「百円の恋」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。








百円の恋
12月22日(月) 14:20~ テアトル新宿



好き度: ★★★★★ /5点



打席に立つことを選んだ時点で、勝ってるんだよ、一子!!!



公開前から大評判を聞いてたし、高橋ヨシキさんが週プレ連載で珍しく邦画をすごくほめてたので、これは!と思いテアトル新宿で観てきました。とっても大好きな映画でした!というかこの映画が嫌いになれるわけがないだろ!かなり感動しちゃったのです( ;∀;)!!

とにかく予告がまず素晴らしいのでまず見ていただきたい!これ予告を作ったのは「先生を流産させる会」の内藤監督らしいですぞ!すばらしい!



みんな大好き、人生の教科書こと「ロッキー」。この魂を正当に受け継ぎ、日本のインディペンデントから、素晴らしい、まっとうな、俺たちの大好きな「負け犬映画」の新たなる傑作が現れましたよ!その名も「百円の恋」だ!観ていない人、今すぐテアトル新宿に行こう!

主演は安藤サクラ。圧巻。




人生に負け続けてきた30過ぎのダメニートが安藤サクラ。その安藤サクラが、ボクシングに出会い、人生で初めて『打席に立つ』というかですね、勝負に出る。小さい自己実現かもしれない、自己満足かもしれない。でも、そこに彼女の人生を、負けて負けて負けてきた人生を、ぶつけるという、このカタルシス。お手本のような負け犬映画ですし、高橋ヨシキさんが「これは神話だ」と書いていたけど、ほんとその通りなんですよ!映画はじまってから映る彼女と、映画クライマックスの彼女の変化を観れば明らかです。それをフィジカルをもって最高の形で応えた安藤サクラはほんっとうに素晴らしかったです!

試合に勝つ勝たないじゃないんだ。打席に立つか立たないか、するかしないかなんですよね。するほうを選んだ時点で、お前はもう勝ってるんだよ!

荻先生の名言を貼らざるを得ません!!

『する』ほうを選んだ女の物語なんです!


今までやりまくられてきたプロット、設定でも、ちゃんと魂込めて作れば、新たなマスターピースとなり得るということを証明した一本だと思います。予算あるなしじゃない、やる気なんだ!とアツイことを恥ずかしくも叫びたくなる、そんな映画でしたね。

なんといっても安藤サクラは素晴らしい!映画一本の中で、ここまでひとりの女優がフィジカル含め人として変化する映画を、そしてその変化こそが最大のカタルシスになっている映画に僕は初めて出会いました。素晴らしいとしか言えない。

ここまで「女優力」にねじ伏せられる体験もそうないぞ!




「ロッキー」もそうですが、この手の映画で一番大事なのは、『TOKKUN~特訓~』じゃないですか。この映画はしっっかりと「特訓カタルシス」をこれでもかと見せてくれます。ダメだったあいつが、目標を見つけ、一つのことに努力を始める、まさにその瞬間、映画が走り出し、音楽も走り出す。安藤サクラ演じる一子も走り出し、観てる俺らのなにかも走り出す。特訓シーンにこそ、すべての要素がひとつになる作りは大大大好物ですし、ほんとうに素晴らしい。もう監督さんわかってらっしゃる!あとこの映画、ほんと音楽がよかったです。

脇もみんないい


あと、この映画、話自体はシンプルですがすごく登場キャラクターが多いんですよね。ですが、その誰もが確かに生きたキャラクターで、みんなほんとダメダメなんですよ。だけど、なんというか、こう、映画を観た後もわき役全員をみんな鮮明に覚えてるんですよね。特にコンビニ周りのキャラクターたち、それぞれの人生がそれぞれにちゃんとある感じがしっかりして、それは正しくないことだし、クソみたいなやつもいるんだけど、ちゃんと生きてるんだよなぁ。

「恋」の描き方もよかった。




ボクシング映画なのにタイトルが「恋」という違和感はありましたが、でもしっかりそこに落とし込んでいく感じもよかったんですよね。冗長と感じるという意見もみたラストシーンですが、僕はとても好きです。今年の傑作「そこのみにて光輝く」もちょっと連想しました。どん底だけど、でも一筋の光が見えてきて、そこに手を伸ばしたところで映画が終わるという。このラスト僕は素晴らしいと思いました。「飯、食い行こうか」ってね。新井さんのダメっぷりもよかったなぁ。でも一生懸命なやつに顔向けできない感じもわかるんだよね正直。だからどうしても完全には嫌いにはなれない。

ただ、あのレイプくそじじい!!お前だけは許さんぞ!!






個人的にタイミングもすごくよかったです。なんというか、まじで素直に背中押されました。なんか無難な方無難な方に流れちゃいがちだったんですが、ちゃんとやりたいところでちゃんと勝負しなきゃなって気になりましたね~。私も大学三年。ここ最近固まりつつあった、進もうとしてた進路に。不安もありましたが、打席に立とうと、“する”ほうを選ぼうと、思いました。

日本のインディペンデントから、まっとうかつ最新版の、俺たちの負け犬映画が出てきたなぁと。このブルっと来た感じ、SRサイタマノラッパー以来かな。僕にとっては大事な一本になりましたよ。


ほんと良い映画でした!( ;∀;)



おわり







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スタッフ

監督

    武正晴 

脚本

    足立紳

製作

    間宮登良松

企画監修

    黒澤満

エグゼクティブプロデューサー

    加藤和夫

プロデューサー

    佐藤現

    平体雄二

    狩野善則

音楽プロデューサー

    津島玄一

撮影

    西村博光

照明

    常谷良男

美術

    将多

録音

    古谷正志

編集

    洲崎千恵子

衣装

    宮本まさ江

音楽

    海田庄吾

主題歌

    クリープハイプ

助監督

    山田一洋

製作担当

    大川伸介

キャスト

    安藤サクラ  一子

    新井浩文   狩野祐二

    稲川実代子

    早織

    宇野祥平

    坂田聡

    沖田裕樹

    吉村界人

    松浦慎一郎

    伊藤洋三郎

    重松収

    根岸季衣

作品データ

製作年 2014年

製作国 日本

配給 SPOTTED PRODUCTIONS

上映時間 113分

映倫区分 R15+