テナーバスやバストロンボーンのバルブ形状は、4つのタイプがあります。

1.ロータリーバルブ
2.セイヤーバルブ
3.ハグマンバルブ
4.グリーンホーバルブ

メーカー独自のバルブ(下記)もありますが、別途ということで(まだ他にあるかも?)。

・ヤマハ:Vバルブ
・コーン:CLバルブ
・レッチェ:フルフローバルブ
・K&H:オープンフローバルブ
・シャイアーズ:トゥルー・ボアバルブ(Tru-bore)

まずは、いろいろなメーカーに搭載されている4つのバルブについて詳細を書きます。

1.ロータリーバルブ(Rotary Valve)

$トロンボーン吹きの吹奏楽団/ブラスバンドへの入口-ロータリーバルブ

 1818年にドイツのフリードリヒ・ブリューメルが考案し、現在まで改良されつつ広く使われているバルブ構造です。

$トロンボーン吹きの吹奏楽団/ブラスバンドへの入口-ロータリーバルブ
  ヤマハ

2つの通り穴をもつ円筒形のシリンダーを90度回転させることにより、主管側とF管側に息の流れを変える仕組みになっています。

近年、各社で様々な改良を加えているので、ロータリーバルブでも抵抗が少ないタイプはあります。

トロンボーンだけでなく、ホルンやチューバにも使われています。


2.セイヤーバルブ(Thayer Valve)

$トロンボーン吹きの吹奏楽団/ブラスバンドへの入口-Thayer Valve
 1976年にアメリカのエド・セイヤーがトロンボーンのために考案しました。

可能な限り管の通りを緩やかに曲げるように工夫した構造を持っています。

円錐形の軸を楽器の主管に沿って20~25度回転させることで、電車のポイントのように管の通り道を切り替えます。

トロンボーン吹きの吹奏楽団/ブラスバンドへの入口-セイヤーバルブ内部構造

結果として、テナーに近い吹奏感が得られるので、抵抗感が少ないワイドなサウンドを得ることができます。

ロータリーバルブに比較して表面積が大きい分、内部の気密性を確保するのが難しく、息が漏れると指摘するプロ奏者がいます。

ロータリーバルブと比べて、10万円位高いです(Bach製品)。


3.ハグマンバルブ(Hagmann Valve)

トロンボーン吹きの吹奏楽団/ブラスバンドへの入口-ハグマンバルブ

 1990年代初めにスイスのルネ・ハグマン(Rene Hagmann)が、セイヤーバルブのメンテナンス性の悪さに対処するために考案しました。

形状はロータリーを一回り大きくした丸型です。ロータリーより重いですが、セイヤーバルブより軽いです。

ハグマンバルブは、バルブの中に曲げられた管が入っており、管を60~66度回転させて、息の流れを変える仕組みになっています。

ロータリーバルブと比べて、3万円位高いです(Bach製品)。


4.グリーンホー・バルブ(Greenhoe Valve)

トロンボーン吹きの吹奏楽団/ブラスバンドへの入口-Greenhoe Valve

 2001年頃に米・ミルウォーキー交響楽団のトロンボーン奏者である、ゲイリー・グリーンホー(Gary Greenhoe)が発明・設計しました。

写真で見る限り、基本形はロータリーバルブです。詳細部分はまったく違い、特にバルブの穴径は大きめです。

トロンボーン吹きの吹奏楽団/ブラスバンドへの入口-グリーンホー・バルブ

 グリーンホーは、バルブから巻き方まで一体化したデザインが特徴です。

F管の巻き方はオープンラップタイプ。さらにF管の径を太めにして、息の通りをよくしています。

個人的には、かっこいい巻き方で、好きな形状です。写真はグリーンホー社のサイト(英語)でご覧下さい。

 グリーンホーバルブが搭載されている製品は、例えば「CONN:88HRT-G」などあります。販価は45万円前後のようです。

ロータリーバルブの同等タイプ「88HRT-O」が27万円位なので、グリーンホーバルブにすると18万円高くなります。

バルブの説明は以上です。

 値段が安い順に、ロータリー < ハグマン < セイヤー < グリーンホー となります。

 誤解を恐れずに極論すると、F管にて構造上もっとも息の流れが良いタイプは、「オープンラップのセイヤーバルブ」です。

また、ハグマンバルブは、費用対機能が高いと思います。

あくまでF管だけの話ですし、デメリットもありますから、トータルバランスで楽器を選定して下さいね。