高橋洋一、嘉悦大学教授は、http://twitpic.com/4g6c0g  で日銀がその保有する国債を借り換えるための借換債23兆円を直接引き受けても長期金利が上昇しなかったことを取り上げて、「日銀の国債直接引き受けをしても円の信認は失われなかった」と言っている。


この発言は、意味不明だ。 なぜなら借換債を直接引き受けても、日銀の保有する満期を迎える国債が、単に新しい短期国債に入れ替わるだけのことで、通貨の供給量に変化を生じないからだ。 


高橋洋一がこのような発言をする理由は、新発国債を復興費用捻出のために、日銀に直接引き受けさせようという、デフレ脱却議連などリフレ派の動きに肩入れしようということだろう。 国債の直接引き受けといっても、新発国債を直接引き受ければ、通貨供給量が引き受け額だけ増加するのは自明の理で、日銀が保有する国債の借換債のように現実には通貨のやり取りがない直接引き受けとは全く話が異なることは、ある程度の経済の知識があればすぐに分かることだからだ。


このように、世論を故意にミスリードするのは、許せない思いだ。 高橋氏には学者としての良心はあるのだろうか。


また高橋氏は日銀の国債直接引き受けに関して


http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20100915/plt1009151617005-n2.htm


において「財政法5条が制定された戦後は、国債の既発債市場(国債流通市場)がなく、新規国債について日銀の国債引受を禁止しておけば、日銀が野放図な通貨を発行せず、悪性のインフレが起こることはなかった。ところが、今や国債流通市場は大きくなり、国債も入札方式で発行され、新規国債と既発国債の差はない。そうであれば、財政法5条に固執し、国債買いオペまで否定的になるのではなく、財政法5条の趣旨を生かすために、インフレ目標を採用し、国債買いオペを弾力的に行うべきである。今や、それが「人類の英知」だ。世界の中央銀行はそうしているが、日銀だけができていない。」


と書いている。 


しかし、新規国債と既発国債の日銀引き受け、買い取りには大きな差がある。

それは新規国債を引き受ければ、円の流通量はそれだけ増加する。 一方、既発国債の買い取りは、金融機関が預金などの運用のために買い取った国債が現金に変わるだけで、貨幣の流通量はあまり増えない。 

つまり通貨を直接増やすのが直接引き受けなのだ。 


FRBのQE2も国債の直接引き受けは行っていない。 QE2では銀行の国債が現金に変わり、海外に投資されて、資源価格や食糧価格の上昇を招いた。 


日銀の国債直接引き受けを高橋洋一氏は、学者としての良心を捨てても実現したいらしいが、こんな暴挙を許すわけにはいかない。