『デタッチメント 優しい無関心』 (2011) トニー・ケイ監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



これはいい映画。

非常勤臨時教師として公立高校に赴任してきたヘンリー。彼は過去のトラウマ(母親の自殺)から人と深く関わることを避けるようになっていた。学校でも初めはいつものように生徒や他の教師たちと距離を置いていたヘンリーだが、街で売春をする少女エリカとの出会いから少しずつ彼は変わっていく。

この映画で描かれているのは、落ちこぼれ、いじめ、校内暴力、学級崩壊、モンスターペアレント、自殺といった現代の先進国の多くが直面している教育の荒廃。しかし、この作品はそうした問題を直視した「学園物」に留まらない。

タイトルの「デタッチメント(原題 Detachment)」が物語っているように、人生の問題から逃避するために、人との関わりあいを避ける生き方がテーマ。ヘンリーの保つ人との距離感は、荒んだ学校の臨時教師という仕事には、むしろうまく働いていた。しかし、彼の内面の孤独感を見透かす人もいる。それが、彼に庇護を求めるいじめられっ子のメレディス。ヘンリーとの距離を詰めようとして拒絶された彼女の取った行動も、ヘンリーを変える契機になったことは間違いない。そして、一旦は拒絶したエリカを迎え入れる展開で、映画は終わっている。

非常にヘビーな題材を扱いながら、「デタッチメント(孤立・無関心)」から「アタッチメント(つながり・愛情)」へとヘンリーのポジティブな変化を描いていて、人間の強さ、優しさに心打たれる。

エイドリアン・ブロディの渾身の演技。彼の代表作と言えば2002年のロマン・ポランスキー監督の『戦場のピアニスト』だが、この作品は彼の隠れた名作だろう。

あと黒板を使ったアニメーションや校舎内を写したスチール写真などがところどころに挿入されているが、それらが映画の中にコラージュとして溶け込んで、いいリズム感を作っている。そうしたセンスのよさも特筆されるべき。

是非観てほしい作品。日本未公開作品だが、DVD化はされている。

★★★★★★★★ (8/10)

『デタッチメント 優しい無関心』予告編