Rudder & Tiller ラダー・ティラー関係 | Fanfare for the common man

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日本テーザー協会より、「普通の人」がTasarをよりディープに楽しむためのサポートをゆるい企画でいきますので、宜しくお願いします。まずは、左のテーマより「はじめに」をご一読ください。

ラダー

現在のラダーは、FRP製で軽く丈夫になりましたが、以前は木製でした。木製ラダーは、ラダーヘッドに取り付けるためのピボットボルトの部分で、この下穴が削られ、広がっていく事例がよくありました。多少前振りになり、反ってハンドリングしやすくなりましたが、そのまま放置しておくわけにはいかないのは言うまでもありません。

ラダーに関しては、ピボットボルトが重要です。ピボットボルトには、W1/4のインチネジに固いビニルパイプを被せたものが使用されていました。このビニルパイプは、劣化するとクラックが入り、交換が必要となりますが、代替品は入手は難しいと思います。

このピボットボルトとナットの機能が低下すると、ラダーが上がりやすくなります。

この交換に関しては、W3/8のインチネジに交換すれば、ビニルパイプなしでもちょうど良い太さになります。ナットは、セルフロッキングナットなどの緩み止め機能のついたものに交換しましょう。かなり大事な部分なので、これは壊れていなくても交換することをお勧めします。

W3/8のインチネジは、ラダーにかかる部分がネジ切りしていないものを選びたいので、ラダーの厚さなどを事前にチェックして購入します。ネジの長さは長くても構いません。長い分はカットすれば済みます。

ピボットボルト ピボットボルト

左がW1/4ネジとビニルパイプのものが劣化した状態。
右が新しく用意したインチネジ。ネジ切りしていない部分の長さで選びます。

ラダーは、結構な負荷がかかるところです。ラダーヘッド内側で、ラダーにクラックが入るケースがありますので、時々チェックした方が良いように思います。


ラダーヘッド

ラダーヘッドは、いくつかの種類があります。アルミプレートを組み合わせて作られている旧タイプとその改良タイプと2007年以降にリリースされているアルミの鋳物でできた新タイプです。


旧型ラダーヘッド

旧タイプ(旧式角型アルミティラー仕様)の問題は、使用されているリベットが特殊なリベットなため、腐食などの障害が起こった際に、修繕しにくいことです。どうしても修理する必要がある場合には、次の問題をクリアしなくてはなりません。

1. 特殊リベットを外す必要がある。
2. ネジ・ナット・スペーサーを調達する必要がある。

これらの問題をクリアするのはなかなか困難なので、ガジョンにもあたったり、負荷がかかりやすかったり、リベットの辺りが腐食したりとトラブルが起きやすいピンドル周辺を中心に、入念な塩出しを心掛けることが望ましいと思います。

次に、前述の旧タイプをオーストラリアで改良したもの(改良型丸型カーボンティラー仕様)がありますが、これは、2005年頃にリリースされたもののその2年後には鋳物ラダーヘッドがリリースされたので、流通時期が極めて短い間でした。

次の点が改良され、非常によかったのではないかと思います。

ピンドルが精度の高そうなものに変更されました。
・基本的にリベットではなく、ネジ・ナット式になりました。
・丸パイプ型のカーボンティラー用にティラー差込み口が変更されました。
・ガジョン側が塞がり、かなり補強されました。但し、その分、ガジョンに負荷がかかる場合を注意する必要があります。

アルミラダーヘッド改良

上記の2つのものは、オーストラリアからリリースされたものですが、それとは別に、北米でリリースされているタイプ(改良型北米ラダーヘッド)があります。イギリスでもこのタイプのものが流通しています。PSJでも取り扱いが始まっています。

北米ラダーヘッド

このタイプの特徴は、次の通りです。

・基本的にネジ・ナット式になっていますので、修繕がしやすくなっています。
・ティラーはレーザーのものが使用できます。但し、市販のレーザーのティラーはテーザーには短いので、ティラーを選ぶときには注意が必要です。


旧型ラダーヘッドの修繕

以前として、旧型ラダーヘッドを利用されている方も多いと思います。塩出しが甘く、アルミプレートの下穴が広がる、または、リベット部分に緩みが生じる、あるいは、その複合のパターンが考えられます。

特にピンドルのリベットに掛かる負荷が大きく、ここが微妙に動くようになり始めたら、少々注意が必要です。下の写真は、古いラダーヘッドをバラバラにして、ネジ・ナット式に交換している作業途中(※後述)の写真ですが、この赤い丸の部分は、超低頭ネジを必要とします。下図のL1が薄いネジですが、インターネット等でよく探さないと入手しにくいのと、超低頭なため、通常のドライバーとかではなく、特殊レンチ(といってもL型の安価なもの)を同時に購入する必要があります。

