菊地直子公判 被告人質問2日目(2014年6月2日)です。


<弁護人質問(昨日の続き)>

中川さんは、都庁爆弾事件の目的は、捜査かく乱、麻原逮捕を延ばすためだと言っていたんですね。

「はい」

あなたはその目的を知らなかった?

「はい」

中川さんは何のために薬品を持ってくるよう指示したと当時思っていましたか?

「はい、当時の教団の主張を裏付けるための実験か何かをしていると思っていました」

主張とは?

「サリン事件は冤罪で、教団内でサリンを作っていないということです」

当時教団は薬品をたくさん持っていたと思うんですが、どういう目的で持っていたと?

「色々なものを持ってはいましたが、農薬だと言っていたような気がします」

その、『教団の主張を裏付けるための実験』というのは、あなたが考えたことなのか、中川さんから聞いたことなのか?

「あ、私の想像です」

その主張とはどのような経緯で知ったんですか?

「教団内でのビデオやビラ、機関誌です」

あなたが知人や取引先に配ったものですね。

「はい。あと、当時テレビで上祐さんと村井さんが「教団は冤罪である」との主張をしていたのも見かけました」

どこでテレビを見たんですか?

「新幹線の待合室です」

なぜ新幹線の待合室にいた?

「えーと薬品を運ぶために新幹線に乗った時です」

中川さんに頼まれて。

「はい」

八王子のルミエールセゾン○○○号室は、化学実験が可能だと思いました?

「いや、そこは正直分からなかったです」

中川さんはどこでその薬品を使って実験すると?

「いや、分からなかったです」

土谷さんではなくなぜ中川さんがやっていると思ったんですか?

「中川さんは以前からクシティガルバ棟に出入りして、土谷さんといろいろ話をしていたような
ので、医学部を出ているし化学的な知識もあるからできるのかなと」

井上さんと豊田さんは厚生省のメンバーではないですよね。ルミエールで何をしていると思ったんですか?

「中川さんとは別々に、ワークをしているのかなと思いました」

どうして?

「部署が全く違ったからです」

彼らは何のために八王子アジトにいると?

「不当逮捕を免れるためだと思っていました」

平成7年当時、4月にあなたが色々運んだりしている時、麻原さんが逮捕されるとは思ってました?

「ありうる話だと思ってました」

なぜ?

「何年か前から教団内でそのような話が出ていたからです」

どのような話?

「波野村の強制捜査の後、今後これとは比べ物にならないくらいの宗教弾圧が起きて、教祖の逮捕もありうると言っていたからです。それが教団が大きくなるためのステップだと、そのための試練だと言っていたので」

誰が?

「本人、麻原さんです」

その説法を言葉通りに受け止めていた?

「あ、はい」

<八王子アジトに出入りする、三つ編みを結った女性の写真が示される>

これは誰だと思いますか?

「私ではないんじゃないかと思います」

なぜですか?

「髪型が、編んでいるところに対して毛先が広がっているので、パーマがかかっているのではないかと思います」

当時、あなたの髪型は?

「ストレートヘアです」


平成7年当時、土谷さんについて一言でいうとどう思っていましたか?

「理想の上司的な方だと思っていました」

なぜ?

「部下に対する対応が丁寧で、長所をほめてくれたりとか…。欠点に対しても感情的にならずに、そういう接し方でした。失敗した時も叱るんじゃなくて」

中川さんについてはどうですか?

「お医者さんていうイメージがぴったりの方だと思っていました」

お医者さん?

「思いやりがあって、周りに細やかな気配りをするというか、そんな感じです」

そう思ったエピソードは何かありますか?

「すごく印象に残っているのが、車で走っている時、うさぎをはねてしまったんですね。普通ならしまったと思ってもそのままにしてしまうのに、車を降りて林に駆け込んでいったんです。林の中まで探しに行って、しばらく待たされました。そのあと肩を落として帰ってきて「だめだった」ってしょんぼりしていたんです」

それはいつの話ですか?

