今日の産経新聞「正論」で竹中平蔵教授は次のように述べて、復興税に反対している


http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110418/fnc11041803390000-n1.htm

誤った議論の代表は「復興税」だ。恒久的ではない一時的な支出増を増税で賄うのは不合理だ。また、経済が負の衝撃を受けているときの増税などあり得ない政策だが、同情心を煽(あお)って堂々と主張されている。そもそも郵政をきちんと民営化し株式売却をしていれば5~10兆円が国庫に入り、復興目的の増税といった愚策を論じる必要はなかった。

 忘れてならない原則は、復興主体は民間経済だということだ。内閣府の試算でも公的資本より民間資本の方が遥(はる)かに多く毀損している。こうした中、法人税引き下げが見送られる公算が大きく、経団連も同意した。だが、民間のエクイティ(持ち分資本)を呼び込むには法人税の一層の引き下げこそが重要なのだ。


確かに郵政民営化で5から10兆円が国庫に入るが、今言っても仕方ないことである。 問題の焦点は、竹中氏の言っているようなことではなく、復興のための財源確保のために国債を増発する場合に、どうやってその国債を金利の著しい上昇を伴うことなく販売するかということである。  復興税は、確かにその増発分の国債の償還財源として考えられたものだが、償還というよりも、償還の裏付けを明示して、市場の反乱を防ぐのが一番の目的である。 竹中教授は、国債の増発は問題ないと考えているのか、或いは、他の財源があるということなのだろうか。


また、それに先立って、竹中教授は東洋経済で財政再建について次のように論じている。


http://www.toyokeizai.net/business/interview/detail/AC/38abf49571a5155f3792e9d584211ae8/


いちばん重要な点は、消費税の税収を何に使うかだ。使い道は四つある。(1)財政赤字を埋める。つまりプライマリーバランス(基礎的財政収支)を回復するために使う。(2)高齢化に伴う社会保障費の自然増を賄う。(3)現在の手厚くない福祉を充実させる。(4)法人税引き下げやTPP(環太平洋経済連携協定)対策費など、社会保障以外の政策に使う。

 この四つを全部消費税で賄おうとすれば、税率は25~30%になってしまう。これを国民が受け入れるとは思えない。財政再建のためにはまず、増税よりも経済をよくすることに注力すべきだ。2003年から07年の間に、日本のプライマリーバランスの赤字は28兆円から6兆円まで下がった。22兆円の赤字縮小は、消費税に直せば9%分に当たる。これは不良債権処理や郵政民営化などの規制緩和によって経済が活性化した結果だ。

 2番目に重要なのが歳出削減。小泉内閣のときに、社会保障費は毎年1兆円増えるところを、8000億円の増加に抑えた。それと同じことをしなければならない。年収の高い高齢者の年金を削減するなどすれば、削減は可能だ。そして消費税率引き上げの前に、公務員の人件費を2割下げる。そうすれば約5・5兆円、消費税2・5%分が浮く。


私の考える処方箋としては、まず「今後2年間でデフレを克服する」と宣言する。そして、規制緩和による経済活性化と、社会保障費の自然増抑制によって、前述の(1)と(2)の問題を増税なしで解決する。

 そして(3)と(4)の目的のために、消費税を5%だけ上げる。そのうち半分は、社会保障充実に充てる。ただしそれは高齢者のためではなく、もっぱら女性の社会進出支援のため。高齢者の年金と医療に今以上のおカネを使うことはできない。私たちの世代は今の年金と医療を前提にしてやってきたのだから、自己責任。そういう自助自立の原則を再確認する必要がある。そして残りの2・5%分はTPP対策やインフラ整備など、経済活性化のために使う。

 こうした方向性をきちんと示せば、高齢者も理解してくれるはずだ。日本国民は賢いから、リーダーが自助自立を訴えれば、きっとわかってくれる。日本の政治には懐が深いところがある。今は埋もれていても、総理という大役を得て、大化けする人間が必ず出てくると思う。


この論説で分からないのは2年でデフレを脱却し、増税することなく、規制緩和と社会保障の自然増抑制でプライマリーバランスを黒字化するという点である。  これはかなりの離れ業と言わなければならない。 たしかに2003年から2007年にかけて22兆円の財政の改善があったことは事実だが、これは、アメリカの好景気(金融バブル)があったことも大きい。 


現在のプライマリーバランスの赤字は23兆円だが、所謂埋蔵金という恒久的ではなく枯渇必至の財源を無視すれば、実際には30兆円を超えるプライマリーバランスの赤字がある。  2年で、社会保障費の伸びの抑制と、規制緩和で何故30兆円前後もの財政改善が図れるのか、私には非常に疑わしく思われる。 いや23兆円としても不可能なように思える。 たしかに増税というのは抵抗があるし、不景気のときに増税するのは経済がさらに落ち込む危険はある。  


しかし、今の日本の財政を見ると、景気が良くなるまで増税を先送りできるのだろうか。 私にはそれは困難なように思える。 なぜなら、現在のアメリカの不況、ヨーロッパのユーロ危機、石油、食糧の高騰といった悪条件はまだまだ続きそうだからだ。 景気が良くなるとしても、まだまだ先であるし、震災の復興局面では需要が供給力を上回り、インフレが起こり、長期金利が上昇する危険も大きくなると思われる。  このような状況では国債市場は神経質な動きになることが十分に考えれる。


竹中教授の言うように、実のところ財政を再建しようと本気で考えるとどうしても消費税を30%程度に上げないといけない。 これを回避出来る方法があるとすれば、素晴らしいが、竹中教授は何か秘策があるというのだろうか。 もしあるのなら是非、知りたいように思う。