第109回_本田宗一郎_トップの思いやり謙虚な心 | 【松下幸之助、創業者、名経営者、政治家に学ぶ】          

第109回_本田宗一郎_トップの思いやり謙虚な心

一流の経営コンサルタント会社、船井総研の創業者、船井幸雄の著者「船井幸雄の人間の研究」(PHP)のなかに船井幸雄は一部の例外はあるかもしれないが、大企業の社長や会長は、私の知る限り、本当に皆謙虚で、思いやりがあるといいます。人の悪口などいわないし、それに勉強好きで、素直で約束は守る。従って他人からは好かれる、だからトップに昇りつめることが出来るといいます。

確かに大企業の創業者や社長、会長になった人を調べていくと人間的にこの人は凄いと思わせるエピソードにはことかかない。




本田技研工業の創業者、本田宗一郎のパートナーであり副社長であった藤沢武夫は本田と出会ってつきあい始めたころ、本田の行動に「電気のようなショック」を受けたことがあるという。

あるとき本田が浜松の料亭に外人を招待して酒を飲んで騒いだことがあった。外人は酔いつぶれて一人で先に寝たまではいいが、夜中に胃の中のものを戻してしまった。それを女中さんが洗面器に受けて、便所へこぼした。

翌朝、その外人は自分の入れ歯がなくなったと大騒ぎを始めた。さあ、困った。昔の汲取り式の便所だから、誰かが便壺の中を探せば入れ歯はあるはずだ。が、場所が場所だけに誰もが顔を見合わせた、とその瞬間、本田が裸になって便壺の中に入り、そうっと探るとカチッと手に当たった入れ歯を探し出していた。

しかも本田は、その入れ歯をきれいに洗って消毒し、自分の口に当てながら、「大丈夫、もう臭わないよ」といい、再び消毒して外人に渡した。外人は無論のこと、藤沢などその場に居合わせた人達はみな眼をむいて驚いたという。




財界総理といわれた土光敏夫(どこうとしお)が経団連会長を引退する直前に鶴見のお宅に作家の城山三郎が伺った。質素なくらしぶりだが、古い家なので、庭だけは広い。その庭にあるすべての植木を、土光は自分で植え、自分で手入れをしている。ということであった。野菜畑も同様。また、芝生についても、すべて自分で世話をしている。「芝生の手入れは大変ですね。うちなんかも何度か他人にたのんで・・・」と城山が何気なくいうと、土光は眼を光らせ、「僕がきみの家の芝刈りに行くよ。会長やめれば暇ができるんだから。それに、僕だけで足りなかったら、友達もつれて行く」真剣な口調であったという。土光は冗談を言うような人ではない。城山はうろたえて辞退したという。





文責 田宮 卓






参考文献

城山三郎 「打たれ強く生きる」 新潮文庫

上之郷利昭 「本田宗一郎の3分間スピーチ」 光文社