こんにちは。「たきた動物病院」院長の滝田です。
今回は「犬の脂漏症」についてのお話しです。

脂漏症は、慢性角化異常
犬の脂漏症についてこんにちは。「たきた動物病院」院長の滝田です。
今回は「犬の脂漏症」についてのお話しです。

脂漏症は、慢性角化異常および皮脂腺の分泌機能変化により発症します。
(角化とは、皮膚の基底層で作られた新しい細胞が分裂を起こして、最終的に角質層まで押し上げられて最後は角片としてはがれ落ちていきます。この細胞の新陳代謝のことを角化といいます)

脂漏症の発現には通常基礎疾患の関与があります。基礎疾患としては、代謝性疾患(甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、ソマトトロピン減少症[成長ホルモン]、栄養障害、消化吸収障害、膵臓疾患など)、内部および外部寄生虫症、アレルギー性疾患、皮膚糸状菌症、一部の自己免疫疾患などがあります。

脂漏症には、これとは別に特異的な基礎疾患の関与がなく発症することがあります。このようなものを特発性脂漏症とよびます。

特発性脂漏症は、形成される鱗屑(いわゆるフケ)の性状から乾性脂漏症と油性脂漏症とに分類されます。

油性脂漏症の重度のものを脂漏性皮膚炎と呼ぶことがあります。

素因を持つ犬種として、乾性脂漏症ではドーベルマン・ピンシャー、ジャーマンシェパード、アイリッシュ・セッターおよびダックスフンド、油性脂漏症ではコッカー・スパニエル、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア、バセット・ハウンド、ジャーマンシェパード、チャイニーズ・シャーペイ、ラブラドール・レトリーバーなどが知られています。

また、ミニチュア・シュナウザーでは、遺伝形質が関与した特異的な特発性脂漏症が発症することが報告されています。

症状
共通してみられる症状は、鱗屑(いわゆるフケ)の形成と脂漏臭です。これらは症状の程度にあわせて軽度~重度に変化します。二次的な変化として、脱毛、痂皮の形成、痒みおよび炎症がみられます。
1.乾性脂漏症
乾燥した鱗屑を形成し、被毛および皮膚が乾燥しています。鱗屑は被毛に散在しますが、痂皮の形成はみられません。脱毛の程度は軽いですが、毛は薄いことが多いです。
2.油性脂漏症
鱗屑、皮膚、被毛は油っぽく、脂性の黄褐色の塊が被毛と皮膚の一部 に付着していることがあります。被毛に付着した鱗屑はシラミの卵 のようにみえます。同様の脂性の耳垢をともなった外耳道炎を併発することがあります。
3.脂漏性皮膚炎
油性脂漏症が重症化したものが脂漏性皮膚炎です。痒みおよび紅斑 が加わる上、鱗屑、脱毛および痂皮形成の増加がみられます。掻痒 部位は外耳道、耳介、唇、頸部腹側、胸部、腋窩、肘、鼠径、会陰部 などであり、アトピー性皮膚炎と類似します。

診断
特発性脂漏症を診断するためには、脂漏症を引き起こすすべての原因疾患を否定する必要があります。そのためには、系統だったアプローチが必要です。臨床検査では、常に数カ所の皮膚掻爬検査、皮膚の押捺検査、ウッド灯検査、真菌培養検査などを行うべきです。病歴や症状によっては、特異的な検査も必要です。

治療
特発性脂漏症の治療ゴールは、完治ではなく鱗屑形成を含めた皮膚の状態を制御することにあります。治療は、通常生涯にわたり継続する必要があります。
1.乾性脂漏症
症状が軽い場合には保湿性のシャンプー(セボダーム、等)とリンス (ヒュミラック、等)で週1~2回シャンプーします。鱗屑形成が重度の 場合にはこれらを洗い流すためサリチル酸とイオウを含むシャンプー(サルファサリチル酸シャンプー、等)を用います。ただし、シャンプー過多による皮膚および被毛の乾燥の悪化は避けます。
2.油性脂漏症
鱗屑を溶解し、悪臭を抑制する目的で角質溶解性および角質形成性 脱脂シャンプーを用いて週1~3回洗浄します。コールタールを含むシャンプー、二硫化セレンを含むシャンプーおよびサルファサリチル酸シャンプーがこの効果を有します。
いずれの脂漏症においても必須脂肪酸のサプリメント(エファベット、等)が皮膚状態の改善に効果があると言われています。
3.脂漏性皮膚炎
強い掻痒をともなった炎症がみられる場合には、プレドニゾロンを抗炎症量で短期間使用することもあります。膿皮症やマラセチア感染症の併発がみられる場合には、抗生物質の全身投与など、外部寄生虫に対する治療も行います。
4.ビタミンA反応性皮膚炎
脂漏性皮膚炎に似た病態を示しますが、より難治性の疾患です。
ビタミンA活性を持つパルミチン酸レチノール(チョコラA、等)を625~800IU/kg、1日1回経口投与して、4~6週間続けると皮膚状態に改善がみられる場合があります。ビタミンA反応性皮膚炎は脂漏症と は異なる角化異常で、ビタミンAの表皮における局所欠乏が原因とされています。