超低頭ネジ 超低頭ネジ

超低頭ネジとそのレンチがあれば、セルフロッキングナットなどを使用して、ガッチリ止めればOKです。しばしばチェックして増締めしておきます。

赤い丸以外の部分は、特殊リベットが使われています。上の写真ではそのリベットをすべて外して、ネジ、ナット、スペーサーを使用して組み替えましたが、この特殊リベットは頭を落とせば外れるというものではなく、結構大変な作業になります。やってしまえば、後は修理しやすくなるかもしれませんが、このスペーサーもピッタリなのがなかなか探すのが大変ですし、リベット外すには、全部のリベットを外す必要があります。一部分だけ外すのは無理(に近い)と思います。

特殊リベット

上の写真は、落とした特殊リベットですが、この両端にリベットの頭がついていました。この作業をしたのは、かなり前にダメになった古いラダーヘッドがあったのでトライできたことと、アルミとステンレスの間に腐食防止剤を入れたかったこと、ネジ・ナット式にしてレガッタ中でも修繕を容易にするという目的がありました。

とりあえずのお勧めは、この作業をするより、北米ラダーヘッドとそれに合うカーボンティラーを入手することです。さもなければ、超低頭ネジだけでもストックしておくことをお勧めします。



鋳物ラダー・ヘッド

プーケットワールド後にリリースされた新タイプ(鋳物ラダーヘッド)です。曲がったり、電食したり、トラブルの多い旧ラダーヘッドと異なり、丈夫になったと思われましたが、これはこれで問題が生じたことがあります。

鋳物ラダーヘッド

まず、重さですが、旧型に比べるとラダーヘッドそのものは少々重くなります。

・鋳物ラダーヘッド(スルーピン含む/ピボットボルト含まず)1161g
・旧型ラダーヘッド(ピボットボルト含まず)1095g

ティラーは、角アルミパイプから丸カーボンパイプに変更されるので、軽くなります。両方合わせると、ほとんど同じくらいで軽量化にはほとんどなりません。

・鋳物ラダーヘッド(スルーピン含む/ピボットボルト含まず)1161g+カーボンティラー丸型391g
 合計1552g
・旧型ラダーヘッド(ピボットボルト含まず)1095g+アルミティラー角型500g
 合計1595g

旧型ラダーヘッドから鋳物ラダーヘッドへの交換をする際に、ラダーと合わない場合があります。ラダーの干渉する部分を削らないと取り付けられず、削り具合をうまく合わせないと、きちんとラダーが下りてくれませんでした。主にバリを削るなどの作業になります。
私のものは'97年製のラダーです。私のラダーに合わなかっただけなので、全部が全部ではないかもしれません。修正に関しては、ラダーの振り角度に注意して、最良のところにあわせるように削っていきます。場合によっては、ゲルコートやFRP作業の修復を必要とします。

ガジョンの精度が怪しいのは周知の事実なので、ガジョンの問題で、スルーピンが素直に入るかという問題もあります。鋳物ラダーヘッドのリリースにあわせて、♂タイプのステンレスガジョンもありましたが、これもあまり精度がよくなかったようです。

基本的には、旧型艇はガジョンが♀で、鋳物ラダーヘッドも♀ですから、スルーピンを利用します。ところが、ラダーヘッドの下穴が直径約11mm、ガジョンの下穴が直径約10mm、スルーピンが直径約10mmです。11mmと10mmのところを交互に通過するので、ラダーヘッド側の穴を修正します。

そこで、ガラスクロスをラダーヘッドの下穴に樹脂で取り付けて、ラダーヘッドの下穴の直径を変えてみました。

まず最初に、クロスをちょうど一周分突っ込みます。重なると穴の形が変わるので、注意が必要です。二重にする必要はなく、1枚でOKだと思います。縦の長さは長めにして、割り箸などにクルッときつめに巻いて、うまく調整します。そこへ樹脂を染み込ませていきます。出入口の周囲は、上下に動きにくくなるように樹脂を盛り付け、クロスも広げておきます。はみ出したままで、固めます。仕上げに、はみ出した部分を少し残してカットして、粗めの紙やすりなどを丸めて、穴の中の凹凸を削り、スルーピンを通してみます。上と下がうまく合わなければ、また、軽くやすりをかけて、調整します。これでこの作業は完了です。

鋳物ラダーヘッド調整 鋳物ラダーヘッド調整


そして、ラダーとラダーヘッドの間に隙間が生じますので、これを調整する必要があります。

これは、スペーサーに、PSJ推奨の住友3Mのセイフティーウォークを貼りますが、厚みがそのままではきつすぎるので、セイフティーウォークの表面を削って調整しました。

ピボットボルト付近が特にきついようなので、よく見ると、ピボットボルト付近とそれ以外では、1mm程度の幅の違いがあるようです。ある程度きついくらいがちょうど良いのですが、加工が少々大変です。ピボットボルト近くは削り具合を調整する必要があります。

