------ 信太山 ------
「福原は遠いで・・・飛田か信太山行っとこか」
福原は神戸にあるが、ここからは遠い。
大阪にはソープランドはない。
その代わり、変わったところがある。
表向きはお茶屋さんだ。
置屋とよばれるところから女の子が来てくれる。
だから顔は見れない。
これが信太山新地の特徴だ。
飛田は入り口に女の子が座っていて顔が見れる。
信太山新地のほうは、ちょうど京都の祇園のように、店自身は娼妓を雇わない。
昔から、料亭、料理旅館、御茶屋さんと3種類の呼び名があった。
お茶屋さんは、京都の祇園が代表的だ。
泊まりも無く、芸妓も雇っていない。料理も作らない。
客が来ると、全て外部から調達する。
料理旅館は宿泊も出来て、料理も作るが女性は調達する。
料亭は、あまり泊まることは無いが、料理も芸妓も自身で雇って運営しているのが本当の料亭だ。
歴史的には集客が出来ずに、娼妓を集めるような営業になってゆく所があった。
京都の五番町などがそうだったが、今は五条楽園などがそうだろう。
大阪の飛田は大正時代に出来た。
もともと、難波にあった遊郭が火災で焼失して、当時は畑と田んぼの中だった現在の場所にポツンと移転した。
信太山は何時出来たのかは知らない。
これらの形式をした店で、置屋からデリバリーしてくれる。
見た目は古風なだけで、じつは現在のデリバリーと同じようなものだ。
味気ないが情緒はある。
「俺、信太山はいったことないなぁ、どっちがええの?」
私はカズに聞いた。
「信太山は自衛隊ご用達や、若い子が結構多いで。
顔見世はでけへん。一発勝負や。旅館に入ったら
ばばあに2500円払ったら、女の子が来よんねん。
女の子に5000円払ったら出来んで。」
「7500円って、ヤッスイナァ」
「そのかわり、15分やで。」
「15分!・・・・・入ってこんにちはでパッパって終わりやないか」
「そうや、けど15分って意外と時間あるもんやで。」
「話もでけへんやないか?」
「話なんかちょっちょ・・でええねん」
「俺・・立つやろか?・・・」
「そんなん知るかい、立った立たなんだで楽しむのも楽しみの一つや、ほな、信太山で決まりやな」
「わかった、ほな社会勉強や・・・」
私は少し不安ながらもうなずいて行くことにした。
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