震災復興に強力な支援となる次世代加速器ILC | taroozaの不思議の謎解き 邯鄲(かんたん)の夢

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次世代加速器ILC、宇宙・物質の謎に挑む 国内候補地今夏決定へ 
2013.1.1 07:00

 宇宙誕生の謎に迫る素粒子物理学の壮大な実験施設の構想が進んでいる。日米欧などが目指す次世代加速器「国際リニアコライダー」(ILC)計画だ。建設地は日本が最も有力で、今夏に国内候補地が決まり誘致が本格化する。物理学に革命を起こすノーベル賞級の発見が日本で実現する期待が高まっている。(草下健夫、黒田悠希)

 物質の根源を探る素粒子物理学で昨年7月、歴史的な大発見があった。すべての物質に質量(重さ)を与える「ヒッグス粒子」とみられる新粒子が、スイス・ジュネーブ郊外にある欧州合同原子核研究所(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で見つかったのだ。

 ヒッグス粒子は、素粒子の基本法則である「標準理論」で存在が予言されながら唯一、未確認だった“最後の粒子”。来月にも発見が確定すればノーベル賞の受賞は間違いない。

 しかし、素粒子の探究はこれで終わりではない。実は宇宙を構成する物質のうち、人類が標準理論で解明できたのは全体のわずか4%だけ。23%を占める「暗黒物質」や73%の「暗黒エネルギー」は、いまだに正体不明だ。

 ヒッグス粒子の「その先」をにらみ、標準理論の枠を超えた物理学の新時代を切り開いていく-。それがILC計画の狙いだ。

「知の地平を開く」

 ILCは東京-横浜間に匹敵する全長約30キロの巨大な直線形(リニア)の加速器。地下約100メートルにトンネルを掘り、ほぼ光速に加速させた電子と陽電子を正面衝突させる。そのときの温度は、宇宙誕生のビッグバン直後に相当する約1京度(京は1兆の1万倍)。初期宇宙を再現することで未知の素粒子を作り出す。

 円形のLHCがヒッグス粒子の検出に適しているのに対し、ILCはその性質解明に威力を発揮する。ヒッグス粒子の性質が詳しく分かれば、標準理論を超えた新たな物理法則が見えてくる可能性が高い。

 特に注目されるのは暗黒物質の有力候補である「超対称性粒子」の発見だ。LHCで見つかった新粒子の質量はヒッグス粒子の理論値より軽いため、研究者の多くは背後に超対称性粒子が潜んでいるとみる。さらに暗黒エネルギーの手掛かりが得られる可能性もあり、大発見が続きそうだ。

 ILC計画の実現を目指す山下了(さとる)東大准教授は「人類が宇宙の謎を解明し、新たな知の地平を切り開く原動力になる」と研究の意義を強調する。

建設費8千億円

 30カ国以上が参加するILC計画は2003年に研究者間で合意され、先月15日に設計が決まった。建設費は約8千億円。15年に政府間で建設地を決定し、26年の稼働開始を目指す。

 建設地は日本の北上山地(岩手、宮城県)と脊振(せふり)山地(福岡、佐賀県)、米欧露の計5地域が候補に挙がっている。しかし米国は素粒子研究での国際的な求心力低下、欧州はLHCの運用継続が優先課題といった事情があり、現段階で誘致に積極的なのは日本だけだ。

 CERNのロルフ・ホイヤー所長は「日本に強いライバルがいるようには見えない」と指摘。ILC運営委員会のジョナサン・バガー委員長も「日本には基本的な土台が既に整っている」と期待を寄せる。

 科学分野の国際プロジェクトの誘致をめぐり、日本は国際熱核融合実験炉(ITER)で欧州と最後まで競った末に苦杯をなめた。ILCは建設費の半額を誘致国が拠出する見通しで、巨額の資金負担が大きな課題だが、誘致は日本の物理学界の悲願といえる。

 山下准教授は「日本政府は前向きに検討すると海外に早く表明してほしい」と訴えている。

東北「震災復興の象徴に」 九州「国際都市 機能充実」

 ILCの国内建設候補地は北上山地と脊振山地の2カ所。東日本大震災からの復興のシンボルと位置付ける東北と、充実した社会基盤が利点の九州が競う構図だ。候補地は7月に一本化される見込みで、誘致合戦は正念場を迎える。

 ILCの建設地は強固な地盤が求められる。北上山地と脊振山地はいずれも花崗(かこう)岩の安定した岩盤があり、候補地に選ばれた。東北地方は大震災の影響で地殻変動が続いているが、大きな問題はないという。

 素粒子研究者や有識者が地質や経済効果、社会基盤などを総合的に検討し、日本としての候補地を決めるが、どのように意見集約するかは固まっていない。

 両地域とも自治体や大学、経済団体が連携して誘致活動を展開中。産官学を挙げて取り組むのは、国際的な科学都市としての発展だけでなく、大きな経済効果が見込めるからだ。

 ILCの建設・運用に伴う国内の経済効果について、東北は30年間で約4兆3千億円と試算。九州は建設時に1兆1千億円、運用時は年間六百数十億円と推計している。

 東北がアピールするのは地域活性化による大震災からの復興だ。研究機関や先端産業との連携で継続的な発展も期待できるという。東北経済連合会の宇部文雄副会長は「東北再生の象徴にしたい」と意気込む。

 これに対し九州は受け入れ環境の整備でリードする。福岡空港などを通じてアジアとのアクセスが良好なほか、数千人の外国人研究者とその家族を迎えるための住宅や、インターナショナルスクールも多い。

 福岡県の野田幸治参事補佐は「約20年前からアジアの玄関口として国際都市づくりをしてきた。すぐに質の高い生活ができる」と自信をのぞかせる。

 ただ、経済界が誘致に積極的な東北に対し、九州の誘致は自治体主導で、地元の県議からは「東北と比べて経済界との連携が弱い」との声も聞かれる。

 社会基盤で優位に立つ九州と、経済界との結び付きで先行する東北。計画の途中で浮上した「震災復興」への貢献をどう評価するかが候補地決定の一つのカギになりそうだ。



 素粒子 物質を構成する最小単位の基本粒子。標準理論によると、原子をつくるクォークや電子のほかニュートリノや光子など計17種類が存在する。唯一、未確認だったヒッグス粒子も発見が確実な情勢。標準理論を超えた未知の新粒子の存在も予言されており、粒子同士を衝突させる加速器(コライダー)を使った研究が行われている。


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