フランス語圏では、アウトサイダーアートのことを
「アール・ブリュット」と呼ぶ。
これは画家のジャン・デュビュッフェが1945年頃に考案した言葉で、「生の芸術」「加工されていない芸術」を意味する。
デュビュッフェは、アール・ブリュットを、
『芸術的教養に毒されていない人々が制作した作品』と
定義した。
アウトサイダーアートやアール・ブリュットという言葉が
使われる以前は、「精神分裂症の芸術 schiophrenic art」や
「精神病理学的美術 psychopathological art」という
呼ばれ方をしており、
デュビュッフェが収集した作品の多くも
精神障害のある人の作品である。
アウトサイダー・アートという名をつけたのは
イギリスの美術史家ロジャー・カーディナル。
カーディナルは作者が生きる社会の規範を
いかに大胆に乗り越えるかが重要であると言っており、
障害者の作品に注意が集中するのを避けるために
この語を用いた。
たとえばアボリジニの民族芸術は、
彼らの社会規範の中ではノーマルなこと。
イカ、といえば10本足のイカ!
という社会の中で、ロールイカの絵を描くからこそ、
大胆で自由な発想と理解されるのである。
参考記事:イカを描くならどう描く?
~既成の美術の枠を超えたアウトサイダーアート~
http://ameblo.jp/tama-ouma/entry-11846856952.html
では、子供の絵はどうだろう?
子供が描く絵は概して素晴らしいと考えられがちだ。
『アウトサイダー・アート』の著者、服部氏は、
子供の美術とアウトサイダー・アートは
本質に異なると言及する。
子供は成長過程で周囲の模倣をするし、
親や周りの人に認められようとしたり、
興味がうつったものを次々と描こうとしたりする。
アウトサイダー・アートの作者たちは、
周囲の評価を全く省みることなく、時に何十年も
同じスタイルで描き続ける。
私はよく、「自己表現なら自分一人でやって、
人に見せるような展示をしなくてもいいのでは?」
というようなことを言ってるが、
アウトサイダー・アートの作者たちは、
まさにこれを地でいっている。
ただひたすら制作する。
どこにも出すわけでなく、ただひたすら制作する。
まさに、周囲の評価を必要としていない姿。
その中で、たまたま周囲の人が、
描きためられた絵を発見したり、
社会に送り出したりしているのだ。
さて、アウトサイダー・アートは、
ドイツ表現主義の画家たちによって、
まず最初に注目されることになる。
表現主義とは、20世紀諸島にドイツで起こった
芸術運動のこと。
表現主義とは、外界を写しとるのではなく、
自らの内的感情に忠実になり、
よりストレートな表現を目指した活動といえる。
代表的な作家はパウル・クレー。
谷川俊太郎氏とのコラボ絵本?のようなのも出ていて
日本でもよく知られる作家さんですね。
(というのも、美術史に疎い私ですら、
クレーを知る前から本持ってたので、笑)
▼おサカナの絵が魅力的な一冊。
クレーの絵本 文:谷川俊太郎
ただ、表現主義の画家たちは、子供の絵と
アウトサイダー・アートの作家の絵を
「知性に頼らない衝動的な表現」という
同じ価値観としてとらえていたという。
つづく。
本日の参考文献は引き続きこちら。
アウトサイダー・アート 現代美術が忘れた「芸術」 服部正 (光文社新書)
読みやすく、アウトサイダーアートを取り巻く
世界や日本の状況もわかるので、オススメですヽ(=´▽`=)ノ
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