「ノア 約束の舟」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。






ノア 約束の舟
6月21日(土) 18:25~ TOHOシネマズ六本木





好き度: ★★★☆☆ /5点



聖書の内容を映画化する。ということ。


ダーレン・アロノフスキーの新作、予告みたときにそっちいったかーとちょっと萎えてたんですが観てみると、意外にというべきかノアの箱舟を映画化とダーレン・アロノフスキーの作家性がしっかりと融合した作品でビックリしました。神に託された使命をまっとうするあまり回りが見えなくなり、サイコホラーのようになっていくのはまさかのバランスでビックリしましたよ。ノアをキチガイに描き、神から受けた使命をよきこととして描かない、旧約聖書の内容を映画化しながら聖書万歳の映画ではなく、危うさのほうを描いているこの映画めちゃくちゃチャレンジングなことやってますよね。厳格なキリスト教圏の人はこれみてどう思うんだろう。ぜったい怒ると思うんだけどなどうなんでしょうかw

狂ったビジョンを見てどんどん悪い方向に向かっちゃうっていうのはダーレン節ですが、ノアが海のそこから見る箱舟の姿が明らかに『2001年宇宙の旅』のモノリスに寄せていて、それに触れようとするところ、人類がある種生まれ変わる感じはかなり2001年にも近いですよね。どんどん狂っていくノアはホントに怖くて、物語の山は大スペクタクルの洪水シーンではなくて、そのあとの舟のなかだった!というのも新鮮でした。完全にサイコホラーでしたな~。


僕は宗教は持っていないのですが、僕の母親は実はキリスト教徒でして、まぁだからといってそういうものを押し付けてくる訳でもなく、こういう考えもあるよ的な感じでけっこう幸福なバランスの宗教というものの距離感で育ったなぁと今となって思うくらいで。で、そんな中で小さい頃からけっこう馴染み深かったノアの箱舟の話は、まぁ完全にファンタジー世界じゃないですか。ノアはこのとき500~600歳であるとか、動物全部のせて洪水きても沈まない舟を木だけで…とか、まぁ聖書につっこむのは野暮かもしれないけど、思っちゃいますよどうしても。

100%沈むやろwってのは野暮か…


で、先々月の映画秘宝の高橋ヨシキさんの記事がすっごくおもしろくて、ノアの箱舟の映画化がファンタジー映画みたいに見えるからという理由で批判され上映禁止の地域もあるほどであるよ~という記事。これってすごいおもしろいくないですか?根本的なことだけど、宗教・信仰の本質というかさ、回りから見ると『いや、ファンタジーじゃんw』って見えてもその人にとってはそれは切実な信仰心になるというか。しかもこの映画もっともポピュラーなキリスト教の内容なわけで、いやぁ聖書の内容の映画化ってやっぱ難しいし、奥深いし、そのまわりのひとびとの反応も含めおもしろいなぁと思いますよね~。まぁ宗教を持ってないからこそそう言えるし、見えるのは間違いないんだけども。

母親にきくと、キリスト教信者にもほんっとに人によって聖書との距離感が千差万別って聞きますが、ほんとこの映画きっかけで興味が出たのは、何かを信じることそれ自体のことだったりして。人によって千差万別だとは思いますが、キリスト教徒の人はどの程度ファンタジーと思っているのか、ファンタジーと割り切ってそれでも…というバランスなのか、本当にあったことと思っているのか、なぜ宗教というものがあるのか、信仰ってなんなんだみたいなとこまで広がってきております…。

考えていくうちに例えば去年の「ライフ・オブ・パイ」とか「スーパー!」とか「シークレットサンシャイン」なんかも思い出したりしました。やっぱあれですな、キリスト教的なものの素養があるとぜんぜん映画の見方って深くなっていくんだろうなぁと思う今日この頃であります…。僕もあるていどの素養は身に着けたいものです。

映画自体は楽しかったし、しっかりダーレン節だったし、エマ・ワトソンかわいかったし、サイコホラー展開も楽しかったんですが、聖書の内容を題材とした映画としてみたときのこの映画の危うさというか、このバランス・話の展開でいいの?感は正直引っかかっていたりします。

あと、良いやつだけを生き残らせて、悪いやつはみんな排除するっていう考え方ってちょっと怖いなぁと思いました。悪いやつもいてこそ人間だし、どちらかに偏るというのはそれこそ健全じゃないと思うんですよね。この映画に出てくる悪役とされるキャラクターは、一番かっこよかったですよ。正論だし、いちばん感情移入しました。神を信じ使命を全うした結果、良き人として動いてるつもりが、実はどんどん悪魔になっていったノア。この解釈はおもしろいし、この企画じつはやっぱ超チャレンジングですよね。良い悪いは置いといて。

いつも以上にちぐはぐで意見のまとまってないブログになって収集がつかなくなったのでこの辺でおわろう。読み返すと、賛なのか否なのかぜんぜんわかんない文になってしまいましたがw  いろんな意味で紙一重だなぁと。キリスト教圏のひとたちの意見がすごく聞きたい映画でした。



あと、おじいちゃんのパワーでいきなり発情するエマ・ワトソンは最高でした。最近の映画で一番エロい瞬間というか、本当にエロい瞬間ってこういうシーンをいうよね。



おわり






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スタッフ

監督
    ダーレン・アロノフスキー 
製作
    スコット・フランクリン
    ダーレン・アロノフスキー
    メアリー・ペアレント
    アーノン・ミルチャン
製作総指揮
    アリ・ハンデル
    クリス・ブリガム
脚本
    ダーレン・アロノフスキー
    アリ・ハンデル
撮影
    マシュー・リバティーク
美術
    マーク・フリードバーグ
衣装
    マイケル・ウィルキンソン
編集
    アンドリュー・ワイスブラム
音楽
    クリント・マンセル

キャスト

    ラッセル・クロウ ノア
    ジェニファー・コネリー ナーマ
    レイ・ウィンストン
    エマ・ワトソン イラ
    アンソニー・ホプキンス
    ローガン・ラーマン ハム
    ダグラス・ブース セム


作品データ
原題 Noah
製作年 2014年
製作国 アメリカ
配給 パラマウント
上映時間 138分
映倫区分 G