すかっと爽やか、伊那の空。

 

先日13・14日で南信を訪ねてきましたがとにかく天気に恵まれて何処へ行っても素晴らしい景観が僕らを迎えてくれました(めっちゃ寒かったけど・・・)。

この写真は上伊那郡中川村の米澤酒造の二階テラスからの風景。田んぼが切れた辺りからぐんぐん高度を下げ、その遥か下には長大な天竜川が流れています。

 

今回の訪問を書くにあたり、現在の米澤酒造に対する僕自身のスタンスを先に述べておきます。紆余曲折、いろいろあった蔵なので伏せてきた部分も多いのですがそろそろきちんと書いておかないとね。長くなりますので興味なければすっ飛ばしてください(笑)

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ご承知の方も多いかと思いますが今錦を醸す米澤酒造、こだまでは24BYよりお取引させていただいていますが、経営難により平成26年に伊那食品工業(かんてんパパで有名な超優良企業)の経営に変わり、僕が米澤酒造と取引を始めるきっかけになった伊沢広海という大好きなオトコが蔵を去り、平成28年には老朽化した蔵を完全に建て替えて新体制にて酒造りを開始しています。

 

当然のことながら賛否両論がありました。もちろん不安の声もたくさんありましたし僕自身もそんな不安の中の一人でしたから、平成28年に伊沢くんが蔵を去り、さらに蔵を建て替えると聞いて居ても立ってもいられず建設中の蔵を訪ねてきました。

 

まずはこの目で、

この耳で、確かめよう。

 

(僕はいつだってそういうスタンス。自身に深く関わる何かが起きた時に人づての話や片方からの意見だけでモノゴトを決めつけるニンゲンにはなりたくないのだ。必ず双方の言い分を聞く。そしてその為には労を惜しまず足を運ぶ。そんなこともしないで偉そうにああだこうだ言う輩は真似してみたまえ。)

 

そんな僕を迎えてくれたのが伊那食品工業から出向で今の米澤酒造を支えている松下一成常務。当時、日本酒に関しては素人同然の彼が一生懸命に勉強を重ね、蔵人をまとめ、米澤酒造をいい方向に持っていこうと頑張る姿に

 

「取引をやめることはいつでもできる、まずは信頼してみよう」

 

と、取引を継続して現在に至ります。

 

その時に話をしたのが伊那食品工業のスタンス。以前から取り組んでいた中川村の棚田をはじめとする稲作を守る事業の継続、蔵を新築しても手造りかつ槽で搾るという「肝」は変えずに守っていく、という話を聞き、またゆくゆくは中川村という美しい村全体の発展に寄与するような酒蔵に育てていくというビジョンにはとても共感したことを今も覚えています。

 

僕だって旧い蔵が大好きでした。

あの木槽のある静かな空間の、凛としつつも柔らかな空気の中で酒を利き、伊沢くんや慎一くん(湯川)や安藤さん(仙醸)たちと意見交換した想い出は今も忘れません。

 

でも、仕方なかったのです。

 

誰が悪い訳でもなく、違う立場の人間それぞれが、それぞれの正義の中で頑張っていた訳ですから。

 

そして現在、上諏訪の真澄さんより27BYに移籍してきた若手の坂口竣彌さんが副杜氏を経て今期29BYより正式に杜氏として頑張っています。ここ数年僕が開催している「長野蔵の会@海山和酒なるたかさん」や長野酒メッセin東京にも二年連続で来てくれているのでお会いした方もきっと多いのではと思います。

 

経営者が変わり、蔵が変わり、そして造り手も変わる。

 

酒が変わらない訳がないのです。

 

それを是と見るか否と見るかは個人の自由ですが、僕はそれも蔵の長い歴史の中でのひとつの出来事と捉えています。大切なのは蔵の「これから」。20年後、50年後に笑っていられることを目指して欲しいし、そのために努力していることを信じて僕はお付き合いさせていただいています。

 

前置きが長くなりました。ちなみに伊沢くん、県外の某蔵で頑張ってるみたいなのでファンの方はご安心ください。お酒も先日飲みましたがなかなか個性的で旨かったですよー♪

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…という訳で、蔵の中を簡単にご紹介。

 

 

洗米、蒸米などの原料処理を行う一階の部屋です。まだ二期目ということもありめちゃめちゃキレイですね。仕込み水は以前の井戸が不安定だったため別の井戸を整備して使っています。

 

