小説「砂坂を這う蟻2」--2、新地-- |         きんぱこ(^^)v  

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      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ

先頭(一話)へ----


------ 信太山 ------


「福原は遠いで・・・飛田か信太山行っとこか」

福原は神戸にあるが、ここからは遠い。


大阪にはソープランドはない。

その代わり、変わったところがある。


表向きはお茶屋さんだ。

置屋とよばれるところから女の子が来てくれる。

だから顔は見れない。

これが信太山新地の特徴だ。


飛田は入り口に女の子が座っていて顔が見れる。



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信太山新地のほうは、ちょうど京都の祇園のように、店自身は娼妓を雇わない。


昔から、料亭、料理旅館、御茶屋さんと3種類の呼び名があった。


お茶屋さんは、京都の祇園が代表的だ。

泊まりも無く、芸妓も雇っていない。料理も作らない。

客が来ると、全て外部から調達する。


料理旅館は宿泊も出来て、料理も作るが女性は調達する。


料亭は、あまり泊まることは無いが、料理も芸妓も自身で雇って運営しているのが本当の料亭だ。


歴史的には集客が出来ずに、娼妓を集めるような営業になってゆく所があった。


京都の五番町などがそうだったが、今は五条楽園などがそうだろう。


大阪の飛田は大正時代に出来た。


もともと、難波にあった遊郭が火災で焼失して、当時は畑と田んぼの中だった現在の場所にポツンと移転した。


信太山は何時出来たのかは知らない。


これらの形式をした店で、置屋からデリバリーしてくれる。


見た目は古風なだけで、じつは現在のデリバリーと同じようなものだ。


味気ないが情緒はある。



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「俺、信太山はいったことないなぁ、どっちがええの?」

私はカズに聞いた。

「信太山は自衛隊ご用達や、若い子が結構多いで。
顔見世はでけへん。一発勝負や。旅館に入ったら
ばばあに2500円払ったら、女の子が来よんねん。
女の子に5000円払ったら出来んで。」

「7500円って、ヤッスイナァ」


「そのかわり、15分やで。」


「15分!・・・・・入ってこんにちはでパッパって終わりやないか」


「そうや、けど15分って意外と時間あるもんやで。」


「話もでけへんやないか?」


「話なんかちょっちょ・・でええねん」


「俺・・立つやろか?・・・」


「そんなん知るかい、立った立たなんだで楽しむのも楽しみの一つや、ほな、信太山で決まりやな」


「わかった、ほな社会勉強や・・・」


私は少し不安ながらもうなずいて行くことにした。




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