土浦殺人事件は2008年に起こりました。
丁度今から5年前です。
3月19日に犯行が始まり3月23日に逮捕されるまでに死者二人重軽傷七人という酷い事件でした。
その事件の犯人は金川真大(当時24歳)。
生きる希望を無くし、自殺が出来ないので人を殺めて死刑になろうとした男。
この男は先月2013年2月21日、彼にとってはお望みどおりに死刑が執行され、この世を去りました。
外務省ノンキャリアの父、一人の弟と二人の妹、そして母の六人兄弟。しかし互いの会話はほとんどなかったと言われています。
ゲームの世界に入ってしまった金川真大、そこに潜り込んでまで矯正させることが出来なかった父親。不登校だった妹、家庭が嫌になり家を飛び出して一人暮らしで大学を目指したもう一人の妹。互いの携帯電話番号を知らなかった家族。そして崩れる家庭に気付かない父親。
これらは公判の供述内容から解ります。
亡くなられた二人はどうやっても戻ってはこない訳で、その家族の悲しみは言葉では表せないほどに辛く大きなものでしょう。
ところでその後、金川真大の家族はどうなったのでしょうか。弟や妹はどんな気持ちで生きているのでしょうか。
そのことはわかりませんが、ちょうどこのころに制作が始まり、翌年の2009年1月に公開された映画がありました。
「誰も守ってくれない」
映画版は加害者の家族に視点が置かれたストーリーになっています。
加害者の妹と彼女を保護する刑事。
情け容赦ないマスコミと淡々と点数を稼ごうとする警察。
別の事件で命を失った子供の両親の気持ち。
世間の目。
2チャンネルの暴走。投稿者を捕まえても次々と際限なく出現するモラルを無視した投稿。
本人が特定できなければ何を描いても書いても構わない世界。これが人間の本性か。
「2チャンネルめ、俺の事をちくりやがったやつがいる」
と言ったのは島根県女子大生遺棄事件で当初参考人となった19歳の男。
これは映画ではなく現実。
そんな中で、必死で自分の置かれた立場を理解しようとする15歳の妹。
それを保護しなければならない任務の刑事。
罪の重さに耐えられなくなって自殺した母。
そのことが更に少女にのしかかる。
「あなたは私の息子を助けずに、加害者の妹は助けるのか!」
詰め寄られる刑事。
刑事は少女にかける言葉が無い。
犯罪者の妹という立場と犯罪との因果関係。
共謀出ない限り因果関係はないのではないだろうか。
しかし世間は犯罪者の対象を家族にまで広げてくる。
家族という単位は例えば法人の様に一つのグループとして捉えられる。
少女はこれからどうしてゆくだろう。
少女との最後の別れの時、刑事は言った。
「生きろ!生きるんだ」
この映画を見ている時に金川真大に妹がいることを思い出しました。
事件があった犯人の家族は、本当にこんな感じで保護されるのか。
それに対してあなたはどう思って、この妹になんと声をかけますか?
追伸)
そういえば、金川真大の最期の手紙にこんなことが書かれていました。
(担当刑事だった荒井刑事の言葉)
「俺を信じろ!お前を信じる俺を信じろ!」
そして真大は
「この言葉には、本当に感動しますね」
と書いていた。
金川真大は家庭の中で、この刑事のような心の言葉が欲しかっただけなのかもしれません。
興味があれば一度見てみてください。
「誰も守ってくれない」
監督 君塚良一
脚本 君塚良一
鈴木智
製作 亀山千広
出演者
佐藤浩市
志田未来
柳葉敏郎
石田ゆり子
佐々木蔵之介
音楽
村松崇継
主題歌
リベラ「あなたがいるから」
撮影
栢野直樹
編集
穂垣順之助
配給
東宝