同質の原理での選書④ | 寺田真理子オフィシャルブログ

同質の原理での選書④

同質の原理での選書①
同質の原理での選書②
同質の原理での選書③
のつづきです。
落ち込んでいるときの本選びで注意したいのは、比較です。人はどうしても他人と自分を比べてしまう生き物ですが、落ち込んでいるときは自分の欠落した部分に焦点が当たりがちなので、気をつけたほうがいいでしょう。


以前、森信三氏の『私の読書論』を読んでいたのですが、中座してしまいました。著者があまりに立派な方なので、自分と比較して落ち込んできてしまったからです。読書論というよりも読書道というのがしっくりくる、とても求道的な内容でしたので、「読書って、こんなに大変なことだったのか!」「世の中にはこんなに立派な方がいるのに、自分は……」と、どんどん落ち込んでしまったのです。元気なときに立派な方の本を読んで感化されるのはいいのですが、比較して落ち込んでしまうこともあるので、自分の波長に合ったものを選ぶことが大事です。


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逆に、落ち込んでいるときに励まされるのは失敗談のほうです。それも、世間的には成功者と思われているような方の失敗談を読むと、「こんなに活躍している人でもこんなことがあるのか」と楽にしてもらえるものです。


 作家の北杜夫さんは躁うつ病がひどかったことでも知られますが、斎藤由香さんの『パパは楽しい躁うつ病』を読むと、うつのときにはほんとうに廃人のようになっているのです。ベッドに横になった姿の写真もありますが、周囲に物が散乱し、ごみ屋敷のような状態。それを見ると「こんなにダメダメでもいいんだな」とかえって安心できました。



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