【訪米報告】安保、TPPをめぐる日米の同床異夢 | たまき雄一郎ブログ

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【訪米報告概要】


昨年同様、4月29日~5月2日に開催された日米・日米韓議員交流プログラムに参加するため、自民党、公明党、民主党計9名の国会議員で米国ワシントンを訪問し、10名を超える民主党および共和党の下院議員と二日間に渡って議論を行った。



先月末に行われた日米首脳会談の直後ということもあり、例年より多くの国会議員がワシントンを訪問し各種のイベントが開催されるなど、日米間の交流も活発だった。しかし、米国の議員や関係者と直接話をしてみて感じたことは、アメリカ側の見方や意向が、必ずしも日本国内のメディアが伝えるものと同じではないということである。



また、今回、訪米するにあたって、改めて日米共同記者会見の内容を英文で読み返してみたが、オバマ大統領が語っていることも、国内メディアが伝えているものとはトーンが異なり、その真意を丁寧に読み解く必要がある。



以下、尖閣列島への安保条約5条の適用の問題と、TPPに関する国内の報道について絞って説明したい。






<尖閣列島への安保条約適用について>



そもそも、日米首脳会談後の国内報道の主な論調は、「オバマ大統領、安保条約5条が尖閣列島も対象になることを明言」というものだった。これを読んで、いざというときには、米国が防衛義務を果たし尖閣列島を守ってくれるとの印象を受けた日本人も多かったと思う。



一方のTPPに関しては「大筋合意にいたらず」という見出しが躍り、コメ、麦、牛肉、豚肉、砂糖、乳製品の重要5項目に関する関税の維持を求める国会決議が守られるかのような報道ぶりであったことは記憶に新しい。



しかし、米国の議員と議論する中で、アメリカ側の真意、あるいは日米首脳間の共通認識は、むしろ、こうした国内報道とは趣を異にしており、日米の間には、ある種の「同床異夢」が存在しているのではないか。



まず、安全保障に関して複数の議員たちと話をして強く感じたことは、アメリカは、もはや世界の警察の役割を果たすことはしない(できない)ということだ。そして、それは民主党政権だからというわけではなく共和党政権であっても変わりがないということである。



今回話をした議員の中で、最も中国に厳しい態度をとる共和党の議員でさえ、尖閣で武力衝突があったとしても、アメリカが武力介入することはないとの意見であった。(もし、レーガンが大統領なら別だがという冗談はあったが…)



また、対中国、対北朝鮮を考えれば、日米韓の3か国の連携が不可欠であり、この同盟関係にマイナスになる挑発的な言動は慎むべきとの意見が相次いだ。中国との緊張を緩和に努め、外交的な解決を模索して欲しいというのが、議会も含めたアメリカ側の本音であることは明らかだ。



なお、ワシントンでは、日米安保に関する意識があるため、まだ日本に対する関心があるものの、経済が中心のニューヨークや、リベラルな気風の強いボストンに北上すればするほど、日本よりも中国重視の傾向が強くなるとの意見も聞いた。



従軍慰安婦の問題や靖国神社参拝についても説明を試みたものの、なぜ安倍総理は、地域の安全保障に不可欠な日米韓の同盟にヒビを入れることをあえてするのかとの批判を数多く受けた。私は野党の立場ではあるが、できるだけ現政権の立場を説明するよう努めたが、正直、彼らの理解を得るのは難しかった。



<TPPについて>



次にTPPに関して言うと、まず、昨年と比べて明らかに米国側の議員たちの関心が高まっていた。その理由の一つは、1月に議会に提出されたオバマ政権に一括交渉権限を付与する「TPA法案」だと思われる。しかし、11月に中間選挙を控えているという政治状況を考えると、それまでにTPA法案が成立する見込みはないとの意見が多数を占めた。特に労働組合がTPPに反対していることもあり、与党民主党議員の支持が得られる見込みが少ないとのことであった。



もちろん、TPAがなくてもTPPの妥結は可能だが、その場合、かなり米国に有利な合意内容であることが必要で、中途半端な水準のものでは米国議会を説得することができないとのことであった。



