先日出場したレース後に元プロ選手の出場自粛を言われたことでいろいろなことを考えました。

プロとは何か。
僕は大学卒業してから30歳までロードレースの選手として生きてきました。
機材をメーカーから供給してもらい、遠征費やエントリー費をチームに負担してもらい活動しました。
その中でも僕は特異で、主な収入源がバイトによるものでした。年俸ゼロの年もありましたし、遠征費自腹の年もありました。
ヨーロッパのチームと違って、マッサージや食事、時には機材も自費購入だったりします。

そのような「競技活動」にかかる費用を引くと8年間のプロ活動期間での平均年俸は二桁台でした。
それでも日本のトップで戦える楽しさやアシストに助けてもらえることのプライド、多くの方の応援によって戦ってこれました。

2014年で引退し、今でもバイト生活を継続しています。
練習しないでいいので選手時代よりもバイトにたくさん行けます。

昨年、あるトラックレースにエントリーしました。
バイトして貯めたお金でタイヤを買い、エントリー費を払い会場に行きましたがトップカテゴリーにエントリーせず、上から2つ目のカテゴリーにエントリーしたため「ズルい」と言われました。
そしてその人がそのカテゴリーで優勝し、僕はトップカテゴリーで何度も周回遅れにされました。

そのときにしばらくレースには出ないでおこうと思いました。

1年経ち、先日お誘いを受け久しぶりにレースに出場しました。
オープン参加となったので勝ってもいいと言われましたが月に150kmしか乗っていない上、元々アシスト様に助けていただき走っていたため単騎になるとめっぽう弱いのです。

そうなればレースを活性化させたり、良い走りを見せたり、時には指導したりするわけです。
プロ(元プロも)が適当に走ることが一番かっこ悪いと思っています。誰の心にも響かないですし、それなら走る必要もないと思います。

先頭交代で牽制なんか絶対できないですし、他の人より長く引きます。
出場した大会ではラスト半周で本気逃げしました。心拍数や残り距離からゴールまで届かないことはわかっていました。
「本気で負ける」
ことを選択しました。

集団スプリントをして先頭でゴールするのも、手を抜くのも、本気でスプリントして負けるのも(これ一番ダサいw)よくないという判断でした。

とまぁいろいろ考えて走っているわけです。
会場では聞かれたことは答えますし、ときにはポジションを出してあげることもあります。
フィッティングを仕事にもしているのでなぜ無料でするのかと言われますが、その場でできることと仕事としてすることとは違います。
その場では完璧にすることはできませんがノウハウは伝わります。

そして無料でできるのは僕には引退してからもスポンサーが付いているからです。
スポンサーから物品であったり活動費を出していただいております。
自分で決めていることがあって、あくまでも「活動費」であって「生活費」ではありません。
大会に出場したり、機材を揃えたり、チームカーを作ったりすることで「活動費」を使わせていただいています。

会場でのアドバイスはその「辻のスポンサーが出している」と思って欲しいです。
その話が面白かったり、自分のためになったと思ったのであれば

 マルホン胡麻油を買ってください!
 サンボルトでオーダージャージを作ってください!
 ポラールの時計を買って、東京サンエスのパーツを取り付けてください!

もちろん誰が買ったかなんてわかりませんが回り回ってくるものだと思っています。
プロの選手も同じです。教えてくれた選手が乗っているメーカーのバイクやかけているサングラスを真似して買ってください。
それがプロの役割です。

そうなると「元」プロというのは余計に中途半端で面倒な存在です。
招待するならプロを呼ぶべきだし、招待したとしてもギャラは出ないとか。
自費で出ても今回のように自粛するよう言われたり、現場での活動は堅苦しくなっています。

僕はその中でも特殊なので吉本興業の芸人さんとステージしたり、向日町競輪場で競輪選手とレッスンしたり、自分で切り開いていけるところは突き進んでいます。

これだけチームが増え、プロ選手が増えると元プロ選手はどんどん増えていきます。
引退したときに何ができるのか、競技で学んだことをどう活かすことができるのか、最先端の元プロとしてできる限りのことをしていきたいと思います。

あの頃の僕ができなかったことを、あの頃憧れていた存在に、これからもチャレンジしていきたいと思います。


こんなちびでガリガリだったのによく成長したものだと思います。