『アールデコの手摺を離したら』 | 僕と廃墟とメランコリー|実験台モルモット コエ担当 谷琢磨の日記

『アールデコの手摺を離したら』

アールデコの手摺を離したら

『アールデコの手摺を離したら』

私はざらざら角砂糖 紅茶に溶け込むため生まれた
真っ暗な硝子瓶の中で 摘み出されるのを待つ

何も望まないよ だって私には役割があるんだから
でも訳の解らない虚しさがこみ上げてくるんだ

そして紅茶に飛び降りた角砂糖は
飴色の苦い苦い海を真っ逆さま沈んでゆく
些細なことで零れ落ちるくらい
この世界は痛みで満たされている


ミルクのような華やかさを持ち合わせていない私は
他に使い道もないから選択肢なんて無かったの

独りになるのは簡単だけど 零になるのは難しい
掻き混ぜられるたびさらさらと嗚咽を滲ませた

冷めた紅茶に飛び降りた角砂糖は
溶け切れず小さな小さな声をあげ涙の粒になった
短絡的決断 甘すぎるってなじってよ
いちいちぜんぶ傷ついてあげるから


「翼を下さい」と歌わされるのがたまらなくって耳を塞いだ
堕ちてゆく恐怖の中にしか透明になれる術はないのだから


私は幸せになんかなりたくない
悲しみに打ち拉がれて
ぼろぼろになって笑っていたいんだ
こんな私を救い上げてくれる包容力のスプーンは
ティーカップの底 ほらもう顔がぶつかる距離
響く衝突音 飛び散る心 アスファルトにキスをした
私は紅茶を変えられたのかな
甘く素晴らしい痛みを どうぞ召し上がれ





『アールデコの手摺を離したら』

作詞:谷 琢磨
作曲:あいあい
編曲:あいあい

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