野のなななのか
5月17日(土) 14:30~ 有楽町スバル座
好き度: ★★★★☆ 4/5点
人の生き死には、常に誰か別の人の、生き死にに繋がっている。
大林宣彦監督最新作。前作、『この空の花 長岡花火物語』が「なんなんだこれは!そして俺はなぜ泣いているんだ!」というほんとうにカオスという言葉がぴったりの超ド級のカルト映画でした。あまりの未知の事態に脳が付いていず、完全に脳がショート。ただただ画面を見つめてその映像を浴びるしかなかったのを覚えています。「なんなんだこれは…」っていう感想が一番初めに出てきたよなぁ。。こんな映画見たことないんだもん。
超、ド級のカオス映画
- この空の花 -長岡花火物語 (DVDプレミアBOX版)/ビデオメーカー
- ¥8,800
- Amazon.co.jp
で、今作は監督曰く『この空の花 長岡花火物語』の姉妹作品とのことで、楽しみにしていましたが、今回もすさまじい映画でしたよ~!前作のカオスっぷりに比べるとかなり整合性のとれたつくりだったと思いますし、「この空の花」よりはぜんぜん見やすいと思いますw ただ今回も情報量の多さはやはりすごい。序盤Jホラーぽく始まったかと思うと、おじいちゃんが危篤になってからの病室でのたたみかけるようなセリフの応酬、そこの情報量、会話として成立しているのかいないのかという独特のやり取り、しかも死んでるじいちゃんもしゃべりだすといういきなりエンジンビンビンで圧倒されました。
死者と生者の交流、戦争体験、そしてエロス、随所に大林的な要素が組み合わさり大きなグルーヴとなって新しいなにかが生まれている、そして前作「この空の花」から引き継がれている監督の一貫したメッセージ。この空の花の爆発力も魅力でしたが、今回のバランスもかなり魅力的だし(まぁ充分こっちもすごい爆発力ですが…) 監督が姉妹作品と言っている意味もものすごくわかります。あと、画面がすごい綺麗でしたね。アニメーションみたいでした。パンフを観たらグリーンバックをかなり使ったとのこと。さっきまで超雪積もってたのに、いきなり雪が解けて太陽サンサンになったかと思うとまた雪景色にもどってるとか、あの楽器隊はなんなんだとかやっぱりいろいろな違和感(きもちいい)があって、いややっぱ今回もキテルな!と思いましたね!
俳優陣もすげぇみんなさすがなんですが、TOHOシネマズに行くとかならず会える山崎紘菜ちゃんが印象に残りました。とてもよかったです。「もっと大きくなるぞっ!」とてもかわいかったです。
常盤貴子の「あ、こいつただ者じゃないな…」というのが登場シーン一発でわかるある種不気味な存在感、そして色気、頑張ってセーラー服を着るガッツ!とてもよかったです。(さすがに高校生役をやるのには笑ったけども)
あと、安達祐実はとても子持ちのお母さんとは思えない少女っぷりでした。かと思うと、すげぇ色気を放ったりもして、やっぱ女優なんだなぁと改めて思いました。
映画の情報量もすごいんだけど、この映画パンフレットもすげぇ豪華で文字量たっぷり。このパンフを読むとまた映画が見たくなりました。パンフの中である、大林監督と高畑勲監督の対談もすげぇおもしろかったです。
この映画観て、山田洋次監督の「小さいおうち」がすぐに頭に浮かびました。パンフの文章でもありましたが、今の日本の空気感。忘れちゃってるもの。風化しちゃってるもの。風化しかけてるもの。そんな今の空気への痛烈な一発を作品のなかでメッセージを発する。表現者としてものすごく正しいし、やっぱすげぇと思ますし、その姿勢に感銘を受けました。
メッセージ性は「この空の花」に近いんですが、今回の方が整合性がとれていて映画としてふつうなぶん(いや、じゅうぶんアナーキーですが…)前作のハイパースパークで気づかなかったメッセージがもろにあらわになっててちょっと引いちゃうというか直接的すぎて…なところもあったのも確か。いやでもすごいんですが…
でもでも「この空の花」「野のなななのか」というこの2本の映画をスクリーンで見れたということはとてもいい映画体験になりました。次はこのデジタル版大林で娯楽作品を観てもみたいなぁとか思ったり。次の作品も楽しみです。
おわり
○追記○
この映画、前作の「この空の花 長岡花火物語」の続編ではありません。精神性の部分で監督が姉妹作品と言っているだけであって、「この空の花」を観てなくてもぜんぜん大丈夫なのでぜひ。
----------------------------スタッフ
監督
大林宣彦
エグゼクティブプロデューサー
大林恭子
プロデューサー
山崎輝道
原作
長谷川孝治
脚本
大林宣彦
内藤忠司
撮影
三本木久城
美術
竹内公一
録音
内田誠
整音
山本逸美
編集
大林宣彦
三本木久城
音楽
山下康介
音響効果
佐々木英世
主題曲
パスカルズ
主題歌コーディネーター
大林千茱萸
助監督
松本動
衣装
岩崎文男
ヘアメイクアップ
和栗千江子
装飾
相田敏春
小道具
中村聡宏
キャスト
品川徹 鈴木光男
常盤貴子 清水信子
村田雄浩 鈴木冬樹
松重豊 鈴木春彦
柴山智加 鈴木節子
山崎紘菜 鈴木かさね
窪塚俊介 鈴木秋人
寺島咲 鈴木カンナ
内田周作 光男の青春時代
細山田隆人 光男の青春時代
小笠原真理子 小佐田留美/林崎敏江
イ・ヨンスク 韓国人の母
大久保運 井上弘樹
小磯勝弥 中西安志
斉藤とも子 井上百合子
原田夏希 高橋良子
猪股南 英子の少女時代
相澤一成 若杉稔
根岸季衣 キオスクのおばさん
パスカルズ 野の音楽隊
安達祐実 山中綾野
左時枝 田中英子
伊藤孝雄 大野國朗
作品データ
製作年 2014年
製作国 日本
配給 PSC、TMエンタテインメント
上映時間 171分
映倫区分 G