 

この甑でお米を蒸しています。手前に掛かってるのは擬似米と呼ばれるもので、甑と接する部分に入れて甑肌と呼ばれるぐじゅぐじゅな蒸米を防ぐためのもので最近では結構一般的です。そこそこ標高のある中川村ですがしっかり温度も上がりよい蒸米が出来るようです。以前は和釜と呼ばれる昔ながらのものでしたが移設は不可能なので最新式になりました。これは性能いいよー。

 

 

こちらが二階の麹室。麹も入っていたので中は遠慮しましたが結構広い床(とこ)を備えています。こればかりは移設しようがないので新築し、まだピッカピカです。木香に関しては今のところ大きな影響はないと僕は感じています(でも本来は出て当たり前で、それもそれで蔵の歴史の一端なんだけどね)。

 

 

こちらが仕込み蔵です。麹室からほぼ直結で移動も楽ですし足場もしっかりしているので作業しやすそうだなぁ。以前の蔵で使っていた5,000リッター前後のタンクをそのまま移設したため現在も変わらず総米で最大1.5トン程度の仕込みですのでやはりそう大きくない仕込みがメインとなっています。

 

 

これは仕込み蔵を逆方向から見た写真です。冷却用ジャケットも完備して、さらにタンクの高さを揃えて作業がしやすくしているなどのいろいろな工夫が目を引きました。

 

 

その横には大吟醸などの小仕込み用の小部屋があります。こちらの小さなタンクも以前の蔵から移設し、修理・塗装し直しなど手を入れて使っていました。

 

 

そして・・・今錦といえばこれ!ってくらい象徴的存在だった昔ながらの木槽も現役バリバリ!今もこれで柔らかく搾っています。今期の仕込みで約500石強と以前より少し増え搾りが間に合わなくなったので、29BYからは左の佐瀬式の槽を増設。効率のいいヤブタ式をあえて入れず、槽の柔らかさにこだわった選択です。

 

 

木槽を逆方向から。奥の壁ぎりぎりのところから撮ったんだけどこれが限界でした(笑)ちょうど美山錦×長野Dの純米吟醸が搾られていい香りを放っておりました、期待したいですね。

 

 

そしてこちらが瓶詰めライン。中央のパストライザーとその奥にある(見えませんが)プレートヒーターで全ての火入れを行っています。酒質によっての選択がこれからさらに肝要になっていくと思いますが、ある意味贅沢な設備です。

 

いかがでしたか?キレイな蔵でしょう?

酒質としてはクリーンな蔵の特性を生かしたクリアな酒が増えると思いますが、槽搾りならではの柔らかさが加わるため、いわゆるシャープなお酒よりも優しい感じの酒質が主になってくると想像します。極端な個性よりもまずは「新しい今錦らしさ」を模索しながら安定感を出していくことが命題のように僕は思っています。

 

その他に以前母屋があった場所には・・・

 

<米澤酒造HPより>

 

こんなに広くてキレイな売店ができました。今錦ほぼ全種類の試飲が可能で、かんてんパパ製品はじめ各地のお土産が揃う素晴らしいスペースです。蔵が陣馬形山への途中にあるため中川村への観光誘致の一環としての意味も持たせての施設です。

 

 

貯蔵倉庫の二階にあるテラスで記念撮影。バックには最初の写真のように中央アルプスが見事に輝いているのですが光の加減が難しい(笑)右から二番目が松下一成常務。僕と同い年の苦労人で、この日も日曜日でお休みなのに付き合ってくれる優しいオトコなのです。

 

名実共に、まさに

 

新生、米澤酒造

 

現場も頑張っております、応援よろしくお願いします。

 

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1月13日・14日と連休をいただきスタッフ連れて南信の5蔵を回ってきました。

 

上諏訪の本金。

塩尻の笑亀。

上伊那郡の今錦(米澤酒造)。

伊那の仙醸。

木曽の九郎右衛門(湯川酒造店)。

 

こだまでもお馴染、いつもお世話になってる蔵の「いま」を覗いてきました。その時の他のことはまた書くかも知れないし書かないかも知れません(笑)ま、あまり期待しないでお待ちください。

 

その中で、今回は仙醸のこと。

桜でも有名な伊那市高遠にある中堅蔵です。

こだまでは「黒松仙醸こんな夜に」でファンの方も多いですよね。

 