「94年の夏です」

中川さんが人を殺しても仕方がないと考える人だと思っていた?

「まったく思っていません」


あなたは18年間、警察に出頭することなく生活してましたね。

「はい」

逃走しはじめのころはどんな気持ちでしたか?

「完全に冤罪だと思って、捕まりたくないと思って逃げていました」

冤罪ではないと気づいてからは?

「自分が逮捕されたくないという気持ちもありましたが、林さん(※泰男)と一緒でしたので、林さんはきっと刑が重くなるだろう、自分が出頭したら林さんも捕まるだろうと思いました」

別れて行動するようになってからは?

「ニュースでオウムの裁判が始まっていて、それを見て、どうもひどい取り調べが行われているのでは、裁判も公正に行われていないんではないかと思いました」

誰の裁判がきっかけですか?

「Tさんの裁判が、サリンを作ってると分かっていて、事件に使っているのも知っているということになっていましたが、自分の経験からしてもTさんが知っていることは100%ないし、ひどいことが行われているのではないかと思いました」

自分自身逮捕されたくなかった、というのは?もう少し噛み砕いて言うと。

「私は教団に居た頃は知らなかったんです。Tさんの裁判を見ると、自分も同じようになると。知っているという前提で進んでしまうと思いました」

逮捕されたら生活はどうなると思いました?

「親が会いに来るかな、家に帰ることになるかなと思っていました」

それは、あなたにとって歓迎すべきことですか?

「あー…あまり望んではいませんでした」

新宿青酸ガス事件を知ったのはいつですか?

「多分5月12日に中川さんに呼ばれた時ではないかと思います」

どういう経緯で知りましたか?

「駅中のごみ箱が使えなくなっていたからです」

そのことを中川さんに話しましたか?

「あ、言ったと思います。なんか使えなくなってたんですけど、と」

中川さんは何と?

「覚えていないです」

その原因が新宿駅の事件で、僕らがやったんだよとは言っていました?

「いえ、言っていないです」



【ここから検察側質問】

あなたのホーリーネームが表紙に書いてある『ヴァジラヤーナ教学教本』という本がありますね。ヴァジラヤーナとはどのような教えと考えていましたか?

「多方面から説かれていて、一言では説明しづらいんですけども…」

重要な要素、大事だと思った部分は?

「うーん…重要な要素…。…すいません」

井上さんの証言にあったように、暴力を正当化するような内容が含まれていたんじゃないですか?

「…叩いてカルマを落とすとか、そういうことですか?竹刀で足をたたいてカルマを落としたりっていう話はあったと思います」

ヴァジラヤーナは解脱、悟りに至る最も早い道と説かれていた?

「はい」

教学システム本は10本あり、そのテキストは全サマナに配られていたそうですが、全部聞きましたか?

「はい」

この教本も読んだのですよね。

「あのー、私その教本、記憶がないんですけれども、名前が書かれているので私のだったんだろうなとしか…」

麻原の言葉に丸を付けたりもしているようですが?

「記憶してませんが、問題の穴埋めや答え合わせがされているので、勉強したんだろうなという推測です」

<ホーリーネーム入りの教本が示される。「個の解脱」などの箇所に赤いペンで丸がつけてある。教本の表紙の上のスペースに「無水エタノール」「エーテル」「第3第1第2」などメモ書きがされている>

信徒用決意というものを覚えていますか?

「覚えています」

全サマナに課されていた。あなたも正の字で数を数えていて、全部で293回になるみたいですが、覚えていますか?

「はい」

『この世の中では普通に生活することは三悪趣に落ちてしまうこと』とありますが、三悪趣とは、地獄、畜生、餓鬼、ですね。

「あ、動物が抜けています」

ん?畜生が動物かな?ここにあるように、ヴァジラヤーナの修行を進めるにはグルに対する絶対的な信仰が必要である、ヴァジラヤーナの道に進もう、グルである麻原への絶対的な信仰心を持とう、と考えていたのではないですか?

