改正児童ポルノ法について | 狂直の日記

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多摩武蔵守のブログです。
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 第186回通常国会において、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「児童ポルノ法改正案」)が衆参両院で可決され、成立しました。

 7月15日から改正後の児童ポルノ法が施行されていますが、今回は、改正前の法律と比べてどこがどう変わったのかをまとめました。

 ○が主な改正点、→の後に書いたのが私の感想や補足説明です。また特に断りのない限り、「第○条第○項」とあるのは、児童ポルノ法改正案の記載に基づいています。


○第2条第3項第3号の定義規定が変更。従来の「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」+「性欲を興奮or刺激」に、「殊更に児童の性的な部位が露出or強調」という要件が加わった。
→定義が変わったことで捜査や裁判にどのくらいの影響があるのかはわからない。しかし改正前の定義規定でも定義規定を原因とする冤罪や捜査権の濫用の事例は確認されていないので、今後も可能性は低いと考えられる。
→冤罪や捜査権の濫用の恐れがあるのは、刑事罰のある法律であればどれも同じ。児童ポルノ法だけが突出して危険なわけではない。冤罪の可能性がゼロより上である限り反対というのは、警察や刑法を廃止しろというのと同じ。

○単純所持は処罰対象ではなく、みだりに所持することが禁じられるだけ(第3条の2)。犯罪ではないので、強制捜査もされない。また違法化されるのは「みだりに」所持することなので、正当な業務による行為である場合は該当しない(刑法第35条)。

○罰則が加わったのは自己の使用を目的とする児童ポルノの所持(第7条第1項)。「自己の性的好奇心を満たす目的」での所持であり、かつ「自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る」(同条同項カッコ書)。
→刑法ではもとより故意でない行為は罰しない(刑法第38条)ので、カッコ書がなくても、送りつけ、ウィルスによるダウンロード、ワンクリック詐欺などは故意犯に該当しないと考えられるが、念には念を入れたということか。
→「自己の性的好奇心を満たす目的」であることは、検察が立証しなければならない。また家宅捜索や押収は裁判所の令状がなければ行えない(刑事訴訟法第218条)し、児童ポルノを所持しているという根拠がなければ令状は出ない(刑事訴訟規則第156条)。

○なおこの性的好奇心充足目的の所持に対する処罰は、施行日から1年間は適用しない(附則第1条第2項)。持っていたらこの間に処分せよということ。

○盗撮による児童ポルノ製造が処罰の対象に追加された(第7条第5項)。

○「マンガ・アニメ・ゲーム等の影響を調査する」としていた附則第3条はなくなり、代わりに「インターネットによる閲覧の制限」について検討および必要な措置をとることとされた(附則第3条)。
→個人的には、実在の児童ポルノを規制する法律の中に創作物の話が入っていることには首をかしげていたので上記の変更には賛成。しかし、附則を削ったからと言って創作物に関する調査ができなくなるわけではないし、将来の規制ができなくなるわけでもない。

○細かい話だが、法律の名前が「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」に変わった。

○改正児童ポルノ法は6月25日公布。公布の日から起算して20日を経過した日から施行する(附則第1条第1項)ので、施行日は平成26年7月15日。


【参考資料】

「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案」(衆議院ホームページ) 

 http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g18601028.htm


「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(平成十一年五月二十六日法律第五十二号)

 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO052.html

※7月30日現在、まだ改正前の法律を読むことができます。