波止場野郎 | お宝映画・番組私的見聞録

波止場野郎

前項で名前が出たついでに小野透について調べてみた。自分は美空ひばりにあまり興味がなかったこともあり、その実弟・小野透についても名前を知っている程度なのである。
小野透は57年に16歳で歌手デビューし、翌年には東映に入社、主にひばりの映画に顔を出していた。幼い頃からスイング・ビーバーズの小野満にジャズを学んでおり、芸名はそこからきているのだろう。ちなみに美空ひばりと小野満は婚約していたことがある(まもなく破棄)。
60年、第二東映(ニュー東映)が設立されたことにより、小野透の主演映画も何本か制作されている。その中から「波止場野郎」(60年)をピックアップしてみたい。
本作はアクション映画で、だいたい秘密捜査官とか探偵とかが主役になるケースが多いが、小野はまだ10代であり、見た目も不良っぽい感じなこともあってか、警察とつきあいのある若者といったような設定だ。「七人の刑事」堀雄二がここでも刑事の役である。神田隆も刑事だが、実は悪のボスという設定。そして前項の「悪魔の手毬唄」でも共演していた北原しげみ。おそらく小野とは一番多く共演した女優ではないだろうか。他には久保菜穂子、永田靖、曽根晴美、植村謙二郎、山本麟一、ユセフ・トルコ、後に議員となる山東昭子、「事件記者」の清村耕次などが出演している。
61年になっても、「銀座野郎」とか「台風息子」シリーズなど、小野透の主演作は作られており、通算で10本以上もの主演作があったのは意外に感じる。しかしニュー東映の解散により、主演作がなくなってしまい、62年にはさっさと引退してしまうのである。一度主役になってしまい、ランクダウンするのがイヤだったのだろうか。
その後のお騒がせっぷりは前項でも触れたとおりだが、身近に田岡組長らがいて、ヤクザの道に流れていったのは自然のことだったのかもしれない。かとう哲也として芸能界に復帰しているが、作曲家としても活動しており、こちらは小野透名義で行っていたようだ。
しかし、83年に42歳の若さで急逝している。