前回→「マイナス金利の先にあるもの1 - マイナス金利は逆効果?」
マイナス金利の影響については何回かに分けてゆっくりと記事にしていこうと思ってたのですが、あまりにもマーケットの変化が速すぎるので、結論の方から先に書いていきます。
マイナス金利は、日本の財政破綻に通じる道かもしれません。
日本の下落が最も大きい
いきなり何を言い出すんだと思われるでしょうね。
自分でも感覚的にはとても納得できませんが、事実や理屈を積み重ねるとそうなってしまいそうです。
まず今回の株価の下落の大きさは、景気循環のそれではありません。
何らかの金融ショックが起こっている、またはこれから起こることをマーケットは予想しています。
上記はここ半年の日米独の株価チャートです。
赤が日経平均、青がNYダウ、緑がフランクフルトDAXです。
昨年8月の世界株価急落の前から見ても、赤の日経平均の下落が飛び抜けて大きいことがわかります。
為替のせいだという人もいるでしょうが、為替はこの間10%も変動していません。
一番売られているのが日本だということは事実です。
マイナス金利はヘアカットと同義
日銀はマイナス金利を導入しましたが、その時のアナウンスメントには以下の文章があります。
金融取引の価格(金利・株価・為替相場など)は、ある新しい取引を行うことに伴う限界的な損益によって決まる。マイナス金利が当座預金残高の全体にかからなくても、限界的な増加部分にかかれば、新しい取引によって当座預金が増えることに伴うコストは▲0.1%である。金融市場ではそれを前提として金利や相場形成がなされる。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160129b.pdf
平たく言うと、一部でもマイナス金利を導入すればそれにそって相場が形成されますよということになります。
当座預金口座のマイナス幅を広げていけば、いずれは市中金利もマイナスになっていきます。
実際、長期金利は先日早くもマイナスに突入しました。(「2016/2/9 長期金利がマイナスに」)
既発債がマイナス金利で推移していけば、当然新発債もそれにあわせてマイナスで発行されることになります。
ちらばった債権者からマイナス金利のクーポンを回収するのは手間も大きいので、マイナス金利の新発債はゼロクーポンのまま割増債で発行されるようになるかもしれません。
額面100円でゼロクーポンの債券が、はじめから101円の値段がつきます。
国は101円受け取って利息を払わず、100円を償還します。
つまり国は今後、はじめから一部デフォルト状態で国債を発行していくとことになる、という見方ができます。
ゼロ金利には出口がない
100円しか返してもらえない債券をなぜ101円で買うのか?
それは将来、債券価格が102円に上昇することを見込むからです。
先日の日銀のアナウンスメントにはこうあります。
マイナス金利の問題点としては、①マイナス金利による金融機関収益の圧迫があまりに大きいと、かえって金融仲介機能を弱める懸念があること、②金融機関が、マイナス金利の中央銀行当座預金の代わりに、金利ゼロの「現金」で保有すると、マイナス金利の効果が減殺されること、が挙げられる。
日本銀行のスキームでは、①の懸念を軽減するために「階層構造」を採用するとともに、②の可能性を塞ぐため、金融機関の現金保有額が大きく増加した場合は、その増加額を当座預金でゼロ金利が適用される部分から控除し、マイナス金利がかかるようにした。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160129b.pdf
マイナス金利が嫌だからといって銀行が日銀当座預金口座からお金を引き出すと、銀行には現金が増えます。
この増えた部分を銀行が現金のまま持っておくと、残った日銀当座預金のゼロ金利枠が小さくなり、やはりマイナス金利がかかります。
つまり銀行は日銀からお金を引き出すだけではマイナス金利は解消されず、貸出や債券運用に回す必要があります。
国債を買っても償還まで持っていると損をするので、銀行としては国債の価格が将来必ず上がるという保証を欲しがります。
その期待に応えるために、日銀はマイナス金利幅を拡大し続けることになります。
これは後戻りはできません。
一度でも後戻りするとその瞬間国債価格は暴落し、銀行に大きな損失が発生します。
日銀は市場からの信頼を失うでしょう。
償還時には大きな損失が出るので、銀行は償還前にかならず国債を売る必要があります。
今後国債の最後のホルダーは、必ず日銀になります。
日銀がすべての損失を引き受け、日銀の損失は膨らみ続けます。
どう考えても、まともな出口はありません。
株式市場は将来の大きなリスク、おおよそ資本主義経済で考えられる最大のリスク-国家財政の破綻-を心配し始めているのかもしれません。