例えば、ある自動車分野に影響力のある下院議員が、自動車については日本側が譲歩するのでTPAがなくてもTPPに賛同できると言っていたそうである。ということは、自動車に関して、日本は水面下で相当譲歩している可能性がある。



こうした議会側の意見も踏まえて、改めて日米共同記者会見のオバマ大統領の発言を原文(英語)で読んでみると、実は、オバマ大統領自身も同様の内容を語っていることが分かる。



むしろ、日本のマスコミが、日本政府にとって都合のいい内容を切り出して報道しているために、米側の真意を正しく日本国民に伝えられていないのではないか。



以下に日米共同記者会見の原文を掲げつつ、具体的に問題点を指摘したい。



<日米共同記者会見 ①尖閣列島への安保条約適用について>



まず、尖閣列島への安保条約5条の適用に関するオバマ大統領の発言を以下に記したが、ここでオバマ大統領は、尖閣の防衛に関するアメリカ側の立場について重要なことを2つ述べている。



PRESIDENT OBAMA: Our position is not new. Secretary Hagel, our Defense Secretary, when he visited here, Secretary of State John Kerry when he visited here, both indicated what has been our consistent position throughout. We don’t take a position on final sovereignty determinations with respect to Senkakus, but historically they have been administered by Japan and we do not believe that they should be subject to change unilaterally. And what is a consistent part of the alliance is that the treaty covers all territories administered by Japan. So this is not a new position, this is a consistent one.



第1に、尖閣列島を含む日本の施政下(administrated by Japan)にある地域には安保条約5条が適用されるという立場を明らかにする一方で、これは新しい立場ではない(not a new position)ということを明確に述べている。しかもそのことを2回も繰り返している。確かに、大統領自身が安保条約の尖閣への適用を明言したことには意味があると思うが、野田政権のときも国務長官が同じ発言をしており、アメリカ側の従来の立場をそのまま再確認しただけというのが実態である。オバマ大統領が、今回の自分の発言が何ら新しいものではないことを何度も何度も強調していることにむしろ注目すべきである。



第2に、「アメリカとしては、尖閣列島の領有権(sovereignty)の最終的な所属については、どちらの国にも与しない。」と明言していることである。つまり、アメリカは尖閣列島が日本の「領土」であるとは認めていない。歴史的に、日本の管理下(under administration)にあったという現状を認めているに過ぎないのである。実は、これもアメリカ側が累次にわたって表明してきた立場で、何ら新しい話ではない。



加えて、オバマ大統領は、次のように述べ、平和的な解決と挑発的な言動を避けること(not escalating the situation, keeping the rhetoric low, not taking provocative actions)が重要であると強調するとともに、発言の後半では、アメリカがいかに中国と強いつながりがあるのか(We have strong relations with China.)、また、中国が世界にとって極めて重要な国である(They are a critical country)ことを殊更強調している。ここに、オバマ大統領の本音と中国への配慮を見てとれる。



In our discussions, I emphasized with Prime Minister Abe the importance of resolving this issue peacefully -- not escalating the situation, keeping the rhetoric low, not taking provocative actions, and trying to determine how both Japan and China can work cooperatively together. And I want to make that larger point. We have strong relations with China. They are a critical country not just to the region, but to the world.



また、オバマ大統領は、尖閣防衛に関する武力行使の可能性について聞かれた際、極めて重要な発言をしている。しかし、日本のメディアではほとんど報道されていないので、以下に詳しく紹介したい。



まず、尖閣列島が安保条約5条の適用対象になるということは、歴代政権がとってきた確立した立場であって、立場を変えるものではない(There’s no shift in position.)ということを、ここで再び強調している。



First of all, the treaty between the United States and Japan preceded my birth, so obviously, this isn’t a “red line” that I’m drawing; it is the standard interpretation over multiple administrations of the terms of the alliance, which is that territories under the administration of Japan are covered under the treaty. There’s no shift in position. There’s no “red line” that’s been drawn. We’re simply applying the treaty.



そのうえで、尖閣の問題で緊張を高めることは大きな間違いである(a profound mistake)と、極めて強い言葉を使って安倍総理に直言している(I’ve said directly to the Prime Minister)のである。“ミステイク”という言葉が使われていることは、アメリカ側からの強いメッセージだと言える。



At the same time, as I’ve said directly to the Prime Minister that it would be a profound mistake to continue to see escalation around this issue rather than dialogue and confidence-building measures between Japan and China. And we’re going to do everything we can to encourage that diplomatically.



