僕が子供のころの映写機はカーボン式映写機といって、
画材の擦筆のようなカーボン(炭素棒)を、
燃焼させその光で上映します。
文字だけで説明するのはなかなか難しいのですが、
2本のカーボンを向かい合わせにしてその先端を着火。
炭素棒が燃えて短くなると光が弱くなるので、
炭素棒の距離を手動ハンドルで調節しながら上映します。
僕が小学校高学年の頃になると、
親父がフィルムのかけもちで隣町に行ってる間だけ、
僕に映写機の操作を任せてくれました。
ハンドルでカーボン棒を微調整しながら、
なんだか一人前の映写技師になったような気分でした。
でも、うっかりカーボンを離してしまうと、
スクリーンの映画はたちまち暗くなってしまい、
反対に近づけすぎると、
フィルムが焼けて映画は中断してしまいます。
そんなときはあわてて切符売り場にいる母親を呼びに行き、
専用の接着剤でフィルムを繋いでもらいます。
気分は一人前、でも実際には半人前の映写技師でした。