オックスフォード大のアフリカ人留学生が先導する学生運動 | 鉄火のマキ@London イギリス教育事情一番乗り

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ディスレクシア&ADD持ちの無謀なオックスブリッジ受験体験記録。

 

 果たしてオックスフォード大学は大英帝国の歴史を「負の遺産」と書き換えてしまうのでしょうか…19世紀末の帝国主義と人種差別を象徴する植民地首相セシル・ローズの石像の取り壊しをめぐっての騒動。ローズはアフリカのダイヤモンド利権を手にしアパルトヘイトにつながる黒人差別政策を進めたイギリス人で、死後は遺産の多くを南アフリカのケープタウン大学や本国のオックスフォードのオリオル・カレッジに遺したことで石像や記念碑が両大学に建てられています。

 

 

石像は校舎建物の一部になっており景観上も取り外すことは困難


 しかしこの像を放置すれば人種差別や植民地支配を正当化すると昨年、ケープタウン大学のローズ像が学生ら手で撤去され、そのムーブメントが本国オックスフォードの学生たちに飛び火したのです。ローズの遺産は旧英国領出身の留学生の奨学金にもなっており、そのローズ奨学金を受け取ってオックスフォードにやってきたアフリカ人学生がこの像撤去の運動家だったというのですから皮肉なものです。

南ア出身の彼らいわく「セシル・ローズはヒトラーと同じ。嫌でも奴隷制度の加害者の石像や肖像画の前を通らねばならず、その度に暴力を受けたような気分になり試験に集中できたもんじゃない」


私がこういう発言に違和感を覚えるのは「像をぶち壊してもその歴史が消えるわけではないのに何になる?」ということ。同情してこの手の我侭を許してしまうといずれ大学の図書館に入っていって「この本は燃やしてしまえ」とかになるわけですよ。イギリスの大学は世界中から学生が集まってきていてそのすべての学生が「傷つかない」「ポリティカルコレクト」な教材しか置かないことになったら一体何を学ぶのですか。

 

これがサイエンスの世界であれば、それまでの常識がブレイクスルーによって覆されても、歴史はそうではありません。変化する時代の価値観によって異なる新解釈はあっても、それまで継承してきた歴史がいちいち歪められて修正されてはたまりません。私達はそこに政治的な意図を持った者が紛れ込むのも想定した上でオープンにどんどん議論すべきなのではないでしょうか。

 

オックスフォード大学は「我々はローズと価値観を共有せず人種差別的な考え方や行動も許さない」と表明。現在のところオックスフォードは学生たちに屈服することなく石像と記念碑をそのままにすることにしました。大学に献金をしている有力な卒業生たちが反対に動いたようですが、フェイスブックやツイッターで「ローズ像を倒せ」のハッシュタグを使い世界的世論を巻き込む賢い学生運動家たちの勢いは削がれておらず、こういう帝国主義の戦犯に復讐する動きは他の団体と共闘して今後も先鋭化していきそうです。