クシティガルバ棟の土間に、大きな反応釜があったのを覚えていますか?

「覚えておりません」

<反応釜の写真が示される>

見覚えありませんか?

「覚えていないです」

気づかなかったことに心当たりは?土間って通りますよね。

「あの、部屋になってたと思うんです。壁があったんです」

カラシのにおいがしたことは?

「ないです」

Nさんの話だと、これでイペリットを作ったと。カラシのにおいがしたと。

「覚えていないです」


土谷さんの太ももに水ぶくれができたことがあったそうですが、Nさんとの会話にイペリットという言葉が出てきませんでしたか?

「覚えていません」

命にかかわるようなことだという注意はしていたようですか?

「いや覚えていません」

クシティガルバ棟に硝酸が多くあるなという記憶は?

「いや、記憶していません」

<試薬リストが示される>

ここにね、下から7行目に「硝酸15箱」って。

「はい」

当時も多いなーと思いませんでした?

「んー、と、言われましても、覚えていません。第3サティアンに試薬を保管していたということ自体の記憶がありません」

ニトロメタン15箱、当時この薬品を知っていましたか?

「知らないです」

爆薬の原料になるものなんですが。

「知りません」

パソコンで作られた試薬リストの入力をしたことはありますか?

「1度だけ覚えております。…多くても2回だと思います」

どういうことを入力したか覚えています?

「いや全く覚えていないです」

硝酸について誰かに何か聞きました?

「いや、覚えていないです」

なんで15箱もあるの?とか。

「いや、ないです」

硝酸について調べたことは?

「ないです」

クシティガルバ棟の土間にグラスライニング反応釜が一時期あったようですが、覚えてますか?

「あー、写真を見せられて、そういえばこんなようなものがあったような気がしないでもないといった記憶です」

<グラスライニングの写真が示される>

Tさんがここで作業していたんですが、記憶はありますか?

「誰かが作業していたっていう記憶がないです」

Tさんは当時濃硝酸を作っていたようですが、濃硝酸を作るという話すら記憶がない?

「はい、ないです」

<レポート用紙が示される>

この紙は、あなたのホーリーネームが書いてあるノートの②に挟まっていたのですが。

「あの、筆跡が違うと思います」

あなた当時、グラスライニング反応釜という言葉を知っていたんじゃないですか?

「いや記憶にないです」

グラスライニングを第3サティアンに移動したんじゃないですか?

「土間を広げる話があったので、移動はしてもおかしくないです」

サリンに使われた反応釜だからクシティガルバ棟から移動させたんじゃないんですか?

「あの、サリンを作っていたことも知りませんけれども」


土谷さんがクシティガルバ棟から離れて、強制捜査の頃にクシティガルバ棟から荷物の積み出しがあったと。平成7年3月ごろの話ですが、Tさんの証言では「菊地さんも荷物の積み込みをしていた」とのことでした。記憶にありますか?

「記憶にはないですが、運べと言われたら手伝うはずと思います」

強制捜査のことは覚えてます?

「実際に入った時の2、3日あとの記憶しかないです」

平成7年の3月に土谷さんが具合が悪くなったことがありましたか?

「この前話しましたチオペンタールを飲んで、ということ以外は分かりません」

Sさんが注射を打ちに来たことは覚えていますか?

「覚えていません」

治療していたことを見ていない?

「覚えてないです。そのようなことを目にしたら記憶に残ると思います。残っていないので、見ていないと思います」

でももう19年も前のことですから、どうでしょう。

「Sさんは私が配属になる前にそこにいたっていうのは知っていたので、それほど特別には感じなかったと思います」


サリンの中和処分についてお聞きします。
中川さんの証言で「サリンが服についた状態で実験室に来たので、部屋にいた人に縮瞳が見られた」とのことで、その場には菊地さんもいたと。覚えていますか?

「他の人たちがたくさんそのように供述されているので、2年間思い出してみようとしましたが、思い出せませんでした」

林さんから治療を受けたことがある?

「はい」

ルームランナーに横になって?

「いえ、第6サティアン3階のシールドルームでです」

いつ頃ですか?

「わかりません」

どのようないきさつで?

「サマナのあいだで高熱を出す感染症が流行って40度の熱が出たことがあり、点滴治療を受けました」

中川さんの証言では、平成7年の1月1日、実験室で受けたんだと。記憶にないですか?

「ないです」

土谷さん、Mさん、中川さんがその日にスーパーハウスで作業をしていた記憶はないですか?

「ないです」

あわただしいという雰囲気は。

「ないです」

土谷さんが倒れたという記憶は?

「ないです」

Mさんが治療を受けていたという記憶は?

「ないです」


毒ガス攻撃を受けたことで、陳述書を書いたり、教団のビデオに出たことがありましたね。台本はあったんですか?

「覚えていませんが、あったかもしれません」

陳述書は平成7年の1月4日になっていますが、その頃のことですか?

