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(前回記事→アメリカ連邦政府機関閉鎖で株価はどこまで下がる?


共和党が6週間限定の債務上限引き上げ案を提示したことにより、アメリカの連邦債務上限問題の解決の機運が高まり、先週の株式市場は日米とも上昇基調に転じました。


果たしてこのまま解決に向かい、株価は上昇で推移するのでしょうか?

個人的には、まだなんじゃないかなと思っています。




6週間の罠


現在のところ、この6週間限定の債務上限引き上げ案について、オバマ大統領は明確な態度を示していません。

これは共和党の巧妙な罠なんじゃないかと思います。


共和党はこの案によって、歩み寄りを見せたというポーズをとることができます。

一方でこのスケジュールに乗ってしまうと、11月末から12月初旬にはまた債務上限が来て揉めることになります。


11月末といえばブラックフライデー。アメリカのクリスマス商戦の初日です。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%87%E3%83%BC_(%E8%B2%B7%E3%81%84%E7%89%A9 )


アメリカのクリスマス商戦は尋常ではなく、個人消費の3割近くがこの期間に集中します。

お買い得商品を求めて暴動が起きるのが、毎年恒例のアメリカの風物詩となっています。


アメリカの景気は個人消費によって支えられているとよく言われますが、クリスマス商戦はその鍵を握っており、この時期に債務上限問題で揉めることは絶対に避けなければなりません。


つまり、共和党の案には乗れないのです。


共和党としては、歩み寄りの姿勢を見せつつ、クリスマス商戦を人質に取る。

6週間とは、そういう意味なんだと思います。




今後の展開


共和党案に乗れば、完全にキャスティングボードを握られてしまう。

かといって、歩み寄りの案を示した共和党を声高に非難することもできない。


政権側としてはかなりきつい詰みに入ってきています。

これを打開するには、オバマケアを差し出す。少なくとも延期することが必要になってくるかもしれません。


しかし仮に医療保険制度改革が頓挫することになれば、オバマ政権は任期3年以上を残してレームダック化することは避けられない状況にあります。

前回シリアへ軍事介入をまとめ切れず指導力のなさを露呈したオバマ政権が、オバマケアを投げ出すことになれば、政権は死に体となってしまいます。


オバマ大統領はこれまで、これといった業績を残せていません。

オバマケアが通れば、任期中最大の功績となるでしょう。

しかしながら頓挫した場合には、「何もできなかった大統領」の烙印を押すことは容易になります。

共和党はもちろんそれを狙っています。




レームダックと株価


NYダウの長期的な推移を見ると


2000年1月 ITバブルによるピーク

2007年10月 アメリカ住宅バブルによるピーク


ほぼ8年ペースでピークが来ていることがわかります。


これに対してアメリカ政権はどうなっていたかというと、


クリントン政権は、不適切な関係で1999年に弾劾裁判にかけられレームダック化

ブッシュ政権は、イラク戦争への批判から2006年末の中間選挙で敗北しレームダック化


いずれも政権がレームダックに陥ってから1~2年のうちに株価はピークアウトしてしまいます。



technote投資ダイアリー-DOW1992-2013


株価の下落を喜ぶ政権というのはありません。

その政権がレームダックに陥り、残日程を消化するだけになってしまうと、政策の後ろ盾を失った株価は軟調にならざるを得ません。


米株のピークがほぼ8年周期でやってくるのも、このことと無関係ではないように思います。


アメリカ大統領の任期は4年であり、再選はあっても再再選はありません。

大統領職を辞めた後に議会運営に携わることも、慣例としてありません。


なので、4年もしくは8年の任期終了が近づくと、議会は辞める人間の言うことを聞く義理はなく、次の大統領選挙に向けて足の引っ張り合いを始めます。

アメリカ大統領は任期終盤になるとレームダックに陥る運命にあり、これはアメリカの政治制度の欠陥なんじゃないかなあという気がします。


オバマ大統領はレームダックになるのは時期的にまだ早いのですが、共和党にとってはオバマケアさえ押さえ込んでしまえば容易に民主党の支持率を下げることができ、債務上限問題でキャスティングボードを握れればかなり優位な状況にあります。


長期波動を見ても、株価にとって危険なのは、財政問題よりもむしろオバマ政権のレームダック化にあります。

オバマケアが通り、債務上限問題も決着してくれるのが最良のシナリオですが、かなり情勢は厳しそうに思えます。




来週の展開


今回の債務上限問題は、茶番らしい茶番、安易な解決にはならないかもしれません。

茶番なので結局は株価は戻りますが、共和党が王手飛車取りのこの絶好のチャンスを見逃すはずはありません。

オバマ政権が打撃を被らずにやり過ごすのはかなり難しいように思えます。


先週の株価の値動きはきれいな反騰姿勢となっており、このまま何事もなく上昇する確率は高いです。

しかしながら情勢的には早すぎるリスタートのように思えます。


6週間の債務上限引き上げの共和党案が提出されたことでオバマ政権は行き詰まり、米財政問題は逆に解決が難しくなった可能性があります。

株価は、データ的な判断では上昇ですが、情緒的な判断ではまだだと思います。



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