単調系日常
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早坂文雄のピアノ協奏曲

ナクソス日本作曲家選輯から早坂文雄の作品を集めたCD→早坂文雄:ピアノ協奏曲




作曲家・早坂文雄は1914年仙台生まれ。4歳のときに札幌に転居。中学在学中からハーモニカやオルガン、ピアノ演奏に才能を発揮し、15歳ごろから作曲を志す。18歳のとき終生の友、かつ作曲のライバルとなる同い年の伊福部昭と知り合い、アマチュア演奏家としてサティやストラヴィンスキー、ファリャなどの先進的な音楽を演奏する音楽会を催した。1936年、管弦楽曲「二つの讃歌への前奏曲」が放送初演、1939年に「古代の舞曲」がワインガルトナー賞(指揮者のフェリックス・ワインガルトナーが設けた作曲賞)を受賞。さらにこの年東宝に映画音楽作曲家として招かれ、東京に移り住む。戦前の主な作品は上記ナクソス盤に収録されている皇紀2600年奉祝曲「序曲ニ調」、雅楽を取り入れた「左方の舞と右方の舞」など。

戦後は映画音楽作曲家として「酔いどれ天使」「羅生門」「七人の侍」などで黒澤明と名コンビを組み、溝口健二の「雨月物語」「近松物語」といった作品で邦楽器を巧みに使った極めてオリジナリティー溢れる音楽を書いた。音楽作品では1948年のピアノ協奏曲以降は「管弦楽のための変容」(1953)、交響的組曲「ユーカラ」(1955)で日本的、東洋的な美学を強調する独自の「汎東洋主義(パンエイシャニズム)」の音楽を模索したが、持病の結核で1955年、41歳の若さで死去した。

「この曲はいつまで続くのか」。早坂文雄の音楽を聞いているとしばしばそう思う。早坂が日本的な特性のひとつとして挙げる「はじめと終わりのはっきりしない無限性」。実際の演奏時間よりずいぶん時間が経過しているような錯覚。このCDに入っている3曲はロマン派的ピアノ協奏曲、勇ましい行進曲、雅楽というようにタイプが違う音楽だが、どの曲を聞いても「いつ終わるんだろう・・・」という不思議な感覚を抱いてしまうのである。

「ピアノ協奏曲」はとりわけユニークだ。〈ショパンやリストやラフマニノフでも想起させる、ロマンティックな饒舌体に拠っていて、オクターブを多用し、厚くヴィルトゥオージック〉(片山杜秀のライナーノートより引用)というのが耳につく特徴であるが、普通の? ピアノ協奏曲の亜流ではない独自性がある。第1楽章では若くして死んだ弟をしのんで書いたピアノ曲「ポートレイト」(→高橋アキのCD早坂文雄:室内のためのピアノ小品集に収録)の素朴な旋律をただひとつの主題とし、これを延々と自由に変奏する。クラシック音楽的な「主題と変奏」とか「提示、展開、再現」といったカッチリしたものとは全く違う「いい加減」さ。伊福部昭が「着物の裾模様のようだ」と評したという早坂の曖昧模糊とした日本的な世界を〈ロマン派ピアノ音楽のわななくような手数の多さ〉(ライナーノートより)でやってしまうというミスマッチが奇跡的に成功してしまったというか・・・ちょっと他に類を見ない音楽だと思う。〈ショパンやリストやラフマニノフ〉が好きな人には出来損ないに聞こえるのかなあ? 2005年に発売されたこのCDが世界初録音だったとはちょっと信じられない名曲。

スウェーデン放送で北欧のクラシックを聞く

伊福部昭のラウダ・コンチェルタータ(吹奏楽版)を聞いたのをきっかけに(当ブログスウェーデンの吹奏楽団による伊福部昭「ラウダ・コンチェルタータ」ネットで放送)参照)スウェーデン放送のネットラジオSveriges Radio P2 - P2 Live Klassisktをよく聞いている。日本で言えばNHK交響楽団にあたるスウェーデン放送交響楽団とか、マルメ交響楽団、ノールショッピング響といった楽団のライブが主に流れるんだが、スウェーデン、およびノルウェー、フィンランドといった周辺諸国の作曲家の曲がよく流れるんだよね~。シベリウスやグリーグはまあ当然として、ステーンハンマルから聞いたこともない現代の作曲家まで・・・自国(と周辺国)の曲を積極的に取り上げるところを日本でも見習ってほしいわ。