全盛期の生産石数1万石近く、現在でも約2千石とこだま扱い蔵の中では大きい方で蔵というよりは工場に近いイメージの蔵。大きな仕込みがメインとなることもあり無難な酒質が多かったのですが平成17年頃から小さな仕込みを導入、そう、「黒松仙醸こんな夜に」がまさにその仕込みなのですがそのクオリティの高さで人気となり、こだまでの売上も1,2を争う人気酒となっています。犬と自転車と釣りを愛する中田英寿さん似の安藤宏幸杜氏が23BYより指揮を執り、毎年美味しいお酒を届けてくれています。

 

そんな仙醸。実は麹造りも自動製麹機(マニアックですがK.O.S式と呼ばれる高性能なもの、こだま扱いでは奈良萬を醸す夢心酒造さんが同型です)を使用し衛生的にきめ細かい麹造りをしてきました。しかし今回、33年ぶりに新しい麹室(こうじむろ)を新設し、いわゆる皆さんが想像するところの手作りの麹造りも可能になったというので見学させていただきました。

 

蔵の二階に上がると・・・ありました。

 

 

新品ピカピカの麹室です。ここ、前は事務室というか分析室で蔵を訪ねる度にお邪魔していた部屋なのでちょっとびっくり。奥の左側にもうひとつ扉が見えますが(後ほど写真を)この壁の中で二つの部屋が繋がっている構造です。中央奥に見える明るい部屋が広~い仕込み部屋、そして右側のガラスの向こうにはK.O.S自動製麹機があります。

 

 

扉を開けるとこんな感じ。床(とこ)と呼ばれる台になっていまして、蒸した米を初めにここに引き込んで作業をします。

 

 

で、これが奥の扉。

 

 

これを開けると中はこんな感じ。こちらで今も麹を育てている状態でした。決して広くはない麹室なので最大で150Kgまで=総米1,500Kg程度の仕込みまでがギリギリということでした。

 

K.O.Sも凄い機械なんです(マジで)。下手に麹室で製麹するくらいならよほどいい麹が出来ると明言する蔵元もいるくらい。だからこそ今までクオリティの高い仙醸の酒が出来ていた訳ですし。

 

・・・なんですが、安藤杜氏曰く

 

出来てくる麹がぜんぜん違う。

 

んですって。

いい、悪いで語るのは野暮な気がするのですが、とにかく麹の見た目も違うし味も違うそうで、いい意味で「深みが出ている気がする」とのこと。

 

では、そんな麹で造ったお酒をテイスティングしてみましょう。

 

 

じゃーんw

 

 

いえーい、ノリノリだぜぇw

 

テイスティングルームで安藤さんが最近手に入れたばかりのストラトを弾かせていただきました(笑)松本の工房製とのことでしたがまずボディがすげー鳴ります。普通ストラト(フェンダー製)の場合、アルダー材やアッシュ材を使うことが多いのですがそれに比較して全然重い。感覚ではオールメイプル的な重さとギラつく鳴り、そして指板がフラットで弾きやすく個人的にはめちゃめちゃ好きなタイプでした(おいおいなんのブログだいw)。

 

てな訳でテイスティングしてみると

 

柔らかくて深みがある。

 

どのお酒もそうなんです。これでも一応19BYからの「こんな夜に」を全て飲んできた僕なのでハッキリ言えますが、こんな夜に史上もっとも柔らかさを感じることは間違いありません。実際に酸も少し抑えられる傾向にあるようで、その辺もこの柔らかさに一役買っているように思います。

 

驚きました。

いや、もちろん全てが麹のせいとも言えませんがそれでもかなりの影響を与えていると考えて差し支えないと思います。同じ蔵で同じ材料で同じ人が同じように造っているのにこんなに変わるなんて酒造りってやっぱり奥が深い。

 

逆にシャープで尖ったニュアンスは弱くなっていますので、そんな感じが好きな方には不評かも知れません。が、酒質としては間違いなく向上していると思います。

 

安藤さんもめちゃめちゃ刺激を受けていました。と同時にかなり疲れていました(笑)というのもこの日は麹の世話で二日連続で泊り込みの翌日だったそうで、今までの製麹機ではそんなことは必要なかったので労働時間は確実に増える結果になっています。

 

 

それにしても伊那の空は青かった。

この写真、ちょっとよくない?誰か映画のポスターとかに使ってもいいよ(笑)

 

 

今期の仙醸のお酒、そんなところに注目して味わっていただけると美味さもまたひとしおと思います。

 

