――見滝原町。
その日、まどかは1人で下校していた。
いつもは一緒に帰るさやかと仁美は学校を欠席していたためだ。
「さやかちゃんも仁美ちゃんも2人一緒に学校欠席するなんて珍しいな。
1人で帰るなんて、何か久しぶり…」
時間を持て余していたまどかは本屋などに立ち寄ったりしていた。
気がつくと辺りはすっかり夕闇に包まれていた。
「うわあ、もうこんな時間。早く帰らないと」
急ぎ足で街を行くまどか。すると。
「…あれ?」
まどかと同じ見滝原中の制服を着た人影が。
「仁美ちゃん?」
学校を欠席していた筈の仁美が、制服を着たまま街を徘徊しているではないか。
おぼつかない足取りで。
「仁美ちゃーん!」
まどかは大きな声で呼びかけるが、仁美はこちらを見向きもしない。
「仁美ちゃ…あ!?」
近寄ってみると。
「あれは…魔女の…!」
魔女のくちづけ。魔女に心を奪われた者の首筋に現れる紋章。
「ひ、仁美ちゃん! ね、ねえ! どうしたの!?」
「…あらぁ? 鹿目さぁん」
まどかに肩を揺さぶられて、ようやくその存在に気づく。
しかし、その目の焦点は合っていない。心、ここに在らずと言った様子だ。
「ど、どうしたの、こんな所で!? 学校はどうしたの!?」
「そんな事はどうでもいい事ですわ…学校なんかよりももっと素晴らしい場所へ行くのです」
「何を言ってるの…」