「カーネーション」 第34回
紳士服ロイヤルの裏庭。
糸子が洗い物をしています。
聞こえてくるのはセミの泣き声。
[暑い!今年の夏は暑いです。]
店内。
そやから、わしは言うちゃったんや、うちがいつまでも岸和田で田舎もん相手に服作ってる訳ないやろ、そのうち、心斎橋か東京にバ~ンと店出さあてよと語る店主。
さすが大将!と、持ち上げる職人。
美味しそうに糸子が入れたコーヒーを飲む川本。
そもそもな、わしのおふくろは東京生まれなんやと言う店主。
そうなんですか?と聞く職人。
ああ、そうなんだよと関西なまりの標準語で答える店主。
その時、こんにちはと言う女性客の声。
裏庭。
糸子のところに川本が来ます。
あんた、ごっつい客連れてきたなと言う川本。
何の事か分からない糸子。
糸子を店に呼ぶ川本。
店内。
糸子が来ます。
客はダンスホールのサエです。
店主を見て、ク…クビですか?と尋ねる糸子。笑
何でクビやねん?と言う店主。
けど…あの…、この人知ってますと言う糸子。
お前から聞いて、うちの店、わざわざ探して来てくれたらしいどと言う店主。
何しに?と尋ねる糸子。
イブニングドレス、作ってほしいんやと言うサエ。
いぶにんぐどれす?と聞き直す糸子。笑
一番上等な客から、岸和田は後れてるよって、いまだに踊り子も着物にエプロンやと言われたそうです。
そら、イブニングドレスの方がず~っと見栄えよろしいでと言う店主。
うち、イブニングドレスを見た事ないんやと言うサエ。
何ちゅうか、こう、ピャ~ッとしたもんですわ、こう、わあ~っとしたと、ジェスチャーで表現する店主。
ピャ~ッとしたとか、わあ~っとしたとかで分かるかい!笑
お前作れるな?イブニングドレス、と糸子に尋ねる店主。
はあ、イブニングドレス…、自信なさそうな糸子。
こいつはこう見えても、心斎橋百貨店の制服作るぐらいの腕持ってんですわと糸子を紹介する店主。
はい、婦人物やったら、一とおりの事はできるつもりですと言う糸子。
イブニングドレス、作れるやろ?再び尋ねる店主。
作れますと答える糸子。
ほな頼むわと言うサエ。
なるほど。糸子があっさり就職できたのは、心斎橋百貨店の制服を作った実績があると善作がアピールしたからなんでしょうね。
試着室で糸子がサエの採寸をしています。
勘助と、もう会うてへんな?と尋ねる糸子。
会うてないわ、支配人の言いつけ破ってまで会わなあかんほどの男ちゃうやんと答えるサエ。
店内。
サエから前金として10円を受け取る店主。
とにかくええもん作ってと言って帰っていくサエ。
見送る店主と糸子。
大将、ところでイブニングドレスてどんなもんですか?と尋ねる糸子。
ああ?知らんのか!?と聞く店主。
知りません、見た事もありませんと答える糸子。
ど…どないすんねん!?と慌てる店主。
大将が知ってんとちゃうんですか?と尋ねる糸子。
わしが知るか!わしは紳士服専門じゃ!お前が知ってるやろ思たんや!と答える店主。
うちかて知りませんやん!と言う糸子。
自分でどないかせえよ、今更、断る訳にいくかいと言う店主。
髪結い、安岡。
玉枝にイブニングドレスの事を尋ねますが、玉枝も分かっていません。
八重子が帰宅します。
イブニングドレスって知ってる?と尋ねる糸子。
確か、こないだ、新聞に載ってたと思うからちょっと待ってやと、新聞をを探しに行く八重子。
泰蔵さん、今日は家にいるというのに姿を現しませんね。
この間、奈津が来たと話す玉枝。
克一は倒れてからずっと寝込んでいるそうで、吉田屋は奈津と母親でやっているそうです。
八重子が新聞を取ってきます。
「新しい婦人の職業」という特集記事でダンスホールの踊り子が紹介されています。
ドレスを着た踊り子の写真を見て、普通のドレスやな、やれん事ないなと言う糸子。
見出しに目が行きます。
「脚二本で月に三百円稼ぐ」と書かれているのを見て、サエの羽振りの良さを納得する糸子。
そんなええの?と聞く玉枝。
ごっついでえ、若いのに10円ポ~ン出して、「これ前金やさかい、ええのん作ってくれたら、もっと払うし」と、サエのモノマネをする糸子。
うまいわ!笑
そんな羽振りのええお客、どないして知ったんよ?と尋ねる玉枝。
うん…何でやろなあ?答えられない糸子。
笑う一同。
勘助は?と尋ねる糸子。
おかげさんで、だいぶ反省したみたいでなあ、何やかんやよう手伝うてくれるわと答える玉枝。
夜。
小原家で近所の人が集まって宴会が開かれています。
木之元電キ店で糸子が電話をしています。
おっ、木之元の奥さん、子供が産まれたんや。
扇風機の風で遊ぶ光子。
「寒い程、風が出る電気扇」というキャッチフレーズが笑える。
電話を終え、やっぱし神戸のおばあちゃん、イブニングドレス持っちゃったわと妹達に伝える糸子。
へえ~!と言う妹達。
明日、神戸に見せてもらいに行ってくると言う糸子。
ええ?と固まる静子と清子。
またお父ちゃんに怒られるでと心配なのです。
かめへん、怒ったかて、このごろ、お父ちゃん酒飲み過ぎてるよって、 怒鳴ったかて大してでかい声出えへんでと言う糸子。
お父ちゃんの事、そんなふうに言うたら…と言いかける静子。
ほんまの事や!と言う糸子。
翌朝。
徳利や茶碗が転がった部屋で酔い潰れている善作。
2階から降りてきて、善作を見る糸子。
[うちが思うに、間違いのう、お父ちゃんにはガタがきてます。]
ハルが起きてきます。
ちょっと仕事の事でな、神戸行ってくるわと伝える糸子。
[奈津のおっちゃんも倒れたしなあ。]
電車の中。
[うちのお父ちゃんも年取ったんと、呉服屋が潰れかけてんのと、期待した娘がいまひとつパッとせえへんのと。そら、お酒も飲みたなるか知らんけどなあ…]
松坂家。玄関。
こんにちは~!と声をかける糸子。
いつもなら飛び出してくる貞子ですが、今日はありません。
代わりに、お手伝いさんが出てきます。
おばあちゃんは?と尋ねる糸子。
ちょっと、お部屋で休んでらっしゃるんですと答えるお手伝いさん。
どうやら夏風邪のようです。
部屋。
布団に寝、咳き込む貞子。
どないしたん?風邪か?大丈夫か?と声をかける糸子。
イブニングドレスを見る糸子。
舶来の生地で…、高かったんやでえと、咳き込みながら言う貞子。
[「ただの風邪や」ておばあちゃんは言うてたけど、今日はあんだけ好きなお菓子もあんまし食べんと、あんまししゃべりもしませんでした。]
風呂敷包みを手に、通りをゆく糸子。
[あっこのおじいちゃんかて、ちょっと前は、あっこまで年寄りちゃうかった。あっこのおねえちゃんは、よう見たら、もうおばちゃんや。]
[うちらが大人になった分だけ、大人も年取っていくんやな。]
今日はせつなかったです。自分も親を見てそう感じる事があるので。
でも、貞子おばあちゃんは大丈夫なんやろか?夏風邪っていうより肺炎とか結核なんじゃないの?心配です。
※明日は事情により、「カーネーション」記事を更新できません。