映画「山のあなた ~徳市の恋~」 | 茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~

映画「山のあなた ~徳市の恋~」

山のあなたの空遠く、「幸」住むと人のいふ ああ、われひとと尋めゆきて、

涙さしぐみ、かへりきぬ 山のあなたになほ遠く 「幸」住むと人のいふ・・・

yamanoanata 山のあなた ~徳市の恋~

山のあなたの空遠く・・幸せというものは、いつもいつも手の指の間をすり抜けて、何処か知らないところの遠い世界に消えていってしまうもの・・
目の不自由な按摩の徳市(草なぎ剛)と福市(加瀬亮)は、季節ごとに海の温泉と山の温泉を行き来する、今は心洗われるような新緑に覆われた山道を、自慢の健脚で温泉宿へと向かい、鯨屋主人(三浦友和)に迎えられ、最初についたお客は東京から一人でやって来た謎の女性美千穂(マイコ)、東京での妾暮らしに疲れ相手の奥さんと娘さんに心苦しく、謎の女性の謎めいた行動に徳市は翻弄されながらも恋心を抱いてしまう、ところが美千穂のほうは東京から墓参りのためにやってきた大村真太郎(堤真一)のほうに興味があるらしい・・なのだけれども、いずれの恋も山道を行く物言わぬ馬車が切り裂いていく・・それはまるで濡れそぼるアジサイの花の如く真昼の予知夢を見ているかのように空しくも哀しく静かに別れがやってくる・・
気になるのは、内緒ですよと言って伊豆大島の椿油のお土産を渡された鯨屋の女中のお菊(黒川芽衣)さんのこと、笑顔がとっても可愛かった彼女のこと、徳一の恋というなら彼女との恋の結末を見せて欲しいところ・・物語はあっという間に終わってしまうけど、物思いに耽る間もないけど、そう、新緑に彩られた山々がとても綺麗で小説の世界の入り口に迷い込んだかのよう・・

山のあなた ~徳市の恋~