「うーん…ヴァジラヤーナの道に進もうと思っていたかはわかりませんが、言えと言われていたので唱えていました」

ヴァジラヤーナの決意、という紙に記憶はありますか?

「それに関しては全く覚えていません」

<菊地のホーリーネームが書いてある紙が示される>

これ、記憶にないですか?

「ありません(強く)」

あなたの荷物の紙袋の中から見つかったんですが、あなたの物ではないんですか?

「記憶にないのでそうお答えするしかないんですけども」

『救済を成し遂げるには手段は選ばないぞ』とある。

「あ、それは他の決意にもあったと思うんですけど」

これ、どういう意味ですか?

「どのような意味と言われましても…」

違法行為をしてでも救済を、という意味ですか?

「いや、そういうことは考えていません」

『悪趣をポアする』このようなフレーズを聞いたことはありますか?

「ありません」

今聞いて、どういう意味かは分かりますか?

「今聞いてですか?それは、いろいろな事件を背景にしてのことですか?」

ポアってどういう意味ですか?

「その人の意識を高いところに引き上げるという意味です。生き死にに関係なく、その人の意識状態を、ということです。たとえばその人に何らかの働きかけをして、修業するようになればそれもポアという言葉を使います」

亡くなって転生することにも?

「はい、使いました。高い世界に引き上げなければ意味がないと思うのですけども…。検察官のおっしゃっているような、殺人イコールポアという理解は一切しておりません」

ヴァジラヤーナの教えとして、殺人を肯定する、それもポアだったんじゃないですか?

「そういう風にとられかねないようなこともあった、というのが事実です」

<説法の部分が示される>

『すべてを知っていてポアする。この人は何のカルマになりますか?殺生ですか?客観的には殺生です。でもヴァジラヤーナの教えではポアです』と、このような説法を覚えてますか?

「うーん、この説法かどうかは分かりませんけども…」

裁判長「この説法の内容には記憶ありますか?」

「あ、はい」

裁判長「どう思っていましたか?」

「これはたとえ話というか、机上の空論のようなものだと思っていました」

『すべての魂を救済したい。必要のない魂を殺してしまうこともある。智慧あるもの、徳のあるも魂がいたとしてもおかしくない』このような説法もありましたが、どう理解しますか?

「最後のところは、これは教団のことではなく、フリーメーソンというかアメリカのバックについている一部の人たちのことだと思ったんですけども。すべての文章を読めばそういう風にしか取れないんですけれども…」

あなた方は麻原のことを智慧ある魂、徳のある魂と考えていたんじゃないですか?

「んー?それはそうかもしれませんが、この文章とは関係ないと思います」


クシティガルバ棟でのこと、VXの一行程としてのジクロの生成についてお聞きします。実験器具は2回目以降は一人で組み立てたんですか?

「えっと一人では無理だと思います」

実験器具の組み立て方は実験ノートに書きました?

「図は書きますが、それだけでは組み立てられません」

シーチキンというものは覚えていますか?

「それはまったく記憶にございません」

あなた自身はどんなものを作っていると当時考えていましたか?

「何かは分かりませんが、エーネッヤカさんが作っているものは買うと高いんですよ、と土谷さんが言っていたので、希少価値のあるものを作っていると思っていました」

スーパーハウスで、防毒マスクもつけて実験していたんですよね?そこまでして教団は何を作ろうとしてたんだろうと考えなかったんですか?

「土谷さんはまったくマスクをしないで入ってましたし…」

あなたは常にマスクつけてたんですよね?

「常にはつけてないです」

本当ですか~?

「はい、そうです」

説法の中に毒ガス、イペリットなども出てきてますよね。

「明確に覚えているのはイペリットです」

Tさんは説法から言っても作っているのは毒ガスではないかと思っていたそうですが。

「Tさんはそうかもしれませんが、私はそう思いません」

なぜ聞かなかったんですか?

