世阿弥 | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。


世阿弥の時代には「立合」という形式で、

能の競い合いが行われました。

立合とは何人かの役者が同じ日の同じ舞台で、

能を上演しその勝負を競うことです。

この勝負に負ければ評価は下がり、

パトロンにも逃げられてしまいます。


立合いは自身の芸の今後を賭けた大事な勝負の場でした。

しかし、勝負の時には勢いの波があります。

世阿弥は、こっちに勢いがあると思える時を「男時」(おどき)

相手に勢いがついてしまっていると思える時を、

「女時」(めどき)と呼んでいます。


世阿弥は「ライバルの勢いが強くて押されているな、

と思う時には小さな勝負ではあまり力をいれず、

そんなところでは負けても気にすることなく、

大きな勝負に備えよ」と言っています。

女時の時にいたずらに勝ちにいっても、

決して勝つことはできない。

そんな時はむしろ「男時」がくるのを待ち、

そこで勝ちにいけ、というのです。


「冬の時代」という言い方があります。

「冬」という漢字はもともと「ふゆる」という動詞で、

「増える」という意味なんだそうです。

そういう時代は無理せず焦らず、外に発散するのではなく、

中身を増やしておけという意味なんだそうです。

そうして、じっと我慢をしていれば、

いつか「春」がやってくる。


春が来るといいなあ。



▶︎みりん