6年目夏の話が続きます。


 私たち夫婦は再度同居生活を始めたが、雪子の意欲はあまり回復していないようだった。健康な子供を産んでも産後うつという症状が出ることもあるらしいが、帝王切開で子供が死亡という事態になったのでショックは少なからずあったと思う。でもそれは私も同じで、ここは力を合わせて乗り越えるしかなかった。私は前述のような環境の中でも仕事は休まずに行っている。


 産婦人科の医師も安静は必要だが、少しずつ家事などの作業をしながら体を慣らして行って欲しいと言っていた。


 雪子は母乳が出てくるのを全て捨てなければいけないのも辛かったらしい。雪子に、


「飲んでみる?」


と聞かれたが、コップに入れられても飲めないので赤ちゃん同様直接吸う形でこっそりと飲ませてもらうことにした(←大きな赤ん坊)。牛乳とは違って濃厚だった。


 この頃には2人ともやや不眠気味になっていたので、近くの内科医で睡眠導入薬をもらって飲んでいた。


 基本的に雪子があまり家事をしないことは結婚当初から分かっていたが、私の母親が家事をやっていたこともあり、自宅に戻ってきてもほとんど家事をしなかったらしい。私の弁当も母親が作ることが多かった。あまりにも寝て過ごすことが多いので私の母親が、私に


「医師に全く動くなと言われているの?」


と聞かれたので、私は、


「そんなことはない。少しずつ慣らして動けるようになるように言っているよ」


と答えた。母親の話によると朝食の支度をする以外はほとんど寝ているらしい。昼食の時間になると降りてきて私の母親が作った昼食を食べる。夕食はスーパーなどで惣菜を買ってきて皿に乗せるだけということが約40日続いた。これではどちらが主婦なのか分からない。私の母親がいい加減にしなさいと怒り出した。


 まあ花嫁修業をしっかりやらなかった雪子にも問題はある。母親が冷蔵庫を全部トレーを取って掃除をさせたら組み立てられなかったようだ。これは今までに冷蔵庫の掃除を1回もしていない証拠になる。玄関やトイレ、浴室などの掃除の仕方もみっちり教えられていた。料理も揚げ物を作ろうとしない雪子に実践で訓練。


「やけどなんて主婦の勲章だよ」


と言い聞かせる母親。ちなみに揚げ物は私ができるのだからやればできるはずである。ややスパルタ気味だが主婦の訓練が始まった。私も家事をしっかりやることが調停での戻ってくるための条件だったので、雪子には辛いかも知れないが少しずつ覚えてもらうしかないと思っていた。


 この頃に子供がいないことを少しでも紛らわせるために犬を見に行こうかと言う話になった。ペットショップに行くと、少し大きくなっているアメリカン・コッカー・スパニエルがいた。つぶらな瞳が大きくてかわいい。ゲージから出してもらうと普段あまり人になつかないと言われていたこの犬が尻尾を振って飛びついて来た。


「この子かわいいな。連れて帰ろうか」


と言う話になった。私の自宅には庭はない。犬小屋くらいは置くことができるが室内で飼うことが前提。雪子はちょっと迷っていたが買うことになった。


 来た当初の画像は以下の通りである。名前をどうするか決めていなかったが、ある日小泉純一郎総理(当時)が京都市役所前に演説に来ると言うので私は雪子を連れて見に行くことにした。その関係もあり、愛犬の名前は「ジュン」に決定。単純の純である。


てつさんのアスペルガー症候群奮闘記



 こいつがとんでもない食いしん坊だった。この犬種はもともと食いしん坊なのだがうっかりテーブルの上に魚を置いて洗濯物を干しに行ったら魚はきれいになくなっている。油断できない愛犬がやってきたものだ。あと毛をまき散らすので掃除は不可欠になる。


 犬の散歩も朝晩行かなければいけない。これは私や母親も交代で行くことになる。


 新婚当初のように実家から親を呼ぶこともできず、少し心のケアも必要な時期だったが、甘いことばかりも言っていられないので最低限の家事はこなせるようになるまで頑張ってもらうことになった。


 ここでは妻の味方をするのが夫ではと思われる方も多いと思いますが、私は中立でした。母親があまりにもひどいことを言った時には制止しましたが、正論だと思う部分は静観して必要以上にかばいませんでした。



 話はまだまだ続きます。




「本日の豆知識」


 昔は高額療養費は償還払い(後から返金)だけでしたが、今は事前に申請しておけば、窓口で上限額だけ支払えばいいようになりました。申請しない場合は償還払いになります。年をまたぐ場合は償還払いを選んだ方が有利な場合もありますので慎重に選びましょう。



 家事の特訓が始まりました。心理面の不安もありましたが何もしないでふさぎこんでもいい方向に行かないので、少しずつ頑張ってもらうことになりました。ワンコもやってきて少しにぎやかになりました。この後も波乱は続きますが引き続き応援お願いします。

 ↓    ↓

にほんブログ村 メンタルヘルスブログ アスペルガー症候群へ
にほんブログ村