「聞く必要性を感じなかったからです。聞かなくても作業はできましたし」

シークレットワークとはなんですか?

「その内容を他の部署の人には話してはいけないワーク全般です」

違法なワーク?

「そういう認識はしていません」

では、どういう?

「内容を人に話してはいけないワークです」

あなたが携わったジクロの生成の中では、オキシ塩化リンを作りますが、当時オキシ塩化リンを知っていましたか?

「うーん…知っていたかもしれないです」

<化学式の書かれたレポート用紙が示される>

一行目に、POcl3とありますが、オキシ塩化リンのことです。当時あなたは知ってたんじゃないですか?

「いや、分からないです」

これを自分が書いていないという根拠はありますか?

「根拠と言われましても、自分の筆跡に見えないからです」

2行目にはメタノールとありますが、これはあなたの筆跡?

「分かりません」

<試薬のリストが示される>

これはあなたが自分で書いたものだと。

「はい」

真ん中あたりに「メタノール」とありますね。

「はい」

これと、さっきのレポート用紙の「メタノール」。…あなたの筆跡ではないですか?

「似てるとは思います」

このレポート用紙の下にある、クシティガルバ棟のレイアウト図。これはあなたが書いた?

「レイアウトしたことは覚えていますが、書いたかはわからないです」

このレポート用紙全体をあなたが書いたんじゃないですか?

「そうは思わないです」

分子量の計算、19年前ならできました?

「できないと思います」

本で調べたことは?

「ありません」

この化学反応式に関しては、土谷さんも「自分が書いたものではない」と。「この式は、第7サティアンがオキシ塩化リンの処分に困り、リン酸トリメチルに混ぜることになって計算したのではないか」とおっしゃってましたが。

「第7サティアンで何をしていたのか存じませんでしたので、分からないです」

<レポート用紙と試薬リストが重ねて示される>

こことここにある「NNジエチルアニリン」…筆跡似てると思いませんか?

「いや、違うと思います。似ていると思わないです」

あなたのホーリーネームの書いてある防毒マスクから検出されたものは、リン酸トリメチルと○○(聞き取れず)でした。実験、してるんじゃないですか?

「やっておりません」

スーパーハウスでやったのでは?

「ないです」


チオペンタール製造についてお聞きします。
生成と分注で、合成に関しては一部のみに記憶があると。すべてに携わった人を覚えていますか?

「覚えていません」

Zさんに作業を教えませんでしたか?

「そのような記憶はありません」

人体に使うような薬品を教団が勝手に作ってよいと思っていたんですか?

「自分たちに使うものなので良いと思っていました」

作るだけで違法ということは?

「思わないです」


RDXを作ったことはありますか?

「ないです」

爆薬を作ったことは。

「ないです」

RDXは爆薬の一種と知っていましたか?

「知りません」

知ったのは逮捕後ですか?

「そうです」

Mさんの口の傷跡を覚えていますか?

「覚えておりません」

Mさんの怪我について聞いたことは。

「ないです」

ドラフト室の壁に破片が刺さっていたことは?

「刺さってなかったと思います」

コントラボを使ったことは?

「機械そのものの記憶がありません」

コントラボのマニュアルを持っていたのでは?

「記憶しておりません」

<コントラボのマニュアルが示される。TSIのS(氏名)とある>

このマニュアルがあなたの紙袋に一緒に入っていましたが。

「記憶にありません」

コントラボが吹きこぼれた記憶がありますか?

「記憶にありません」

Nさん、Mさんが証言の中で、「菊地さんがコントラボでRDXを作っていた」と言っていますが、このような事実があったのかどうか。

「覚えていないので何とも言えません」

NさんがRDXと聞いているなら自分も聞いていたんじゃないかとは思いませんか?

「記憶にないので分かりません」