最近聞いたのではKlas Torstensson(クラース・トシュテンソン?)の管弦楽曲「Polarhavet(北極海)」。2月13日放送分でダニエル・ハーディング指揮スウェーデン放送交響楽団が演奏。ぽちゃぽちゃという波の音を模した音響がなんともいい雰囲気を出している。ちょっとタケミツぽくておれには苦手な音楽のはずなんだが、なかなか面白く聞けた。2月12日分のジョセフ・スウェンセン指揮マルメ交響楽団のLudvig Irgens-Jensen(ルドヴィク・イルゲンス=イェンセン)作曲「パッサカリア」も重厚で聞き応えがあった。同じ日のトール・アウリンのヴァイオリン協奏曲第3番も良かったなあ。ハーディング/スウェーデン放送響では1月25日のステーンハンマル「セレナード」、美しい曲ではないか。

上に挙げたのは今なら視聴可能なので聞いてみてはいかがだろうか。あ、その前にまずは2月7日放送の伊福部「ラウダ」をどうぞ。

ネットラジオにハマる

先月末からクラシック音楽を流すインターネットラジオや無料音楽配信サイトをせっせと巡回している。これまで書いたネットで聞けるシカゴ交響楽団:Zhou Long(周龍)、フンメルなどスウェーデンの吹奏楽団による伊福部昭「ラウダ・コンチェルタータ」ネットで放送以外で面白かったのを挙げてみる。

●ノールショッピング交響楽団のジョン・アダムズ「ドクター・アトミック」シンフォニー

ラウダを放送したSveriges Radio(スウェーデン)のP2 Live Klassisktから1月17日(lördag 17 januari 2009 15:00)のKonsert med Norrköpings symfoniorkesterというところをCtrl+Fなどで検索すると若手女性指揮者ジョアナ・カルネイロが振ったノールショッピング交響楽団(かつて広上淳一が主席指揮者を務めていたスウェーデンの楽団)のライブの放送を聞くことが出来る。この日はアメリカ特集と言う趣のコンサート。コープランド、マルコム・アーノルドのクラリネット協奏曲第2番、バーンスタインの「前奏曲、フーガとリフ」といったノリノリの曲に続いてトリで登場するのが原爆の父オッペンハイマーの苦悩を描いたオペラとして評判になったオペラ「ドクター・アトミック」のオーケストラヴァージョンだ。重いテーマの曲であり、おれはとりあえずチェックしてみたが感想をどうこう言えるほど真剣に聞いたわけではないが・・・このSveriges Radioはこういう興味深いプログラムのコンサートをさらっと普通に放送してしまうのがいいなあ。あと1週間くらいで聞けなくなると思う。

●オズモ・ヴァンスカ指揮ミネソタ管のラテン系プログラム

アメリカ中心に各国のオケのライブを流すSymphonyCastからは1月26日のヴァンスカ指揮ミネソタ・オーケストラのシャブリエ「スペイン」、アランフェス、ファリャ三角帽子、ヒナステラ、コープランドというラテン系ラテンアメリカ系特集が楽しかった。これはあと1か月くらいは聞けるんじゃないか。

●イギリスのマイナー作曲家

ネットラジオではわりあいどんな曲がかかっているか検索しやすいのがABC Classic FM(オーストラリア)、Radio Swiss Classic(スイス)、classical music radio station-Classic FM(イギリス)。あと非常にシンプルなイタリアのネットラジオVenice Classic Radio - Beautiful Classical Music - Web Radio dall' Italiaもいい。ここらを聞いているとオルウィン(アルウィン)、フィンジ、バターワースといったこれまであまり聞いたことのないイギリスの作曲家がけっこうよく流れるのだ。なかなか素敵である。イギリスのマイナー作曲家についてはこちらに詳しいことが書いてあり、うーむなるほどとただいま勉強中。