そして、いざというときの武力行使の可能性について聞かれた際、オバマ大統領は以下のように答え、その可能性を否定しているのである。仮に国際法規に反する形で中国が尖閣に武力介入した際にも、アメリカは必ずしも軍事介入するわけではないと明言しているのである。これこそ、合衆国大統領として初めての発言であり、本来ならこの部分が最も大きく報じられるべきなのに、日本のメディアはほとんどこれを伝えていない。



With respect to the other issues that you raise, our position, Jim, the United States’ position is that countries should abide by international law; that those laws, those rules, those norms are violated when you gas children, or when you invade the territory of another country. Now, the implication of the question I think is, is that each and every time a country violates one of those norms the United States should go to war, or stand prepared to engage militarily, and if it doesn’t then somehow we’re not serious about those norms. Well, that’s not the case.



繰り返しになるが、日本のメディアの多くは、尖閣列島が安保条約5条の対象になることを大々的に取り上げるだけで、武力行使の可能性に係るこの重要なメッセージを正しく伝えていない。既に指摘したように、安保条約5条の尖閣への適用は何ら新しいものではなく、中国にとっても「想定内」の発言であるからこそ、習金平をはじめとする中国の首脳(チャイナ7)は反発の発言をしていない。むしろ、国際規範に違反して武力侵攻しても、常に武力介入するわけではないとのメッセージは、中国にとってはこれ以上ない歓迎すべきニュースであろう。オバマ政権の中国配慮が色濃く見て取れる発言である。



さらにオバマ大統領は、武力介入に躊躇して批判されたシリアのケースを持ち出し、「ミサイルを発射することなく、87%もの化学兵器をシリアの国外に出すことができたのは、アメリカのリーダーシップの結果だ」と自らの対応を自賛しているのである。



Right now, we have 87 percent of serious chemical weapons have already been removed from Syria. There’s about 13 percent left. That’s as a consequence of U.S. leadership. And the fact that we didn’t have to fire a missile to get that accomplished is not a failure to uphold those international norms, it’s a success. It’s not a complete success until we have the last 13 percent out.



つまり、今回のオバマ大統領の発言からくみ取るべき重要なメッセージとは、仮に尖閣列島に対して中国が武力介入した場合には、“シリアと同様”、アメリカは武力介入しないというものであって、報道されている印象とは逆向きのメッセージなのである。そして、こうした米側の立場は、今回の訪米で私が意見交換した多くの議員の見立てとも一致するのである。



いずれにせよ、「尖閣に安保条約の適用を大統領が明言」してくれたから安心だと言って思考停止に陥るのは日本のメディアや政界の長年の悪弊であり、冷戦時代の遺物以外の何物でもない。尖閣列島が安保条約5条の適用対象になることと、実際、アメリカが軍事行動を起こすかどうかは別の話なのである。



今、日本が為すべきことは、新しい時代のアメリカの外交、安保政策を踏まえ、独自の外交・安全保障戦略を組み立て直すことである。ことが起きてからアメリカの腰の重さに失望するのでは遅すぎる。戦略的外交を積極的に展開するとともに、まずは自衛の意思と用意を確かなものにすることが不可欠である。



<日米共同記者会見 ②TPP交渉について>



次にTPPについて述べたい。



多くのメディアが日米首脳会談では「大筋合意にいたらず」と報道したが、会談が終わってから、とりわけ週が変わってから、読売新聞やTBSなど一部の報道機関が「実は合意が成立していた」旨の報道をしはじめている。中には、牛肉や豚肉の関税における大幅な妥協案を詳細に報じているものも出てきているが、真実はどうなっているのか。



結論から言うと、詳細な数字の詰めは残っているものの、一定の“大筋合意”は既に首脳間でできていると思われる。ただ、両国とも重要な選挙をかかえている政治的な事情のために、直ぐにはその内容を公表できなかった(しなかった)というのが実態だろう。



