
- 家守綺譚 (新潮文庫)/梨木 香歩
- ¥380
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あらすじ
亡くなった友人の家に住むことになった綿貫は、そこで様々なものに出会う。掛け軸から現れる亡くなった友人・高堂、賢い犬のゴロー、気分屋のサルスベリに河童…。四季折々の花たちが導く少し変わった世界を、庭や池のついた2階建ての家から静かに触れる和製ファンタジー。
この本は何度でも読める作品です。
ゆるやかなテンポで、それでも甘ったるくない作風は、どことなく「蟲師」や「夏目友人帳」を思わせます。
綿貫の前では不思議なことが起こるのですが、それが不思議なことと思わせないのは、綿貫はじめ、周りの人たちもそれを自然と受け入れているからかもしれません。
そう、例えサルスベリが綿貫に恋をしようとも、河童が脱いだ殻を捜していたとしても、狸が人を化かそうとも。
この舞台は、おそらく明治、大正くらいの時代なのでしょうが、その時代の人たちはこうした出来事に自然ととけ込めたのでしょうか。そういえば、恩田陸さんの「蒲公英草子」でも、不思議な人たちを受け入れる家族だったなぁ。
この作品は短いものでは5ページ程度の話がとん、とん、、とん、、、と続いていくのですが、この作品が心地よいのは、短い話の中にそれぞれ花が登場して、それがその話の色を決めているからだと思います。
サルスベリ、都わすれ、ヒツジグサ、ダァリヤ、ドクダミ、カラスウリ…
なんとなく、じぶんのまわりに花や草木がある生活っていいなぁって、この本を読み終わるたびに思います。
僕は植物の名前にも疎くて、半分以上形を想像できないものもあり、その度に調べてしまうというような人間ですが。
僕の好きな話は「白木蓮」に雷が落ち、そこにタツノオトシゴの卵が宿された話、サルスベリにサルが乗っていたことがきっかけで、名前について考える「野菊」、小鬼の姿が微笑ましい「ふきのとう」です。ん?知っている植物が出てくるから?ち・・・違いますよ(-。-;)
どれも描写が素敵で、いつかこの作品がアニメ化しないかなぁなんて思ってしまいます。
それこそ「蟲師」や「夏目友人帳」のような作品が生まれると思うんだけどなぁ。
ふぅ…
綿貫は高堂の父親からこの家を守ってもらえないかと相談を受け、ここに住むことになったのですが…なんかいいですよねぇ、家を守るって。
文字通り家を守ることも素敵なことだと思うんです。大切な思い出を詰め込んだ世界ですからね。
でも家を守るには他の意味も考えられて、家族を守るとか、家系を守るという意味にもとれます。
綿貫は最後にこういっています。
「私には、まだここに来るわけにはいかない事情が、他にもあるのです。家を、守らねばならない。友人の家なのです。」
彼は、任された家と・・・何を守ろうとしたのでしょうか。
それは、この本を読めばわかるかもしれません。