●ヒダシュ「ハープ協奏曲」

ハンガリーのヒダシュ・フリジェシュ(1928-2007)という作曲家のメチャ美しいハープ協奏曲。ABC Classic FMで先日1曲丸々流れた。音源はナクソスミュージックライブラリーにあるこれ

とにかくいろいろ魅力的な未知の音楽がネットラジオから出てきて困る。じつはおれもそろそろナクソスミュージックライブラリーに登録しようか、などと思っていたのだが延期することにした。聞くべきものが増えすぎて寝る時間もなくなってしまうからな。

スウェーデンの吹奏楽団による伊福部昭「ラウダ・コンチェルタータ」ネットで放送

「おかか1968」さん経由で知ったのだが、昨年11月にスウェーデン・ウィンド・アンサンブルという楽団が伊福部昭の「ラウダ・コンチェルタータ」の吹奏楽版を演奏したらしい。その模様が同国のクラシック音楽ネットラジオSveriges Radio P2のP2 Live Klassisktという番組で日本時間の2月7日夜に配信されることになった。

lördag 7 februari
15:00: P2 Live klassiskt : Konsert med Stockholms Läns Blåsarsymfoniker.
というところに確かにAkira Ifukube: Lauda concertataという文字が!

おかかさんの記事「2/2以降7日間に海外ウェブラジオで聞けるクラシック音楽ライブ」によると内容は以下のとおり。

2月7日日本時間23:00-24:15(現地時間15:00-16:15/CET)
演奏:クリスティアン・リンドベルイ指揮スウェーデン・ウィンド・アンサンブル/竹原美歌(マリンバ)

青島広志/普門バンドフェスティヴァル1987
武満徹/ガーデン・レイン
伊藤康英/幻想的協奏曲
兼田敏/日本民謡組曲「わらべ唄」
伊福部昭/オーケストラとマリンバのためのラウダ・コンチェルタータ

独奏者の竹原さんのブログによるとこのコンサートは「日本の秋」がテーマだったとか。青島、武満など他のも面白そう。

指揮者は英語読みではクリスチャン・リンドバーグ、あの名トロンボーン奏者だ。

放送時間になったら「Lyssna」というところをクリックすると聞くことができる。(生放送はLyssna direkt på P2)聞き逃しても隣のアーカイブ「Sändningsarkiv」をクリックすると何週間分かは過去の番組を聞けるようだ。

吹奏楽版のラウダは聞いたことがないので楽しみである。

(2月8日追記)聞いた。ラウダはバンドもマリンバも行儀良かった? でもやはり血沸き肉踊る曲だな~。興奮するわ。アーカイブの「P2 Live klassiskt : Konsert med Stockholms Läns Blåsarsymfoniker Lördag 07 februari 2009 15:00」というところをクリック! ラウダの途中で曲が切れてしまうのが惜しい。プレイヤー画面の次へスキップするボタンを押せば続きが聞けるはずだが、うまくいかないときもあるみたいだ。

黛敏郎「饗宴」@題名のない音楽会

2月1日放送のTV朝日系「題名のない音楽会」で新シリーズ「日本の巨匠」(日本の作曲家を順次取り上げるらしい)の第1回として黛敏郎特集が放送された。佐渡裕が海外のオケで黛作品を積極的に振りたいと言っていた。どんどんやっていただきたい。というか佐渡氏のやってる某西宮市のオケでまずはやってもらいたいものである。

演奏のほうは「饗宴」だった。昨年11月に東京シティ・フィルハーモニックと東京交響楽団が相次いで「饗宴」を演奏し、また今回TV放映、喜ばしいことだ。CDで聞いていると大暴れする打楽器はひょっとしてドラムセット? と思っていたのだが、放送を見て普通のオーケストラの打楽器奏者が演奏しているのがわかった。おれは勝手にこの曲を「ジャズドラム協奏曲」と呼んでいたのだが・・・まあすごい曲だなやっぱり。CD入手困難なんだよな~。アマゾンにある黛敏郎 IIだけど、再発売せんかな。

ナクソスミュージックライブラリーにはこんなのがある→黛敏郎:交響詩「輪廻(さむさーら)」/交響的韻律学/饗宴(Bacchanale)
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