「覚えていないです」

松本サリン事件も教団の犯行と疑われる、と説明しましたか?

「その時かどうかは分かりませんが…」

松本サリン事件のことはいつ知りましたか?

「それが、思い出せないんです」

松本サリン事件についての貼り紙を目にしましたか?

「みんなが言っているので思い出そうとしましたが、記憶喚起ができませんでした」

松本サリン事件は、どのような事件だと思っていましたか?

「どのような…?えーと、松本でサリンがまかれた事件、です」

教団は関係ないと思っていた?

「はい」


スーパーハウスが撤去されたのは平成7年の2月ごろですか?

「そうじゃないかと思います」

どうして撤去されたんですか?

「土間に実験室を広げることになったからです」

スーパーハウスも実験室なのではないんですか?

「あー、そうですね、はい。他に実験室を作るという土谷さんの指示でした」

痕跡が残るから、警察に分かると大変なことになるという理由なのではないんですか?

「それは分かりません」

土間を広げての間取りのレイアウトをあなたが担当しましたね。

「はい」

<レイアウト図面が示される>

ゴーサーラ師長の部屋、とありますがゴーサーラ師長とは。

「科学技術省のWさんです」

何のためにWさんの部屋を?

「Wさんの部屋を作るという記憶自体がありませんが、おそらく土谷さんに作ってくれと言われたんだろうなと推測になります」

ゴーサーラ師長の部屋のところには「頑丈な壁」と書いてありますね。

「はい」

何故頑丈な壁を?

「えっとそれは土谷さんに聞かないと分からないです」

なぜこの部屋にドアが必要なのでしょう?

「分かりません」

外から遮断したいのでは?

「あ、科学技術省の方だからではないでしょうか。間借りというか提供したんではないでしょうか。厚生省と科学技術省で部署が違いますから…」

Wさんが設置した機械がありましたか?

「分かりません」

さっきの反応釜、Wさんが設置したのでは?

「や、それは私は分かりません」


実験ノート回収の記憶はない?

「はい」

Mさんは回収して処分したと証言していましたね。

「はい」

あなたのノートは回収されていない?

「記憶しておりません」

あなたは実験ノートは持っていましたよね?

「持っておりました」

<実験ノートが示される。表紙に「実験ノート②」と書かれ、上部には「EDP-2」とある>

一冊目のノートは見つかっていないのですが、何が書いてあったのでしょう?

「Mさんに分留の説明をされて、それをノートに書いたことと、あとは…はっきり覚えているのはそれだけです」

一冊目は回収されて処分されたのではないんですか?

「そのように言われているのでそうなのかな、というくらいです」

ノートの中、前のほうのページが取り除かれているように感じるんですが。

「え?(証拠のノートを見て確かめる)ちょっと、微妙…よく分からないです。…んー?って感じなんですけど」

弁護人「私の目から見てもそんなに抜けてるようには見えません」


ノート②のページを破った記憶はないんですか?

「記憶はしていないです」

あなたが回収したことも?

「記憶もないです」

Nさんの証言によれば、菊地さんが回収してページが破られて戻ってきたと。

「記憶にはないですが、土谷さんに言われれば回収はすると思います」

Nさんのノートの中を見たことは?

「見ていないです」

実験ノートの中身をMOに移したことは知っていますか?

「知りません」

土谷さんの証言で、Mさんが平成7年2月にクシティガルバ棟を出て、第二厚生省の時間がNさんになったと。

「記憶していないです」

<ルーズリーフのファイルが示される。青いファイル、表紙に菊地のホーリーネームが書かれている>

覚えていますか?

「ファイルは覚えていません」


<中のページが示される>

953 KG(土谷)
505 AS(N)
413 VV(H)
735 EDP(菊地)
555 RP(F)
1621 PD(T)
514 (h)
1370 (Z)
1985 (Y)
1919 (W)
※サマナ番号、ホーリーネームの略称、(名字)の順で書かれている。

Mさんがいなくなってからのクシティガルバ棟の序列を書いたんじゃないですか?

「えー、そう言われましてもちょっとわからないです」

この順番に違和感はありますか?

「んー、あ、はい、順番じゃないと思います」

なぜ?

「Fさんの方が私より古いので、私より上になると思います」

Tさんが平成6年に入っていますが、メスカリンを作っていたことは覚えていますか?

「はい、調書を読んでそうだったなと」

平成6年12月とか、平成7年1月にHさん、Yさん、Wさんが新しく入った?

「はい」

Nさんはここには入っていませんね。

「はい」

Nさんがいなくなったのはいつ頃ですか?

「分からないです。他の人についても明確には」


平成7年3月の強制捜査の数日前、クシティガルバ棟内がバタバタしていたとのことですが、バタバタ、とは?

「あの、その通りバタバタ…バタバタしてました」

強制捜査に備えて何か隠したりするためじゃないですか?

