この映画は、私は、邦画の中では最も好きな映画だ。
いつも仕事が終わるたそがれ時になるとさっさと帰ってしまう。
清兵衛は武士である。
しかし、妻を労咳で無くし、老婆と小さな娘二人を男手で育ててゆく。
武士・侍どころではない。
生活のために、自分を捨てて、わずかな土地で畑を耕し、
内職をして生計を立ててゆく。
夜に内職をしながら子供と触れ合うのが唯一の楽しみ。
そんな人生に、出戻りになった幼な友達(女性)が尋ねてくる。
互いに好きな気持ちを相手に伝えられないまま、それぞれの人生を歩んでいたが、ちょっとした
きっかけで、運命の糸が交錯する機会ができる。
しかし、武士である清兵衛は、剣客を倒さねばならない運命になる。
小太刀(短刀)の免許皆伝であった清兵衛は、屋内での格闘で、小太刀であるがゆえに相手に勝つことができた。
そして、朋江と(子供、老婆共々)一緒に幸せに暮らしてゆく。
しかし、幸せは続かず、数年後に幕末の風雲に飲まれ、戦争で命を落としてしまう。
【感想】
清兵衛はヒーローではない。
武士として少し剣を使える以外はなんの変哲もない、人間であり、家族であり人生
である。
自分の身・分をわきまえ、置かれた状況に対して真面目に取り組み、そのなかで、巡り来る運命や宿命に立ち向かい、切り抜けてゆき、そして、小さな幸せ(本当は最も大きな幸せ)を掴み取る。
人間、たったこれだけのことが出来ない。
大切な人をみつけ、大切な人を守る。
こんな生き方をしていればよかった・・・、と反省し、感じる。
【出演】
監督
山田 洋次
原作
藤沢周平
俳優
真田 広之(井口 清兵衛)
宮沢 りえ(飯沼 朋江)
田中 泯(余吾善右衛門)
丹波 哲郎(井口 藤左衛門)
橋口恵莉奈(井口 以登)
岸 恵子(晩年の 井口 以登)
伊藤 未希(井口 萱野)
小林 稔侍(久坂 長兵衛)
主演助演の演技もすばらしかったが、
私は、小林 稔侍さんの久坂 長兵衛役の演技が、とてもすばらしかった。