アメリカ・ジョージア州・アトランタ学区(The Atlanta Schools)で騒動となった、学力テストにおけるカンニング問題について。


State Investigation Reveals Widespread Cheating in Atlanta Schools


久々のカンニングネタ。


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現在、新しい仕事の手続き上(とりわけ労働ビザ)の用件で、日本へ一時帰国し、そのため目まぐるしい忙しさで更新できませんでした。夏の炎天下の中、時間の許す限り、ブログを更新していきたいと思います。

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<カンニング事件の概要>


このカンニング問題。以前、お伝えしたことはありますが、かなり昔のため、改めて概要をお伝えすると、


ジョージア州・アトランタ学区(The Atlanta Schools)で行われた2009年度学力テスト(the Criterion-Referenced Competency Tests)において、カンニング事件が発覚


今回報告された調査報告書によると、学区内・80%以上の学校で教員、又は校長先生が、生徒の答えを変更する、又は生徒に正しい答えをさせる手助けをした、との報告されました。


で、この辺りが以前まで分かっていたこと(正確に言うと、疑われていた内容)ですが、今回の報告書の凄い所は、


この先生、校長先生などがぐるになって行っていたカンニング活動を、アトランタ学区・Supterintendent(学区のトップ)が知っていた!!


と報告した所。不正行為を知っていた、となると話は大きく変わり、これは学校規模で行われた不正行為ではなく、学区レベルで行われたいた、ということなり、この騒動いっそう深刻になってきています。


<カンニング事件にまつわる問題>


約4万8千人を抱えるアトランタ学区。学力テストのあり得ない得点の伸び率に違和感を感じた専門家が独自に調査して分かった、ということですが、この問題の根っこは、(これまた私のブログで度々登場する)


No Child Left Behind Act


この法案にあるAdequate Yearly Progress(通称AYP)というものがあり、毎年どれだけ学力が向上したのかチェックすることがこのAYPで義務化されたのです。


これまでテキトーに教えて生徒が進級していた所に、学力テストを行い、AYPという名の学力向上度をデータ分析し、先生、校長先生らは全くの誤魔化しが通用しなくなった、というのがこの問題の背景。


さらに、このカンニング問題のおかしな所は、


カンニング問題が発覚し、調査している最中に、学区のトップ(Superintendent)が契約の延長を求めず、辞職した


という極めて違和感のある辞職をしたこと。12年間も勤めてきた職をカンニング疑惑が調査中である(つまり、カンニングがあったかどうか未定の)段階で辞職したので、周りがおかしい、と疑ってしまうのも仕方ありません。


<カンニング調査について>


元々このカンニング事件の調査。疑惑がかけられた後、アトランタ学区が独自調査をしました・・・・・・が、その内容があまりにもお粗末で、ジョージア州知事自ら、


Woefully Inadequate(恐ろしいくらい不十分)


と批判したレベルで、その後、独自の調査機関に依頼して再調査を行った、というのが今回の経緯。


では、この独自調査結果を具体的に見ていくと、


178人の教員、校長先生がカンニング行為に関わっている(その内、82人は不正行為を認めています)。


-6人の校長先生は質問に対する回答拒否。しかし、これら校長先生を含む、32人以上の校長先生は、カンニング行為に関わっていたか、又はその事実を知っていた


-調査した55の学校の内、44の学校でカンニング行為が報告されている


-カンニング行為は早くて2001年から始まっていた。


-今回不正行為があったとされる学力テストに関しては、2005年12月(又は2006年1月)に行われたテストから不正行為があり、不正は明らかであったものの、無視され続けてきた。


-カンニング行為が引き起こした要因は様々だが、主な要因は、データ分析重視の環境で、目標を達成しないといけない、というプレッシャーである


-今回のカンニング行為以外にも、false statements(偽証)、document destructionなどの不正行為は行われていた。


とまあ、出る和出るわ、不正行為の実態が・・・・・です。


<今後の展開>


ジョージア州知事は、今回の報告を受け、


there will be consequences" for the teachers and principals who falsified test results

(教員や校長先生がテスト結果を偽った報いがあるだろう)


と発言しており、テスト用紙を改ざんした(つまり、不正解から正解へ書き直した)教員や校長先生には、それなりの処罰を下されるだろう、と報告されています。


さらに、教育委員会トップらは、今回の不正行為を行った教員、校長は二度と教壇の上に立つことはないだろう、と発言しており、今回の不正行為で懲戒免職等の処分が下されるだろうと、予想されています。


<総論>


今回のカンニング行為。データ分析の専門家として、「やっぱり、不正行為は行われていたんだ!!」と納得しましたが、そう思っているのは私だけではないだろう、と思います。


データ分析が所詮データ分析・・・といっても、やはりかなりの確立でデータ分析は真実を予測するものであり、以前アトランタのカンニング問題で調査された所、テストスコアーの上がり方があまりにも不自然な上昇であった時点で、おかしいなーと思ってまー間違いはないと思います。


後、私が注目するData-Driven System(データ分析に基づいて政策決定、政策分析、政策立案を行うシステム)がまさに今回の不正行為を明るみにした、といっても過言ではありません。


今後も一層Data-Driven Systemが進んでいくことは間違いないので、アメリカでの学校関係者の不正行為はそれに応じて減るのではないか?と私は予想しますが、どうなることやら・・・。