「あなたを抱きしめる日まで」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。




あなたを抱きしめる日まで
3月18日(火) 13:20~ 新宿ピカデリー




好き度: ★★★★☆ /5点


宗教の闇とフィロミナの笑顔のギャップ


町山さんのたまむすびでの紹介が非常におもしろかったしベストテンにも入っていたので、おもしろそうだな~くらいのテンションで新宿ピカデリーに行ってきました~。

おもしろかったです!(^O^)

映画のバランスが絶妙で、おばあちゃんと再起を狙う記者の息子探しのほんわかロードムービーでもあり、宗教の暗黒面が見えてくるすげぇ怖い映画でもあり、息子探しのミステリーでもあり、そしてコメディでもあるというしかもそれらを90分代でまとめたすげぇうまい映画だと思いました!

主役のフィロミナとジャーナリストのマーティン




このおばあちゃんフェロミナさんは、若い時にそのへんの兄ちゃんとセックスしちゃって妊娠しちゃったんですね。アイルランドの超キリスト教保守の環境ですから、亭主を持たずに妊娠した女はみんな修道院に入れられて奴隷のように働かされていたのですね。子供に会えるのは1日1時間。そんな折、自分の息子が勝手にアメリカの家族に売られて離れ離れになってしまう。その息子を50年越しで探しに行くというのが本作。

この事実がほんと衝撃的で、修道院でそういう子供たちをアメリカに売って人身売買で得たお金で修道院を運営していたなんてまじかよと。しかも超最近まで行われていたというのがほんとうに衝撃的でした(°д°) 淫行をしたことで修道院にぶち込まれて奴隷同様に働かされるっていうのも怖かったけど… 宗教というものの暗黒面を見たようですげぇ怖かった。

若き日のフィロミナさんと息子




息子探しと修道院の闇がちょっとずつ見えてくるこのちょい出し具合がすげぇうまくてミステリーとしてものすごくうまくできてるし、だからと言って重すぎる映画にはなっておらず、フィロミナおばあちゃんの言動がすごくおもしろくってマーティンとのやりとりもものすごくうまくできてるコメディ部分もとても微笑ましかったです。ナイスカップルでした。



息子は実は死んでいて、レーガン政権ではたらく超エリートでした。しかもマーティンは以前に会っていたという事実も判明。家族はいなかったのかと探しますが、実は彼はゲイで子供はいませんでした。エイズで死んだとのこと。「ダラスバイヤーズクラブ」をすぐさま思い出しましたよね。レーガン政権ではエイズへの対策をほとんどしなかったから、マシューマコノヒーは薬の密輸をはじめてましたが、ここにもやっぱり宗教が絡んでて、キリスト教の保守派の考えで「同性愛は神が与えた罰」という考えをしていたことが原因でしたね。フィロミナの息子さんは自分がゲイであるということを隠しながら、ゲイを認めないレーガン政権下で働いていたというとっても苦しい状況だったということがわかりました。

そしてもうひとつわかったことが息子さんもフィロミナを探していたということ。自分が生まれた修道院を訪ねていましたが、修道院はその事実を隠していたという…闇の深さがわかるとっても怖いラストでした。そしてそんな最悪な修道院を赦したフィロミナの強さに感動しました。赦せない!と言ったマーティンの気持ちもすっげぇわかるし、ジャーナリストである前に人間として激怒するマーティンの物語序盤との対比もとてもよかったです。


すげぇ重いけど、とにかくジュディ・リンチが最高で、ギャグが冴えまくってますからこのおばあちゃんは。はじめの会食シーンのギャグの取り違いからはじまり、自分のセックスの思い出をペラペラしゃべりまくったり、読んだ本の内容をオチまで全部言って「読む?」っていうやりとりとか、すげぇ微笑ましいしおもしろかった。この映画の唯一無二の絶妙なバランス感覚はほんとすごいと思いましたし、勉強になったし、笑ったし、怖かった。いろんな感情が出てくる映画でした。すごく良い映画だと思いましたよ!宗教ってなんなんだろうってほんと思うよね~。



おわり




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スタッフ


監督

    スティーブン・フリアーズ 

製作

    ガブリエル・ターナ

    スティーブ・クーガン

    トレイシー・シーウォード

製作総指揮

    ヘンリー・ノーマル

    クリスティーン・ランガン

    フランソワ・イベルネル

    キャメロン・マクラッケン

    キャロリン・マークス・ブラックウッド

原作

    マーティン・シックススミス

脚本

    スティーブ・クーガン

    ジェフ・ポープ

撮影

    ロビー・ライアン

美術

    アラン・マクドナルド

衣装

    コンソラータ・ボイル

編集

    バレリオ・ボネッリ

音楽

    アレクサンドル・デプラ


キャスト


    ジュディ・デンチ フィロミナ

    スティーブ・クーガン マーティン・シックススミス

    ソフィ・ケネディ・クラーク 若き日のフィロミナ

    アンナ・マックスウェル・マーティン ジェーン

    ミシェル・フェアリー サリー・ミッチェル

    バーバラ・ジェフォード シスター・ヒルデガード

    ルース・マッケイブ

    ケイト・フリートウッド

    ピーター・ハーマン

    メア・ウィニンガム



作品データ

原題 Philomena

製作年 2013年

製作国 イギリス・アメリカ・フランス合作

配給 ファントム・フィルム

上映時間 98分

映倫区分 G