まどかは強引に仁美を振り払い、化学薬品の入ったバケツを抱え、
「ええいッ!!」
窓の外に投げ捨てた。
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」
「何するんだこのガキ…」
「儀式の邪魔をして…」
「殺せ…」
「ひっ!?」
生気を失った人々が、まどかに群がり始める。
「殺せ…殺せ…殺せ…」
「いや、やめて…やめて…」
「殺せ…殺せ…」
「いやあああああッ!!」
まどかは逃げ出した。明かりも無い暗がりの工場の中を。
「た、助けて! 助けて!」
何故か窓は開かない。追いかけて来る人々にはそれほど速度は無いが、数が数。
捕まれば、まどかの腕力では脱出はほぼ不可能だ。
「殺せ…殺せ…」
「誰か助けて…! マミさん! ほむらちゃん!! 誰か!!」
呼べど叫べど、こんな人気の無い夕暮れの街外れに誰が来てくれるのか。
「あっ…!」
窓から差し込む微かな光で、ドアがあるのを発見した。
まどかは飛び込むようにその中に入り、鍵をかけた。
「殺せ…殺せ…」
ドアの向こうから声が聞こえる。
外側からドアを激しく叩き、破壊しようとしている。その部屋には入口はそこしか無い。
ドアを壊されればもう逃げ場は無い。
「あああ…どうしよう…!」
その時、部屋の中の空間がぐにゃり、と曲がった。
「え!? こ、これって…」
まどかが逃げ込んだその部屋こそ、この工場に巣食う魔女の棲み家だった。