プロ野球選手は「自営業者」か、それとも「労働者」か | 『てっし録(^▽^)』~書法で人生を豊かに生きよう!

『てっし録(^▽^)』~書法で人生を豊かに生きよう!

京都・滋賀で書法道場を主宰する師範のブログ

 今日は、立命館大学(BKCキャンパス)で労働法の講義です。

 他の法律科目と同じように、まずは『定義』を正確に押さえてください。
よく耳にする言葉ほど要注意。法律の世界では、特殊な意味が与えられていることがあります(ex.発明の特許(パテント)は行政法学上「確認」とされる)


 たとえば、「労働者」という言葉は、使われる場面によってその意味が異なります(以下参照)。


① 民法上の「労働者」

 民法上の「労働者」とは、使用者と「雇用契約」を結んだ人です。

 雇用契約とは、使用者の指揮監督の下で、労働者が労務を提供し、それに対して報酬が支払われる契約です(民法623条以下)。


 なお、請負契約(民法632条以下)・委任契約(民法643条以下)も「働いて報酬をもらう」タイプの契約です。しかし、雇用契約のように「使用者の指揮監督の下で」働くわけではありません。


② 労働基準法の「労働者」

 労働基準法の「労働者」とは、事業に使用され賃金を支払われる者です(労働基準法9条)。

 たとえ、契約のネーミングが「請負契約」や「委任契約」であっても、「使用され」「賃金を支払われ」ていれば、「労働者」として労基法の保護を受けることができます(ex.有給休暇、時間外手当)。

 このように、「労働者」かどうかは客観的に決まります
。使用者が勝手に決めることはできません(関西医科大学研修医事件、最判平成17.6.3)。


③ 労働組合法の「労働者」

 労働組合法の「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金・給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいいます(労組法3条)。

 労基法9条とは異なり、「使用される」というフレーズがありません。
使用者の指揮監督を受けていない人であっても、つまり、労基法の「労働者」にあたらなくても、労組法の「労働者」とされることがあります。

 たとえば、プロ野球選手は「自営業者」であって、労基法上の「労働者」ではありません。しかし、労組法の「労働者」に該当すると考えられています(日本プロフェッショナル野球組織事件、東京高決平成16.9.8)。


 繰り返しますが、法律の学習において『定義』は大切です。定義をおろそかにすれば
実力は伸びません。

 「定義を正確に」。法律を学ぶ者として、習慣にしたいものです。


[宿題] 失業者は「労働者」にあたりますか?



人気ブログランキング
←よかったら応援クリックお願いします