日本の財政を支えている一つの要因は、経常収支の黒字である。  阪神大震災の1995年当時の経常収支の黒字は約15兆円であるが、そのうち約11兆円が貿易収支の黒字である。 ところで直近の2010年度の貿易収支の黒字は5兆3917億円と阪神大震災時の約半分である。 一方、経常収支は、17兆801億円の黒字である。 2009年度の経常収支は13兆2867億円の黒字であるから、4兆円近く黒字は大きくなった。 これは貿易収支の黒字が大きくなったのが主な要因である。 


2011年度の貿易収支の見通しは、かなり黒字が減ると思われる。 これは震災による供給能力の毀損、また風評被害による輸出の減少と共に、1バレル100ドルを超えて高止まりしている原油価格や、食糧価格の高騰が続いていること、さらに復興需要による輸入の増加も見込まれるからである。


実際、今日の速報で、3月の貿易収支は1995億円の黒字で、前年比78.9%の減少となっている。 4月はさらに黒字幅は減少する見込みである。  


このような交易環境が続くと、当然円安に振れると思われる。 夏ごろには、1ドル90円台になることも考えられよう。 これは輸入物価、特に石油の値上がりに繋がり、インフレ要因になると考えられる。 震災復興が本格化すれば、輸入も大きくなるだろうから、供給能力が今後2-3ヶ月でかなり回復しても、貿易収支の黒字は2011年度は小さくなり、場合によっては赤字になることもあるだろう。 また電力不足による供給能力のマイナスも見込まれよう。 


その結果、経常収支の黒字幅が大きく減少するようなことがあれば、財政赤字のファイナンスが難しくなってくるだろう。 こういった状況下で、復興のための国債発行をするわけであるが、金利の上昇を防ぐには、復興のための臨時増税をしなければならないと思われる。 所得税では増税幅が大き過ぎるので、消費税を3%程度3年増税する案が検討されているようだ。 12年度から3年間は消費税8%でその後18%程度に上げるのが社会保障の維持には当然必要になるだろう。


そもそも年金の国庫負担を2分の1にしたが、この財源すら現在は埋蔵金を取り崩して賄っているのが現状で、その埋蔵金も枯渇しようとしているのだから。