「他の人が土谷さんに何を指示されたのかはわからないです」

あなたは土谷さんに、日本語ではない資料を処分するよう頼まれた。

「はい」

あらぬ嫌疑を、と言っていましたが、どんな嫌疑なんでしょう?

「それは内容を知らないので何ともお答えできないです」

あらぬ嫌疑、というのはどういう意味で使っていました?

「実際のこととは違う疑いがかけられる、ということです。どういう利用のされ方をするか分からない、という意味です」

クシティガルバ棟の薬品も嫌疑をかけられるとは思いませんでしたか?

「んー、それは土谷さんが判断することですから」

化学兵器を作っている嫌疑をかけられるとは?

「その時点ではそのようなことは思っていなかったです」

教団が作るはずがないと?

「想像自体まったく及んでいないです」

土谷さんに頼まれて資料を処分した後、土谷さんが上九からいなくなったと。

「はい」

実験をしに行くわけではなさそうだと。

「あー、それは、ちょっと記憶が…」

図書館に行くのではと思ったと。

「それは当時の記憶ではなくて、土谷さんが外出するというと図書館に行くことがあったので…」

クシティガルバ棟に強制捜査が入るとしたら、責任者である土谷さんが対応すべきだとは思いませんでしたか?

「んー、そこはちょっとどういう体制になっていたか覚えてないです。もしかしたら遠藤さんが対応したのかも…」

土谷さんがクシテイガルバ棟を出る前に所持金がなく、みんなからお金を集めたとのことですが、あなたもそこにいた?

「記憶していません」

仮払いの手続きをする暇も惜しんだようですが、急いで出ようとしていた?

「んー、仮払いのことは覚えていませんが、バタバタしていたのは覚えています」

それは時間でいうと、深夜?未明?

「夜だったとは思います」

そのような時間に出ていっても、ワークだと?

「うーん…。まああの、押収されたくないものを一緒に持ち出しているんじゃないかと思います」

例えばどんな?

「や、それは私は分からないです。誰が何をとか持ち出したものは見ていません」

強制捜査が入るから身を隠すんだと思ったのでは?

「うーん、あの、強制捜査と関係あるとは思っていましたが、土谷さんが直接関係あるとは思っていなかったです」

土谷さんの証言では、クシティガルバ棟を出たのは地下鉄サリンの直前、その朝の前とのことですが、その記憶はありますか?

「いや、記憶としてよみがえってきません。強制捜査の情報が入って土谷さんがいなくなったのは分かりますが、サリンとの時期の関係が分かりません」


地下鉄サリン事件の発生はどう知りましたか?

「それが、覚えていません」

サリン事件の被害者の症状は知っていましたか?

「どこで発生を知ったのかも覚えていないので、どのような情報を受けたのかも思い出せません」

目の前が暗くなったという情報は?

「あのー、それも覚えていないんですけれども」

平成7年1月の症状がサリン事件の被害者と似ているとは思いませんでしたか?

「あのー、目が暗くなった記憶がないので、お答えのしようがないんですけど」

平成7年3月の強制捜査の頃には、サリン事件のことを知っていましたのではと?

「いや、そうではなくて、最初は假谷さんのことで(強制捜査が)入ってますから」

何の罪名で強制捜査が入ったかということを当時リアルタイムで知っていましたか?

「いや、それは…ん?」

つまり、罪名は假谷さんであっても、報道ではサリンと結び付けてたと知っていましたか?

「いや、それは知りません」

3月22日(強制捜査)にあなたはどこにいましたか?

「バスで移動しておりました」

どこに移動を?

「えーと、行き先もなくさまよっておりました」

いつ出発したんですか?

「強制捜査の話があって、それで家族との問題がある人は警察に見つからないように集まるように、その通達がありました」

いつ戻ってきたんですか?

「はっきり覚えてないですが、早ければ2~3日、長くても1週間だったと思います」

クシティガルバ棟へのその後の強制捜査についての記憶は?

「んー、バスに乗っていた期間が思い出せないので、クシティガルバ棟にいたかもしれないし…バスにいたかもしれません」

教団が疑われているからとビラや手紙を友達に送りましたね。

「はい」

教団がやっていないと確信できる根拠はあったんですか?

「や、まったく、1%の疑いも持っておりませんでした」

周りの人は皆思っていると、いや教団じゃないんだと、確信できる根拠は?そう信じたかったのでは?

「1%2%の疑いがあって打ち消すんであれば、信じたかったと言えますが、まったく疑わなかったです」

友達に入信を勧めることも手紙にはありますが、毒ガス攻撃を受けているのになぜ勧めるんですか?

「や、それは、ハルマゲドンが来るので、日本の食料自給率は低いですから、そうなったら教団は食糧を備蓄などしていましたので」

大きな戦争が起こると信じていた?

「はい」

教団にいれば助かると?

「助かる保証はありませんが、備えはあった方がいいと思いました」

教団が大きな戦争をしようとしているとは?

「そのようなことはまったく知らなかったし、気づきませんでした。分かりませんでした」

【12:15 休廷】