進化であっても深化であってもそれは「変化」であり、賛否両論が必ず発生します。でも今回の設備投資は未来の仙醸にとっては間違いなく強力な武器になるはず。蔵も人も生きています。短期的な目ではなく長期的な視点で応援をよろしくお願いします。

 

安藤さん、これからのお酒にも期待しています。お忙しいところお昼ご飯にまでお付き合いいただきありがとうございました。造りが終わったらまた飲みましょう♪

 

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昔と違って他人を批判しようという気持ちで書くのではありません。ああ、僕もオトナになったなぁ(笑)

 

地酒屋こだま店主の児玉武也として、そしていち日本酒ファンとして、さらにこだまという店のスタンスを理解して貰う為にも、今年も書かせていただきます。完全にこだまの主観ですので違う意見の方はスルーしてください、めんどくさいので(笑)

 

日本酒業界で秋の風物詩と言われる「ひやおろし」

 

日本酒は古来「貯蔵前(搾った後)」と「貯蔵後(出荷の前)」の二回、酒質の安全性を保つために「火入れ」と呼ばれる熱殺菌をしてきましたが火入れを重ねるとどうしても風味が落ちやすいため二回目の火入れを省略し「外気温と同程度になった頃に(冷えたまま)瓶に詰める(卸す)」ことから「ひやおろし」という名称ができたと言われています(諸説あります)。

 

別の呼び方だと「生詰め(なまづめ)」(生じゃないのにこれも変なネーミングだよねぇ!苦笑)。ともあれ、夏の熟成を経てまろみと旨みを得たお酒を「より旨く味わう」ための先人の知恵だったのです。

 

余談ですが同じような秋の酒として「秋あがり」という言葉もあります。こちらは特に定義はなくて、ひやおろしと同じ経過のもの(生詰め)、熱処理してない生酒、生で貯蔵して出荷前に火入れをした生貯蔵、などなど、どれも「秋になって味が乗った(上がった)お酒」にこの名称を用いています。その意味では今の時期、全てのお酒が秋上がりと言えます。

 

さてその「ひやおろし」ですが、年々発売時期が前倒しになって(どっかのバーゲンセールみたいw)最近は蔵によっては8月から発売とかトンチンカンなことをする蔵も出てくる始末。我先に、の気持ちはわからなくもないのですが季節感を大切にするはずの風物詩に対しての冒涜というか、

 

実に粋でない、

かっこ悪い行為

 

と僕は感じています。

 

どんなに早くてもせいぜい9/9の重陽の節句から発売、という感じがギリギリセーフ。・・・いやごめん、やっぱりそれでも早いように思うのですが(苦笑)まぁその辺は蔵の自由なので勝手にやってくれればいいけどね(笑)

 

という訳で別に「ひやおろし」がなくてもしっかり寝かせた旨いお酒がいっぱいある地酒屋こだまとしてはひやおろしらしい酒質に育ったものから少しずつ「ひやおろし」を発売させていきます。

 

特に今年は世の中にはびこる未熟なひやおろしに気付いて欲しい気持ちからのささやかな抵抗として「ふた夏越え」や「み夏越えのひやおろし」から先行販売しております(笑)

 

その結果、当年もののひやおろしは販売しないことも多々ありますが気になる方は直接お尋ねください。(流行先取りのお洒落なお客さまは他所のお店さまで買ってください・・・)

 

・・・なんて天の邪鬼なことを性懲りもなく毎年呟いているのですが、嬉しいことに「熟成不足だなぁ」と思うお酒は(当店取扱酒に限らず)毎年確実に減って来ました。蔵の方でも「早く出す分しっかり熟成させる」ことに取り組んできた成果だと感じていますしその点には大いに敬意を表したいと思います。その上で・・・

 

★ひやおろしって冷酒で飲むより常温やお燗の方が旨いものが多いよ!

 

★お酒単体で美味い!ってタイプはけっこう少なくて肴と合わせて映えるお酒が多いよ!

 

★焦って飲まず、10月を過ぎて秋が深まった頃からの方がひやおろしの真価が味わえるよ!

 

この三点は覚えておいて損はないと思いますよー。

 

ちなみに今年のこだま扱いのひやおろしはめちゃめちゃ旨い酒が多いから期待してねー♪これから深まっていく秋を楽しみましょう♪(今年は秋が早いのがせめてもの救いです・・・)

 

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