鈍行(とは最近は言わないかな?笑)で8時間、

蔵滞在3時間の強行軍でしたが、行ってよかったです。

おかげさまで昨夜から今朝は身体中がバキバキですが(笑)


廣戸川(ひろとがわ)を醸す松崎酒造店。

蔵は明治25年より福島県岩瀬郡天栄(てんえい)村に建ちます。

天栄村は全国でも3番目くらいに広い村だそうですが人口は僅か六千人。


東北本線の郡山と白河の間くらいにある鏡石という無人駅から

車で真西に20分くらい(歩いては行けません!)の田んぼに囲まれた、

まぁわかりやすく言えば「田舎」にある蔵ということになります(笑)



地酒屋こだま TAKE’s ROOM

この扉を開けると、ちょっとお洒落な売店があり買い物もできます。

会津若松へ抜ける観光客がちょこちょこ寄ってくれることがあるそうです。



地酒屋こだま TAKE’s ROOM

松崎酒造店の七代目(予定)にして今期から杜氏を担う松崎祐行くん。

彼を紹介してくれたのは、もともとは花泉酒造の星くんでした。

若いのに頑張っているので応援してるんだ、と引き合わせてくれたのでした。


それから一緒に飲んだり、松本のイベントに参加してもらったりで

なんだかんだやってるうちに仲良くなって気心が知れてきたわけで。

まぁ、そう思ってたのは僕だけかも知れませんけど(笑)


ただし酒質に関しては、昨年までは「いまひとつ」が本音でした。

こればかりはプロとして譲るわけにはいかない。

ところが今期、彼の造った酒を飲んでみて「・・・・・!!!」驚きました。



地酒屋こだま TAKE’s ROOM

仕込み蔵の奥の壁。

あの3月11日の震災の時には彼は蔵で火入れ作業の真っ最中。

この窓が落ちてきて、辺り一面が土埃で真っ白で見えなくなったそうです。

地酒屋こだま TAKE’s ROOM

よく見ると新しい木材であちこち補強がしてあります。

一本だけ残っていたもろみは無事でしたが貯蔵酒が少しこぼれたそう。

この周辺での最大震度は震度5強だったそうです。



松崎酒造店の特徴をメモ代わりに。


地酒屋こだま TAKE’s ROOM


洗米は全て手洗い。(今期から導入のMJP一台が大活躍中)

蒸しは和釜。甑は最大で300Kg。

放冷機は標準タイプとオールドタイプ(笑)が活躍中。

酛場は右手奥、今昔問わず全て速醸。

酛場から仕込み蔵がUの字を動くためちょっと遠くて大変。

麹室は手狭。最盛期700石(現在300石)にはかなり大変。

全て天幕。今後は工夫を考えている。

仕込みは23BYで16本。うち7本が1500Kgの普通酒。

糖類添加なし、四段もかなり軽めな特徴。

吟醸で300Kg、純米で400Kgと700Kg。

搾りはオールヤブタ。槽はあるが使っていない。

この蔵の大きさにしては素晴しすぎる冷蔵庫設備がグレイト。



実は昨年までは南部杜氏と蔵人さんが来ていました。

ところが震災直後の3月20日に杜氏が心労で倒れます。

幸い命に別状はなかったのですが、杜氏への復帰は難しく決断を迫られます。


家族で話し合った結果、四年ほど前から蔵に入った祐行くんが意を決します。

彼の下には通年雇用の社員と、造りの時期だけのパートさんの合計二人。

現社長、お父さんの淳一さんと奥さまも折を見て手伝うことになりました。


大英断だったと思います。


よく決断したねぇ、と問うと、

いや、むしろ好きなようにやれてよかったと思う、と返答。

意外にも骨太なその素顔に、驚くやら心強いやら。



地酒屋こだま TAKE’s ROOM

玄関口にある蔵も、震災で壁が崩れ落ちたので修復中でした。

よく見ると内側には土壁が見えています。


聞けば物置だそうで、じゃ直さなくてもいいんじゃない?聞くと

ウチは喜多方辺りと違って蔵の町じゃないから、

せめて玄関だけでも蔵らしく見せておきたいんですよ・・・・・との返事。


うん、その頑固さも好きだぞ。



地酒屋こだま TAKE’s ROOM

これは昨年末に福島民友に掲載された記事。

初めは照れ臭かったそうですが、次第に誇りに思えてきたようで。

今回も「たけさんに見せたいものがある!」と嬉しそうに見せてくれました。


実は今期の造りのよさは客観的にも証明されているのです。

福島県内の鑑評会で、今までほとんど入らなかった金賞を取っています。

(もちろん入賞で酒の善し悪しを測るわけではありません。

 が、入賞できるということは「入賞できる酒を造れた」ということなのです)

この日ばかりはさすがに嬉しくて、「喜ぶのは今日だけにしよう!」と決めて

その晩は徹底的に、吐くまで飲んでしまいました、と笑っていました。


なんというか、控えめなクセに大物感漂うなぁ(笑)



地酒屋こだま TAKE’s ROOM

とはいえ祐行くんの「廣戸川」はまだスタートしたばかり。

これから進化しながら、毎年当然のようにブレもあるでしょう。

僕はそれも含め、彼の酒をまるごと楽しんで頂けるよう全力で取り組みます。


廣戸川、近日中に地酒屋こだまにてデビューいたします。

みなさま、応援をよろしくお願いいたします!!!