事実、何らかの合意が成立していることは、オバマ大統領の発言をよく読めばくみ取ることができる。まず、大統領は、重要な進展(important progress)があったと明言している。続けて、自動車と農産物のような課題で合意に近づいた(we’re closer to agreement)とも述べている。



しかも、オバマ大統領は、アメリカの製造業や農家は日本市場への意味のあるアクセス(meaningful access)を求めており、そうした要求を満たせないものを私は一切受け入れられないとも言っている(I can’t accept anything less)。そんな中で、「重要な進展」があったということは、今回の交渉でアメリカ側は“意味のある”市場開放を一定程度確保できたことを意味している。



We made important progress in the Trans-Pacific Partnership, TPP, which will support good jobs and growth in the United States as well as economic reform and revitalization here in Japan. We’re closer to agreement on issues like automobiles and agriculture. I’ve been very clear and honest that American manufacturers and farmers need to have meaningful access to markets that are included under TPP, including here in Japan. That’s what will make it a good deal for America -- for our workers and our consumers, and our families. That’s my bottom line, and I can’t accept anything less.



また、オバマ大統領は安倍総理に対して、今こそ勇気あるステップを踏み出すときだ(now is the time for bold steps)とも述べ、政治決断を促している。



At the same time, Prime Minister Abe is committed to renewing Japan’s economy, and TPP is a vital part of that. As I’ve told Shinzo, Japan has the opportunity -- in part through TPP -- to play a key leadership role in the Asia Pacific region for this century. So now is the time for bold steps that are needed to reach a comprehensive agreement, and I continue to believe we can get this done.



そして、農産物の重要5項目に関する国会決議への配慮を口にする安倍総理に対して、オバマ大統領はさらに強い言葉を投げかけている。まず、日本の農産物市場や自動車市場は、歴史的に市場アクセスが限られてきた(market access has been restricted historically)と指摘をしたうえで、今こそ問題を解決すべきときだと繰り返し迫っている。



PRESIDENT OBAMA: I will leave the details of the negotiations to the negotiators. I think it’s fair to say that there are certain sectors of the Japanese economy -- agricultural sectors, the auto sector -- in which market access has been restricted historically, certainly compared to the market access that Japan has had to U.S. consumers. And those are all issues that people are all familiar with, and at some point have to be resolved. I believe that point is now.



続けて、オバマ大統領は、安倍総理は「勇気をもって認めてくれた」(courageously, has recognized)と評価の弁さえ述べている。安倍総理が何を認めたかについては具体的に述べられていないが、アメリカが満足できる大胆な譲歩をしたことが推察される一文である。



Prime Minister Abe, I think courageously, has recognized that although Japan continues to be one of the most powerful economies in the world, that over the last two decades its pace of growth and innovation had stalled and that if, in fact, Japan wanted to push forward in this new century then reforms were going to have to take place. And he has initiated a number of those reforms.  TPP is consistent with those reforms.



そして、次のようにも述べている。いわく、「私たちは現在の心地よい状況から抜け出ていかなくてはならない(all of us have to move out of our comfort zones)」、「有権者を現在の心地よい水準から先に押し出していかなくてはならない(push our constituencies beyond their current comfort levels)」と。聞こえのいい言葉ではあるが、要は、選挙の時の有権者との約束や農産物5項目に関する国会決議に反してでも、安倍総理は決断すべきと説いているのだ。



But that means that short term, all of us have to move out of our comfort zones and not just expect that we’re going to get access to somebody else’s market without providing access to our own. And it means that we have to sometimes push our constituencies beyond their current comfort levels because ultimately it’s going to deliver a greater good for all people.



私もTPPの企図する自由貿易の方向性を否定するものではない。しかし,TPP交渉ではあまりにも情報の開示が制限され、国民生活に影響のあることが密室でどんどん決まっていくし、TPP参加に反対するとの印象を与えて政権復帰した自民党政権が、十分な説明もないまま公約とは反対のことを進めていることには重大な問題があると言わざるをえない。



そして、そもそも日本のメディアは、なぜか日本が譲歩する話ばかりを熱心に書きたて、その代わりに何を獲得できたのかについては関心も払わない。あまりにも自虐的に過ぎないか。



