オカメインコに雨坊主 (ポプラ文庫ピュアフル)/芦原 すなお
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あらすじ

乗る電車をうっかり間違えてしまった<ぼく>は懐かしい雰囲気のある静かな村だった。そこではじめて出会った少女・チサノに導かれ、いつの間にか彼女がおばあさんと住む家で暮らすことになった。画家である<ぼく>は、雑誌の絵を描きながらこの村の風景を描くことが日常となっていった。そこで不思議なものと出会いながら豊かな時間を過ごしていく<ぼく>のスローノベル。



大変僕の好きなタイプの物語でした。

現実と幻想の狭間に暮らしているような、そんな世界。

類として梨木香歩さんの『家守綺譚 』のような雰囲気を持っています。


家守綺譚に比べると、この物語は空白が多いように感じます。といっても、文字数が少ないと言うことではなく、明らかにされないことが多い。

逆に言うのならば、読み解く場面が多いのかもしれません。

といいつつ、もしかすると、読み解くものじゃないのかもとも思ったり。

簡単に言ってしまえば、幽霊や摩訶不思議なものが各章で出てくるので、『彼らが導くから』で解決させようと思えば埋められる空白でもあります。

静かな小説だからこそ心地よい空白、間なので、胸にしっとり沁みるような感じです。


そしてこの小説の最も特徴的な人物はチサノである。

彼女はランドセルを背負い、肩からピンクのカバンを掲げ、右脇には画板をはさみその手で絵の具カバンを持ち、左手には習字道具を持ちながら登校する。

そして彼女はその歳に見合わないような物言いをする。

この語り草がたまらなく愛おしく感じるが、、、もしかすると昔のおばあさんはこういう接し方を亡くなったおじいさんにしていたのではないかと思います。それを聞いて育ったチサノは自然とその言葉を覚え、一方おばあさんは、<ぼく>に対しても静かに優しい言葉遣いで接し、ときにはチサノの言葉をたしなめたりもする。こうしてふたりはバランスをとっている、そんな気がします。


と、チサノの言葉遣いひとつでもいろいろな想像を掻き立てることの出来る本です。

小・中学生、もしかしたら高校生の読書感想文においてもぴったりかもしれません。


ふぅ…

そういえば、僕の地域では必ず読書感想文の本は決められた本から選ばなくてはなりませんでした。

昔は読みたい本なんてなかったのでその方が楽でしたが、本が好きな学生にはつらいのかもしれませんね。

まぁ、恋愛小説の読書感想文というのも…面白いかもしれないけれど…もし僕が先生だったらご遠慮願いたい部分もありますけど(^▽^;)