調整した結果、とりあえず入るもののかなり動きが固く、海上では上げられない感じです。しかし、これ以上は削りたくないので、シリコンスプレーを試したところ、スムーズに動くようになりました。セイフティーウォークの滑り止め効果が高すぎたようです。きつめに調整して、シリコンスプレーで仕上げがよさそうです。これでしっかりホールドされていますので、ガタつきは解消されました。

鋳物ラダーヘッド調整 鋳物ラダーヘッド調整

鋳物ラダーヘッド調整

また、この取り付けたスペーサーなどに、シートのエイトノットがひっかかりますので、ここも注意が必要です。ラダーを上げすぎると、このエイトノットが下側に出てしまいますが、それをやると、下ろす時に引っ掛かるようになります。上げすぎないように、シートの途中でエイトノットを作っておくことにしました。

シートは、ティラーの中を通って、ティラーの途中から外に出して、クリートにリードするのが標準らしいですが、カーボンにあまり穴をあけたくなかったので、ラダーヘッドに穴をあけて、シートはすぐに外に出るようにしました。

鋳物ラダーヘッド調整

和歌山ワールドの本戦初日は、なかなかの強風コンディションでしたが、この際、鋳物ラダーヘッドの破断トラブル事例がいくつかありました。
但し、その後、5年が経過しましたが、それからのトラブル事例はあまり聞いていません。初期トラブルだったのか、その後のレポートがあるのかないのか不明ですので、分かりません。

とりあえず、和歌山ワールドでのトラブル事例を紹介しておきます。

鋳物ラダーヘッドトラブル


鋳物ラダーヘッドは強度があがったように思われましたが、鋳物は鋳物で曲がったりしないためにいきなり破断してしまうケースが生じるようです。写真の赤い丸の部分が破損した事例が、和歌山ワールドで見受けられました。どのくらいの頻度で起こるのかなど、よく分かりませんが、注意が必要です。

材料・製造方法の問題はあるかもしれませんが、他にキッカケとなる要因があったのではないかと思います。全くの推測ですが、ガタつきが一因としてあるのではないかと思います。赤い丸の部分は、前述の通り、ガタつきが生じやすい部分で共通しています。
事前にガタつきをなくすように調整したのは、このトラブルを回避するためにも正解だったかもしれません。私もこの時、鋳物ラダーヘッドを使用していましたが、まったくトラブルはありませんでした。

尚、この和歌山ワールドの際に行われたWTCミーティングの議事録には、以下のレポートがあります。

7. Chief Measurer's report. 
・・・略・・・
Concern was expressed that some of the new cast aluminum rudder stocks have failed (a broken rudder stock was passed around). There was also concern that they are not interchangeable with previous designs. 

9. Other business. 
Problems with the new rudder stock underline the need for the class to be more pro-active in discussing and approving specification and equipment changes before they are adopted by the builder. Executive Secretary noted that class rule A.1.2 requires not only the builder, but also the association, to approve any alterations to the Tasar. 


ガジョン

ガジョンは、オーストラリアで昔から流通してきたステンレスのタイプのものと北米で流通してきたレーザータイプのガジョンがありました。

オーストラリアのステンレスガジョンは、精度が甘く、ピンドルがうまく入らないことがあり、少し削って調整するという荒療治を余儀なくされることがあります。

一方、北米で流通してきたレーザータイプのガジョンは、プラスティック樹脂製でテーザーのラダーの負荷に耐えられず、破損する事例がありました。現在では、レーザーのガジョンも強度が上がっているようで、鋳物ラダーヘッドのスルーピンに対する精度を優先し、このガジョンを使用するケースもあるようです。

また、北米では、2008年に新しいガジョンをリリースしています。形はレーザータイプでステンレス製のものです。これにより、強度が向上し、ラダーが直角にまで曲がります。精度も高いといいのですが、試していないので分かりません。


ティラー

ティラーとエクステンションに関しては、割と自由度が高いルールになっています。軽量でハンドリングしやすいカーボンのものが良いと思います。

クラスルールを一応紹介しておきますが、次の2項目はもう少し洗練されても良いですよね。後者は不要な気がします。

C.2.3(a) ティラーとティラーエクステンションは、ティラーがラダーヘッドから抜き差しできるかぎり、どのようなものでも限定されない。この抜き差しには道具やドライバー、または特に大きな力を要するものであってはならない。

C.2.4(e) ティラーエクステンションは全く制限なく、いかなるデザイン、材質のものと交換してもよい。


丸型のカーボンティラーについては、エクステンションとのジョイント部分がリベットになっていて、カーボンから抜けたことがあります。これは、ネジ・ナットで止めた方がよいかと思います。

丸型カーボンティラー

丸型カーボンティラー 丸型カーボンティラー


また、テーザーに限ったことではありませんが、エクステンションとのユニバーサルジョイントは消耗品なので、点検が必要です。

エクステンションジョイント