しかも、日本にとって農産物は「守るべきもの」で、自動車は「攻めるべきもの」であったはずなのに、いつの間にか自動車でさえ「守るべきもの」として交渉が行われていることの奇妙さにも気づいていないようである。譲るだけの交渉なら国益に反すること間違いなしだ。



今回の訪米中、ジョージワシントン大学でのシンポジウムに参加した際、アメリカ人から「日本は農産物の関税をゼロにできないのか」との質問を受けたので、私は「できますよ。アメリカが日本車にかけている関税をゼロにしてくれればね。」と答えたら、会場にざわめきが広がった。あまり「攻める」意見を日本側から聞くことに慣れていないからだろう。



TPP交渉について、日本とアメリカ双方にセンシティブな品目があり、それゆえ、双方に政治的な困難さがあることは確かである。例えば、日米首脳会談直後の週末に鹿児島2区の補欠選挙があったことが、大筋合意を発表できない一因であったかもしれないし、また、アメリカでは11月に中間選挙を控えている中、選挙区の雇用や経済にマイナスになる可能性があるTPPやそれを推進するTPA法案に賛成できない議員が増えていることも理解できる。



だからこそ、双方が「等しく」譲歩をしなければならないが、どうもアメリカは、口で言っているのとは異なり、議会を説得して譲歩案を模索しようなどという意欲もないと思われる。事実、今回の訪米で話をした複数の国会議員が、オバマ大統領は与党民主党の議員にさえ十分な情報開示と根回しがないと不満を漏らしていた。不十分な議会対策がうかがい知れるが、TPPやTPAに関しても、まさに同じような状況なのだろう。



こうした政治状況を考慮に入れれば、TPA法案の成立は11月の中間選挙が終わるまでは見込めないだろう。そんな中でTPP交渉の妥結を急ごうとすれば、それは日本側が大幅に譲歩することのよってしか実現しない。しかも、安倍政権の高い支持率の下なら、公約や決議に反するような内容で妥結することも可能だと考え、アメリカ側は強気で今回の首脳会談に臨んだはずだ。



そして、日米首脳会談後の記者会見で、オバマ大統領は「重要な進展(important progress)」があったと明言し、フロマンUSTR代表も、5月2日の議会証言で、「重要な一線越えた(crossed an important threshold)」と述べている。ということは、日本側が一定の譲歩をしたことは、もはや明らかであろう。



私は、農林水産委員会、予算委員会、内閣委員会などでTPPの問題は何度となく取り上げ、また、総理大臣や関係大臣の発言が次第に変わってきた変遷も全て見てきた。また、安倍総理や甘利大臣は、日米首脳会談があるからと言って期限をきるような交渉はしないと言ってきたはずである。しかし、いつしか、交渉をまとめることが自己目的化し、獲得すべきものも十分確保できないまま、農産物だけを犠牲にして、実質的な大筋合意に至った可能性が高い。



ただ、今からでも遅くはないので、アメリカ側にTPA法案の成立を強く働きかけ、TPAがないような不安定な状況では最終妥結できないと主張し、ひとまず彼らの要求を突き返すべきだ。中間選挙後にTPA法案が成立するのを待ってから、本格的な詰めの交渉に入れば十分である。日本側に交渉を急ぐ理由は全くない。



それとも、尖閣列島への安保条約5条の適用という、あたりまえの話を、あえてオバマ大統領に発言してもらうことの代償として、TPP交渉で大幅な譲歩を差し出しているのだとしたら、これほど国益を害する行為はない。



国民の皆さんにおかれては、今後、TPP交渉をめぐる新聞やTVの報道に接する際には、日本がいったい何を「獲れた」のかに着目してご覧いただきたい。何を「失った」のかを嬉々として伝えるマスコミに振り回されないようにしていただきたいのである。譲るだけの交渉なら、そもそも交渉と呼ぶに値しない。



いずれにしても、今般、日米首脳会談直後に訪米し、連邦議会議員と直接話をすることができたのは極めて有意義であった。やはり、議員同士が直接会って意見交換することは、相互理解を深めるとともに、互いの立場や本音を率直にぶつけ合う意味でも重要である。実際、議員同士でしかできない話もある。


これからも一層議員間交流を強化し、両国の重要案件の解決に、議員外交を通じて貢献していきたいと思う。



以上