あの日を遡る | 徒然劇場

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言葉や文字にすると、思い出だけじゃなく 色んなものが思いがけず 飛び出してきますよね!

3月11日の震災以降、首都圏交通網はあちこちで分断され、相互乗り入れで利便性の向上が図られていた各線の連絡が著しく悪化しました。

私の通勤路線もその例外ではなく、たった2駅が繋がらないばっかりに、通勤経路を大きく迂回する方向に変更したり、駅間を30分くらいかけて歩いたりもしました。


今日、ふと思い立って。

行きは別ルート、帰りは駅間を歩くことにしていたその道を逆にたどってみることにしました。


ついで(?)に、そのとき

「あ、こんなところに繋がっていたのか!」

と懐かしく思い出した美術館のお庭も散策。


久しぶりにスニーカーをはいての外出でしたが、

土の上を歩くのも久しぶりでした。

枯れた松の葉が重なった地面や、芝生の柔らかさが足の裏から伝わってきます。

最近は、ヒールで堅いアスファルトやコンクリート、リノリウムの床ばかり歩いていたので、この地面の柔らかさは逆に新鮮です。

そして、緑の甘い香り。

あれは、何の香りなんでしょう?

若芽の匂いでも、花の香りでもない、甘酸っぱいような香り。

豊かな緑の中を歩いていると感じる、不思議な香りです。


コチコチになっていた気持ちが和らぐような、優しい香りでした。

少し前には、この香りに良く触れていたような気がするのですが、このところ・・・相当、ご無沙汰だったような気がします。

5月は新緑の季節だったなぁ~、と改めて思いました。


震災後、仕方なく歩いていたときは夜だったので、周りの風景も全然違って見えます。

庭園を出て歩いているときにみつけた、小さな公園の周囲にはクローバーの小さな花壇(?)。

最近、あまり目にすることのなかった、シロツメクサ。

シロツメクサなんて、私が子どもの頃には雑草のように生えて・咲いていて、どんどん摘んでは花輪を編んでいたものですが、あのシロツメクサを摘んでしまったら、ものすごく怒られそうです。

イマドキの女の子は、シロツメクサの花輪なんて、編まないのかしらね??

確かに、昔はどこにでも咲いていた気がするシロツメクサ、最近見かけないもの。

四葉のクローバーが時々見つかったりして、ラッキーな気分も味わえる遊びだったのだけれど。


あの夜は、知らない道で、でもたくさんの人が同じ方向に向かって歩いている、結構な距離があったような気がした道。

今日、歩いてみたら、びっくりするほど呆気ない。

陽の光のマジックなのか、

知っている道だからという心のカラクリか。


なんで、逆にたどろうと思いついたのかは不明ですが。

当時は分断されていた乗入れ路線で自宅最寄駅まで帰ってくることで、何故か残っている心の傷跡を消したかったのかも。


土の上を歩くのは気持ち良い。

美術館の庭園で、木の根が地表に張り出しているところを歩きながら

「鞍馬、行きたいな」

と、不意に思いました。