせる愛くるしさ)とクリスティアン(金髪の美少年)は、幼なじみの大親友同士。思春期にさしかかったソールは、大人びた少女ベータのことが気になり始める。そんなソールの気持ちを知ったクリスティアンは、二人を後押しするが、内心複雑な感情を持っていた。ある日、ソールの姉が二人をモデルにし絵を描いた。それは二人が意味深に見つめ合う構図だった。その絵がたまたま友人たちに見つかると、周りは彼らを好奇の目で見るようになり、二人の関係はぎこちなくなっていく。ソールは、「普通にしてくれよ、そしたら元に戻れる」とクリスティアンに言い放つ。クリスティアンは悲しげな顔でそれに答えるが、思いつめた彼が取った行動は悲劇的な結果を招く。

 

二人とも両親との関係に問題を抱え(ソールはシングルマザーで、母親がボーイフレンドを作ることをよしとせず、クリスティアンの父はDVを振るう)、それが二人の関係をより強固にしている。

 

12歳というまだまだ子供の年齢の彼らに同性愛と異性愛とを区別する必要があるのかとも感じるほど。相手を慕う気持ちのピュアさに心打たれる。それゆえ、それを受け容れない社会に理解されずに傷つく二人の少年が痛ましい。

 

あと特筆すべきはアイスランドの美しく雄大な自然が素晴らしい背景になっていること。この風景が彼らの心の成長に影響を与えないはずはなく、ピュアな愛情はその自然に育まれたと言ってもいいだろう。

 

中盤のペースが若干スローなのが惜しまれるが、作品の価値を削ぐほどではない。LGBTという普遍的なテーマを実にアイスランド的な舞台で描いた秀作。観る価値は大きい。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『ハートストーン』予告編