「カーネーション」 第51回
昭和15年(1940年)。
菓子屋に糸子が来ます。
店内を見回す糸子。
栗まんじゅう、きんつば、ようかんなど、お菓子のケースはどれも空っぽです。
もうこのごろはさっぱり置かれへんようになってと明かす女将。
仕方なく、わずかに残っていた大福を買って帰る糸子。
[国民から栗まんじゅうまで取り上げるようなみみっちい事で、日本はほんまに戦争なんか勝てるんか!?]
小原家。
糸子が縫い子達や静子と大福を食べています。
栗まんじゅうぐらいな、好きなだけ食わせろっちゅうんや、その程度の度量ものうて何が大東亜共栄圏の盟主や、国民搾り上げる事ばっかり考えよってからに、ええかげんにせえちゅうんや!と憤る糸子。
先生、声がおっきいですと注意する昌子。
しょっぴかれるで、姉ちゃんと心配する静子。
そやかて思えへんか?うちらは戦争なんか始めてもらわんかて、十分機嫌よう暮らしちゃったんやと言う糸子。
紳士服の方の従業員、中村君が帰ってきます。
男の人らで食べ!と大福を渡す糸子。
2階の部屋。
大福を食べる従業員達。
新聞を読む勝。
「成都、敵中着陸に成功した」と書かれています。
[今年の7月に七・七禁令が出て、100円以上の洋服を売ったらあかん事になりました。上等や!受けて立っちゃる!うちは100円以下でできるかぎりのええ服をばんばんこさえちゃりました。]
昭和15年(1940年)というと、日本が英米に宣戦布告(太平洋戦争開戦)の約1年前ですね。
店。
出来上がった洋服を体に合わせてみて喜ぶ常連客の大山。
小原さん、これ食べてと、かごに入れた柿を手渡す別の客。
いや~うれしいわ!うっとこ、みんな大好きやと喜ぶ糸子。
あんな安してもうたらうちらは助けるけど、店潰さんといてやと言う客。
居間。
帳簿?を見て、なんぼ何でもむちゃですと糸子に言う昌子。
30円の服に15円の生地を使って、こんな仕立てをきっちりやっていたのでは利益は全然出てこない、お客に喜んでもらう事は大事だけど、これだけ繁盛して、これだけ働いて、これしか儲からないという事は間違っているという訳です。
そう言う昌子に対し、今はええんやて、そんで!今はその・・・お国の非常時やろ、そんな店の儲けやら、そんな細かい事言うてたいかんねん!儲けはのうてもお客さんに喜んでもらう、そうする事でうちらもお国のためになるんやと自分で納得する糸子。
笑う勝や静子。
何や?と聞く糸子。
また適当な事言うてるでと笑う勝。
昼間言うてたんと全然ちゃうやんと笑う静子。
直子の泣き声が聞こえてきます。
表を見る糸子と勝。
通りに直子を背負ったおばちゃんが歩いてきます。
泣いている直子。
ええ泣きっぷり。笑
店。
直子を2階に連れて行く従業員と勝。
直ちゃんは明日からもうよう預からんわとため息つく吉田のおばちゃん。
はれ~、何?ちょっとまたやんちゃした?と尋ねる糸子。
やんちゃどころの騒ぎとちゃうで、どこの猛獣連れてきたんかちゅうほど家ん中グチャグチャになってしもたわと言う吉田。
柿を上げてご機嫌取りしようとする糸子。
直ちゃんは今日かぎり、もう勘弁してと帰ってしまう吉田。
なるほど。この次女、直子を後に二宮星ちゃん(糸子の少女時代を演じた子)が演じるんですね。楽しみ。
夕方。
善作が優子を送ってきます。
明日から直子の面倒も見てもらおうとする糸子と勝。
うちも優子で手ぇいっぱいや!まあ、また新しいとこ探せと断る善作。
夜。晩ご飯を食べる一同。
[今、縫い子は昌ちゃん含めて4人が住み込みで働いてるよって、夜はみんなで代わりばんこに子守ができるものの…]
お~い糸子!お前もはよ食べよ!と声をかける勝。
ミシンを使っている糸子。
[昼間はさすがに誰も、猛獣の相手をしてる余裕はありません。]
泣いている直子。
もう、どないしよう…とつぶやく糸子。
明け方。
2階の部屋で糸子達が寝ている
1人起きている直子が花瓶を倒し、花を床にたたきつけて遊んでいます。
寝ている昌子の上に乗っかる直子。
イテッ!と悲鳴を上げる昌子。
目を覚ます糸子。
店。
直子を背負っている糸子。
電話がかかります。
かけてきたのは善作で、何か話があるようです。
河瀬家。座敷。
直子を背負ったまま来る糸子。
待っていた河瀬と善作。
[「ええ話がある」ちゅうから、てっきり直子の預け先でも見つけてくれたんか思たら、全然違て、商売の話でした。]
生地を持ってくる河瀬。
[この人はお父ちゃんの知り合いで、生地問屋の大将です。]
これなんやとグレーの生地を見せる河瀬。
グレーの生地に1本金糸が入っています。
たった1本だけで、この生地はぜいたく品やちゅう事で、販売禁止を食ろてしもたんやしと説明する河瀬。
生地を見て、上等です!ちょっと前やったらうちもこんなんよう使てました、ワンピースでもスカートでも何でもいける、こんなんが一番都合がええんですわと言う糸子。
お前、買うちゃれよ、大将困ってんや、これと同じもんがな蔵に山ほどあんねん。これ全部売れんとなったら 店えらいこっちゃと言う善作。
分かりました、とりあえず1反もろて、何ぞこさえてみますと言う糸子。
おおきに!せめて半分でも買うてもろたら、わしの首もなんとかなるさかい、頼む!このとおりや!と、畳に両手をついて頭を下げる河瀬。
ところで大将、お宅に子守でける人いてませんか?と尋ねる糸子。
なるほど!交換条件ですね。
生地を抱え、糸子が帰ってきます。
えらいうれしそうやな!何ぞええ事あったんけ?と尋ねる木岡。
直子預かってくれる人、見つかってん!と笑顔の糸子。
夕方。小原家。
泣いている直子を昌子に渡す糸子。
着物は破られ、あちこちにひっかき傷を作った女の子が泣き顔で立っています。
大将に言われてお守りしちゃったんやけど、直子ちゃんがなんぼ言うてもうちのおさげ引っ張ってくるし、ひっかいてくると泣く女の子。
ああ…堪忍なあと謝る糸子。
何事か思うたら、そういう事やったか。女の子、かわいそう。
夜。
糸子が生地を見つめ考えています。
どないかなる、絶対何か方法があるはずや…とつぶやく糸子。
1本だけ入った金糸を隠す方法を考えなければなりません。
糸子が難題に挑戦する、こういうエピソードは久しぶりで、こういうのが好きなんです。ワクワクします。
それにしても直子ちゃん役の子、ええ演技しますね。あっ、演技じゃないか。笑