ここで紹介するのは、東京三菱UFJ銀行の経済レビュー「東日本大震災で懸念される国債国内消化構造の綻び」 


http://www.bk.mufg.jp/report/ecorevi2011/review_20110513.pdf#search=' 長期金利 国内消化 経常黒字'


である。 この論文は、これまで日本国債はほとんどが国内で消化され、94%の日本国債は国内保有となっているが、企業の資金余剰が次第に縮小するという仮定の下で試算すると、2017年度には、新規発行国債の半分以上を外国人投資家に売らないとならない、つまり国債の国内消化率が2017年度に50%を割り込むという衝撃的なものである。 このシナリオで推移すれば2020年度には日本国債の20%以上を外国が保有することになる。 しかもこれは、2014年度に消費税を10%に上げるという前提での試算である。


詳しくは上のレポートをダウンロードして読んでもらえればよく分かるが、この分析は極めて冷静なもので、信頼性は高いように思われる。  


問題は、企業の資金余剰がこれからも続くのか、あるいは縮小するのかということだが、これは経常黒字の行方に大きく依存する。 要するに、経常黒字の分だけ、国内の貯蓄が超過になるわけで、これが小さくなってゆくとすると資金余剰が減ってゆくことになる。 フローでみると、経常黒字が日本国債を国内消化するための生命線という構造になっている。  


問題は、経常赤字には簡単にはならないが、震災の影響で、長期的にも経常黒字、とくにそのうちの貿易黒字が大きく減少するかもしれないということである。 つまり、サプライチェーンの毀損から、一部の生産が海外に移転し、貿易黒字は長期的にも減少することが考えられる。 経常黒字の減少は実は、震災がない場合でも心配されていたことで、それが早まる形になるかもしれないということだ。


このまま進むとやはり経常黒字の縮小から、企業の余剰資金は減少し、国債の国内消化が難しくなるだろう。