頬がこそばゆくて、恥ずかしくなった帝王様が、声を大きくして言う。
「スキンシップ?俺様は抱きしめたい時に抱きしめる。
地獄の帝王に逆らえる者などいない!」
智は、ん~と考えて、帝王様を見上げる。
「今まではそうだったかもしれないけど……おいらは違うよ。
ショウ君、邪魔。ご飯作ってる時は危ないから、あっちに行ってて。」
智の言い方にムッとした帝王様は、ぎゅっと智を抱きしめる。
「邪魔とはなんだ、邪魔とは!」
「邪魔なんだもん。怪我しても知らないよ。」
智は抱き着かれたまま、まな板の上で人参を切っていく。
帝王様は自分を見ずに人参を切っていく智がおもしろくない。
さらにぎゅっと抱きしめると、智が小さく声を漏らす。
「あ……。」
包丁を置いて、指を持ち上げる。
智の左手の人差し指に、赤い線が一筋ついている。
それが、じわっと広がって、ツーっと垂れていく。
「ほら、切っちゃったじゃん。」
智はその指を自分の唇に持って行くと、チュッと吸い付く。
帝王様の中に、得も言われぬ欲望が渦巻き始める。
「智……。」
そう言って、帝王様は智の口から智の指を奪うと、自分の唇に当てる。
そっと舌を出し、傷口を舐める。
「ぁあ……。」
智の背筋にゾクッと身震いするような刺激が走る。
帝王様はさらに口の中に指を抱え込み、あらゆる角度から、傷口を舐めていく。
溢れ出る血液は、すぐさま帝王様の舌に拭い取られ、
そのなんとも言えない感触に、智の下腹部が疼く。
「や……ダメっ!」
智が無理やり指を引き抜き、右手で隠す。
帝王様の唇に、智の血で、赤い線がスーっと引かれる。
帝王様はそれをペロッと舐めとって、一言つぶやく。
「甘いな……智の血は。」
智の背筋を冷たい刺激が駆け抜ける。
「ほ、ほら、あっちで待ってて。急いで作るから。」
智は帝王様を見ないようにして、人参を切り始める。
帝王様も仕方なくベッドに戻って行く。
その後ろ姿をチラッと見て、智は傷ついた指を握り締める。
「本当に……人じゃないんだ……。」