「紙の月」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。








紙の月
10月25日(土) 14:00~ 東京国際映画祭
11月22日(土) 09:50~ TOHOシネマズ日本橋



好き度: ★★★★☆ /5点



「正しくなさ」の中にある「なにか」を求めて。



「紙の月」、1回目は東京国際映画祭で観ました。そのあと、原作を読みまして、今日2回目を観てきましたよ~。僕はこの映画がとても好きです。

「紙の月」は、正しくなさの向こう側に行ってしまった女の話で、だからこそ潔さ、羨ましさ、さえ感じてしまうんだよなぁと思います。僕らは正しくなさという壁を越えようとしない、というかできないけど、その向こう側にこそ僕らが真に求める何かがあるのかもしれないという、そのファンタジー世界に主人公が足を踏み入れ、戻ってこれないところまで行ってしまう。でもそこに潔ささえ感じてしまうのは、正しくなさにこそ真の自由があるのかもしれないと信じなければやってられない息苦しい世界に僕らが生きてるからなのかもなぁとか思ったりしました。 しかし、そのファンタジー世界に何かあるのか、といわれればたぶん何もないんですよね。だからこそ、悲しい。でも、クライマックスで、満たされないものを求め『正しさ』や『常識』に立ち向かうことを選んだ彼女の走る姿は悲しくもあり、しかしとてもかっこよく見えました。


個人的に、MVPは小林聡美




原作には出てこないキャラクターである小林聡美と大島優子がとっても魅力的でした。2人とも今まで見たことないようなベストアクトだと思います。原作では、横領した主人公を過去の知り合い3人くらいがそれぞれの視点から、各々の生活を主人公の起こした事件をきっかけに見つめ直していくという感じですが、その3人を小林聡美というキャラクターに集約させていましたね。この小林聡美がほんとうに素晴らしい。小林聡美は僕たちですよね。小林聡美は圧倒的に「正しい」ひとです。その「正しい」小林聡美が最後「いっしょにきますか?」と窓から飛び出す主人公を羨望の眼差しで見送るあのシーンに僕ら観客もろとももっていけたというのが、この映画いちばんの勝因というか、見どころというか、キーポイントだと思いました。人生、ここで飛び出せるか飛び出せないかなのかなぁなんて思ったりもしました。これはすごい危険な考えなのかもしれませんが…。でも、飛び出し全力で逃げる宮沢りえはとてもカタルシスがありました。僕の分までどこまでもどこまでも逃げてくれ!走れ!と応援している自分がいるんですよね。

大島優子も最高!




大島優子もとてもはまっていて素晴らしかったです。なんというか、前田敦子みたいな映画界でもセンターをとりそうな求心力というか底の深さはないと正直思っていたので、今後どういう感じで女優業をやっていくのかなぁと思っていたのですが、この役は本当にハマってましたね。なんというか、絶妙に軽い感じがすげぇはまってたんですよね。いい意味での軽さですよ。主演!みたいなタイプではないと思いますが、脇で魅力的な存在になりそうだなぁと思って、すごくうれしい気持ちになりましたよ~(´∀`)


今一番脱ぐ俳優、池松君。




原作とのもうひとつ大きな違いとして、映画の方が池松くんとの関係が始まるのがすごく性急に感じられるというのはありますよね。僕は確かに欠点にもとれるとは思いますが、これはこの映画なりの魅力なのかなぁとも思っております。この、説明できないけど「そちら側」に引っ張られる見も蓋もない人間の好奇心が突飛にむき出しになる感じは結構好きですね。人間の好奇心や欲望ってそう論理的に進むものでもないと思いますし。原作の方はけっこう主人公がなぜこういう行動をしてしまっているのかというのが頭ではわかってるんですよね。頭では分かっているけど、いやがおうにもやってしまうというのが原作でした。でも映画は、得体のしれない「なにか」に頭で理解できないまま「そっち側」に引っ張られてしまう、身もふたもない感じで、これもこれで魅力かなぁと思ったり。

あと、原作と違ってよかったのは、ストッパーが外れるきっかけとなる化粧品を買うシーン。原作では5万円を一時的に借りるんですが、映画では1万円になっていて、細かいですがこの改変はとてもよかったです。たった紙1枚からはじまった…という魅力もあるし、あとあれですね、その直後にそのお金を数える銀行職員の手のアップにすぐうつるところとか、すごい映画的なハラハラがありましたね。

横領の様子も原作では細かくは描かれませんが、映画ではとてもスリリングに描かれていて素晴らしかったです。背後から声をかけてくる小林聡美はホラーでしたね(笑)横領シーンできまってかかる音楽もとてもよかったです。(電撃ネットワークっぽい音楽でしたw)

たぶんスクリーンで初めて見た宮沢りえも、もちろん素晴らしかったです。




「正しくなさ」のなかにある手が届きそうで届かない「なにか」を求めて、あっち側に行ってしまった宮沢りえ。もうこっち側には帰って来れないかもしれないけど、あっち側でしっかり生きてほしいと心底思いました。僕もあっち側に行きたい。でもこっち側に居続ける人生なのかなぁ。「正しい」人生ってほんとに幸せなの?そんな危ないメッセージともとれる尖ったメッセージを放出してくるこの映画、僕はとても好きです。



あと、学生の間にいっぱい徹夜しとこ。笑



おわり。


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スタッフ

監督
    吉田大八 
原作
    角田光代
脚本
    早船歌江子
製作総指揮
    大角正
製作代表
    秋元一孝
    水口昌彦
    加太孝明
    宮田昌紀
    山本浩
    宮田謙一
    矢内廣
    高橋誠
エグゼクティブプロデューサー
    高橋敏弘
    安藤親広
プロデューサー
    池田史嗣
    石田聡子
    明石直弓
ラインプロデューサー
    原田耕治
撮影
    シグママコト
照明
    西尾慶太
録音
    加来昭彦
整音
    矢野正人
美術
    安宅紀史
衣装
    小川久美子
装飾
    山本直輝
編集
    佐藤崇
音楽プロデューサー
    緑川徹
音楽
    little moa
    小野雄紀
    山口龍夫
音響効果
    伊藤瑞樹
主題歌
    ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ
ヘアメイク
    千葉友子
    外丸愛
スクリプター
    田口良子
キャスティングディレクター
    杉野剛
助監督
    甲斐聖太郎
制作担当
    加藤誠

キャスト

    宮沢りえ 梅澤梨花
    池松壮亮 平林光太
    大島優子 相川恵子
    田辺誠一 梅澤正文
    近藤芳正 井上佑司
    石橋蓮司 平林孝三
    小林聡美 隅より子
    平祐奈 14歳の梨花
    佐々木勝彦 小山内等
    天光眞弓 小山内光子
    中原ひとみ 名護たまえ
    伊勢志摩
    舟田走
    井端珠里
    冨田ミキ
    井上肇
    大西武志
    藤本泉
    清瀬やえこ
    清水彩花
    佐藤直子
    猫田直
    松岡恵望子
    永井理沙
    水野小論
    俵木藤汰
    稲森誠
    梶原章司
    今村雄一
    佐津川愛美 (声)
    桜木信介 (声)
    嶋田翔平 (声)
    森脇由紀 (声)

作品データ
製作年 2014年
製作国 日本
配給 松竹
上映時間 126分
映倫区分 PG12




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